私的音楽コラム 第5回 Lucy Pearl 『Lucy Pearl 』
2000年、私は18歳だった。
大学に進学して、気分は有頂天だった。
毎日、都内の大学に通うことになるから、帰りにレコード屋に行ける環境になるのが嬉しかった。
まあ、実際はキャンパスライフも存分に満喫することになるというか、それはそれで密度が濃い時間だった。
なんていうかな、この時間は、もうこの先絶対にない時間であって、青春の終末でもある。
コロナ禍で通学出来ない、講義にもサークルにも参加出来ないリモート学習なんて、本当に可哀想だと思う。
あの時間は、あの時間にしかない時間が流れる。
その流れに乗れないというのは…
良いことばかりではないのだけど。
このアルバムは、その頃のサウンド・トラックのような存在だ。
自由気儘ではあるが、どこか刹那く陰りがある空気が漂っている。
渋谷DMRを思い出す。
今のHMVが居抜きであることを知っている人は、当時の宇田川町が世界一のレコ村と呼ばれていたことを知っているはずだ。
今の若者は知る由もないだろうけど、この時の日本には、まだそれだけ購買力があった。
インターネットはまだまだ発達段階で、情報は雑誌か、店頭のフライヤーぐらいしかなかった。
あと、数少ない深夜枠のラジオとテレビ番組。
まだアナログなコミュニケーションが残っていた。
だから、とんでも噂話とか、よく聞いたもので。
そういうのは業界の末端にいる小粒が流していたりするのだけど…まあ、それはいい。
ヒップホップやR&Bの新譜12インチを探しに、マンハッタン、シスコ、DMR、ホームベース、DUを時間の限り廻る。
20年以上経って、いろいろなものが変わってしまった。
“Dance Tonight“を聴くと、暗くなってクラブぽくなったレコード屋の雰囲気を思い出す。
レコード屋とクラブとDJが一体になってシーンが出来ていた時代の話。
少しずつ小出しに反芻していくか。