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夜空の流れ星に人の出会いの不思議を想う
使われなくなった広大な牧場の一角に車を駐めて、妻と二人で夜空を見つめていた。最初はキャンピングチェアの背もたれに寄りかかって見上げていたが、首が疲れるので途中から地面にゴロッと仰向けに寝そべった。こりゃ、楽だ!
雲一つない快晴の夜空に大小さまざまな星が水平線近くまで散りばめられている。街の灯りといえば、はるか遠くに見えるだけで、星の輝きを邪魔する人工的な光はどこにもない。夜空を一瞬、細い筆でさっと書き下ろしたように光が流れた。
「あ、流れた!」
「今、流れたね!!」
弾む声で妻が返事をした。妻も同じ流れ星を見たらしい。宇宙を漂う塵が地球の引力圏に入り込み、大気と摩擦して燃え尽きる流れ星というもの。夜空を流れる時間はほんの1秒にも満たないであろう。同じ流れ星を一緒に見られるとは運がいい。
数え切れないほどの星が輝く夜空は、大気という薄く透明なベールを通してみる宇宙の広がりそのものである。人智をはるかに越えた果てのない宇宙を今この場所から直接覗き込んでいる。果てはどうなっているかを知りようもない神秘の世界。
138億年と言われる気が遠くなるような長い宇宙の歴史の中では、たかだか100年の人の一生など流れ星が流れる時間にも等しい。その一瞬の間に赤の他人だった二人が出会い、こうして一緒に夜空を見上げている。それは宇宙の神秘よりもっとずっと不思議なことなのかもしれないと想いながら、もう一つ流れないかなと飽きもせず二人で夜空を見続けていた。