分かって欲しかった。ただそれだけ。
孤独が憂鬱の原因であるのなら、人と会っていても感じる憂鬱は、一体どうしたらいいのでしょう。
友人と会いました。
目的地に向かう最中、近況報告もひと段落したために、
私は彼に、自身の胸の内を少し話してみました。
それは何に悩んでいるわけでもなく、
ここに書いているような苦しみや、私の感じている憂鬱を、
なるだけ当たり障りように伝えました。
夜になると苦しい。
寂しいけれど、誰にも会いたくない。
私含めて、皆変わっていく事が、
当たり前のことだけれど、少し悲しい。
戻ろうとは思わないけれど、あの頃が幸せで、
今が不幸に思えて、仕方ない。
ちっとも、幸せなんて感じない。
不安でいっぱいに満たされる、胃の中が苦しい。
口頭では、やはりこうして文章を綴るのとは違って、
チグハグで拙い、
自分ですら何を言いたいのかも分からないような、
きっと彼を困らせてしまうような伝え方になってしまいました。
それでも、どうしてだか、言ってみたくなったのです。
ここに書くようなことなど、誰かに言っても困らせてしまうだけだから、
自分の胸の内に留めるようにしていたのですが。
それで、返ってきたのは、
覚えている限りでは、こんなことでした。
「まず目標を持て」
「彼女を作った方がいい」
「正解なんて誰にも分からないだろ」
「今幸せか?」
「俺は幸せだ」
「俺は来年にどこに行って、それで……」
そこから先は、覚えていません。
ええ、もちろん、彼のことを否定するつもりはありません。
彼の言う事には何の間違いもなく、
むしろ、突拍子もなくこんな話をして、
彼の方が困っていた事でしょう。
それは申し訳なく思っています。
それでも、私はどんどん、沈んでいくのを感じていて。
せっかく、久しぶりに会えたのに。
彼の話が耳から遠くなっていって。
生きたまま、土を被せられるように、
冷たく突き放したその言い方に、
脈を感じるほど、体が息づいていて。
彼と別れて、しばらくただ茫然としていました。
私は人と会った後に憂鬱になってしまうことが少なくありません。
その友人達のだれもが悪いわけではありません。
むしろ、こんな私と関わってくれる彼らには、
本当に祈るように、感謝しています。
だったらば、毎回のように訪れるこの動悸は、何なのでしょう。
私は何を求めているのでしょう。
私は、ただ、分かって欲しかったのだと、思うのです。
私が口を開いたのは、ただそれだけのことでした。
解決策なんて、いらなかった。
もっともらしいことも。
自己啓発のような押し売りも。
恋人も、目標も、正解も。
ただ聞いて欲しかった。
何にもならなくても、
そうだね、と聞いて欲しかった。
分かって欲しかった。
共に苦しみを分かち合って欲しかった。
泣き言を、共に泣きながら。
寂しいことを、寂しいねと言いながら。
苦しみを、苦しいと言いながら。
痛みを、恥を捨てて、痛いと言いながら。
どうしようもないことを、
どうしようもないと、嘆きながら。
ただ共感して欲しかった。
吐き気のする胃の中に手を突っ込んでみれば、
私は単に、そんなことを思っていたのでした。
でもやっぱり、こんなこと、
誰かを困らせてしまうだけだから。
ただの私のワガママだから。
だから、ここに書きました。
衝動的に。
それでいて、確かな意志を持ってして。
行き先を失い、
私の中で暴れまわり、
腹の中を搔き乱すものを、
こんな夜に溶かしては、
文字に変えて、
どこか遠い、
この世界に飛ばして。
少しだけ、楽になれました。
共感してほしかった。
そんな自分の思いに気付けただけ、
私は良かったのかもしれません。
そう思うようにして、
ささやかな今夜の抵抗を、
ここに記してみました。
私の書いたこんなものが、
いつか誰かの、生きる糧になってくれれば。
それ以上に望むことなど、
ありはしないでしょう。