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ジャンプの主人公

僕には好きな漫画がいくつかあるけれど、やっぱり週刊少年ジャンプの割合は群を抜いている。

ワンピース、ナルト、ドラゴンボール、スラムダンク、銀魂、ブリーチ、トリコ、黒子のバスケ…

どの作品にも、自分の好きなキャラクターや、必殺技や、エピソードっていうものがある。漫画やアニメを夢中で追いかけたり、友達と考察を語りあったりすることに、10代を生きる中でいったいどれくらいの時間を注ぎこんだんだろう。


ジャンプの主人公たちは、ストーリーの中で数多くの壁にぶつかる。傷ついたり何かを失ったりしても、仲間に助けられながらひたすら努力する。ぶち当たる試練が大きくなればなるほど、より強く自分を鼓舞して前に進んでいく。そんな風に1歩1歩成長していく姿を自分に重ね合わせて、きついことを乗り切るための力をたくさんもらったな。


けれど大抵の場合、彼らは何かしらの資質や能力を持っているんだ。


伝説的な家系の血を受け継いでいたり、他人が羨むほどの身体能力に恵まれていたり。もちろんそれがかっこよくて、彼らの魅力になっているんだけど。

生まれながらの才能を持った主人公たちは、持ち前の精神力と努力で更にそれに磨きをかけ、秀でた存在となっていく。

一方で、主人公の快進撃の裏側では、名前すら与えられない「何者でもない人たち」が、一瞬の出番のために生まれては死んでいる。背景の中に埋もれ、たった1つのコマの隅っこに描かれただけで、お役御免になってしまう人々。

おそらくそういう人たちも、何者かになってやろうと奮い立って、見えないところで努力しているに違いない。けれど彼らは、主人公のような資質や能力がなかったり、環境に恵まれなかったり、あるいは単純に努力が足りなかったりして、儚く消えていく。


10代の頃は、コマいっぱいに躍動する主人公に見とれていただけだった。彼らの人生が、漫画という1つの世界の中であんなにも大きく描写されることに、憧れを抱いていた。自分もそうなりたいと願って、頑張ろうと思った。

最近はちょっとだけ目線も動いて、主人公たちの背景に小さく描かれた、名前も分からない人たちのことも見つけられるようになった。彼らがその場面に辿り着くまでの人生や、普段何をしていて後々どう死んでいくのか、そんなことも少しは気になるようになった。


自分はこの世界の中で、いったいどっちの部類に入るんだろう。どうせなら、コマ割りいっぱいに描かれる人の気持ちも味わってみたいけれど、端っこで頑張る人にだって人生がある。登場回数は少なくても、自分の番が回ってきた時には笑っていられたらいいな。自分の周囲の人だけでいいから、片隅で誰かと笑いあっていたい。

たとえ背景であっても、そこには人生が埋まっているし、自分の人生を埋められるっていうことも、忘れないでいたい。