プロスペクト理論
相場に精通している人なら誰しもが耳にしたことがある言葉。語らずには通れないぐらい大事な言葉である。
それは人間というものの脳の構造そのものであり、
この世界の成り立ちによって自然と出来上がった理論なのかもしれない。理論であるから、それは立証されているということになる。
では、どういった理論かというと、簡単には人間の欲という感情において、人というのは、喜びよりも悲しみの方を重要視してフォーカスしてしまうという習性を持つ。
例えば、あなたは借金を何社から借り入れていて、その利息を払うのもままならない日々を過ごしていたとする。途方にくれたあなたはとある街の公衆トイレに入った。すると隅に1億円の入ったバッグを発見する。
そこには張り紙がしてあり、好きに使ってくださいと書かれている。あなたは悩んだ。これは受け取ることで別にあなたを恨む人間もいないと仮定しよう。受け取るか取らないかになる。しかし、あなたは受け取らない決断をしトイレから出ていった。しばらくして、やはり借金返済にも充てられるし、受け取る決意をし、トイレに引き返すし戻ると、その1億円はもう無かった。
この時のあなたの感情はどういう状態かということだ。
殆どの人間は、受け取らなかったことに後悔をし、引きずってしまう。
受け取らなかった後悔の方にインパクトが残り、
あの1億円があれば、色々なことが出来たのにとか、親孝行できたとか、世界旅行にも行けたなとか。後悔という念が脳内を支配するだろう。
これを体現することにより、人間は次の月に稼ぐ20万円が乏しく感じ始め、元の感情を呼び戻すことに時間を要するようになってしまう。
しかし、考えて頂きたいのだが、あなたは後悔をしているが、あなたのお金は決して損をしている訳でもなく、誰かから借り入れて負債が増えた訳でも無い。その出来事が起きてしまったことによる感情の変容が起きたことになっているだけである。
人間は利益を得た時の感情の強さより、損を受け入れるのを嫌い、いつか利益をまた得れるという根拠ない期待感の方を強く持ってしまう生き物である。
段々と伝わってきているだろうか。
これをマーケットと実業とプライベートの行動に分けて例えてみよう。
マーケットにおいて例えると、利益を最大限に伸ばすことよりも、損失を被った時に、損失を確定することが出来ずに、またいつか戻ってくるだろうという期待感で塩漬けにしてしまうことだ。これがマーケットの罠であり、人間のプロスペクト理論における回収作業になる。
つまり、一番負ける要因がこれである。
実業に関していうと、会社経営が少し傾きかけてきて、別の策に業務転換した方が明らかに業績は改善するにも関わらず、愛着があるがゆえに、努力してきて費やしてきた時間とプライドと人員を捨てれず、そのプロジェクトの可能性を信じ、押し進めてしまう行為である。非常に危険だ。
プライベートに関していうと、あなたは時間があまり無く忙しかったのだが、ようやくの休息で、見たい映画を見に行った。しかし、その内容が望んでいるものと違ったが、かなり失望している。お金を払ってしまっている分、出ることはせず、見たくない映画を見て2時間を費やしてしまった。すぐ出て返金して違う映画を見に行けば問題は無かっただろう。
こういったように、
プロスペクト理論とは、利益や損失に関わる意思決定のメカニズムをモデル化した、行動経済学の理論になる。
これが全てではないが、早目の損失の受け入れと、瞬時の転換作業をすることにより、自分が望んでいた後々の利益や価値の大きさを必ず得れるというメカニズムだけは覚えておこう。
プライドはエゴである。
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