夜の繁華街が好き
夜の繁華街を歩くのが好き。
そもそも散歩が好きなのだが、それなら自然豊かで空気のいいところや交通量の少ないところを歩けばいい。ただ何故か足が向かうのは、いつも夜の繁華街なのである。
その理由を考えてみたところ、結論が出た。
自分より下の人間を見つけて、見下したいからである。そして、それが容易に叶う場所だからである。
集団で騒ぎ、人の邪魔になっても平気でいる。道端に座り込んで酒を呑み、路上でタバコを吸い、平気でゴミをポイ捨てする。しまいにはゲロを吐いたり、寝そべったり。
普段シラフで会ったならばわからなかったような性格や本性、送ってきた生活が一発で見える。浮かれているのか知らないが、二十歳を越え、分別のつくようになった立派な大人が平気でそんなことをしているのである。
そら見下すだろ。
僕は僕自身、良い人間だとは言い難い。人生経験も乏しい。親に甘えきっていて、自分の力だけで生活したことはない。恋愛に関しては、手すら繋いだことがない。もちろん告白もしたことないし、されることなんて以ての外。セックスだって一度も。同級生たちと夜を謳歌した経験も数えるほどしかない。それでも、どうにかしようとも思っていないし、どうにもできないと思っている。人間的に健全な生活を送っていない。
そんな僕でも、人や街に迷惑をかけるこいつらよりは幾許かはマシだと思える。そう思いたくて、夜の街を散歩する。
これも寒空のなか書いている。
たった今、見下してきたばかりだ。