現代音楽に片腕を突っ込む
11月に参加する現代音楽フェスティバルの打ち合わせに行ってきた。新作を含めた5曲を5人の若手指揮者が3日間リハーサルし、ベルリンとデッサウで演奏する。そのリハーサルがマスタークラス形式なので、曲の概要と時間割について話し合うべく、顔合わせも兼ねて、取り仕切る指揮者のお宅に受講生で伺ったという経緯。約束の時間5分前に日本人2人、時間ちょうどに韓国人が到着、30分後にスペイン人が現れるというお約束の後(1人はキャンセルした)、簡単に自己紹介を済ませ早速楽譜を開く。マスタークラスはいきなりアンサンブルとのリハーサルから始まるため、変拍子の振り分けなど最低限統一しておこうということで、高速数字書き取り開始!135小節目の8分の7は2、2、3、次の4分の3は八分音符単位で6つ振り・・・。夏休みボケ中の脳みそはぐるんぐるん。
具体的なリハーサル日程を組む段になり、どの曲により興味があるか、音楽祭までにどれくらい準備する時間がありそうかなど打ち解けた雰囲気で話し合う。5曲全部準備するのがストレスになるようなら今のうちから本番で振る曲を決めて集中的に勉強しようとか、2回の本番で指揮者が変わるとアンサンブルにストレスがかかるかもしれないからリハーサルの様子を見て判断しようとか、ストレスを認めた上で効率と生産性を上げる発想って大事だなと気付かされた。
日本の清潔さとか便利さ、サービスの細やかさと、罪悪感を持たずに休める環境って両立しないものなのかなあとか考える。
話は戻って現代音楽。打ち合わせの最後に指導者の指揮者が恐ろしい質問をした。
「ところで君たちが好きな作曲家って誰?」
(うわあ、ブーレーズが古典とか言ってるこの人たちを前に一体どんな名前を挙げろっていうんだ。モーツァルトっていう作曲家が好きです、てへ。とか言ってもしらけるのは目に見えてるし、あえてモンテヴェルディとか言ってみるか?それか日本の作曲家?授業で習っただけの曲を良く知りもしない人?いやでも話が展開しちゃったらどうしよう)
とか考えている間にも他の指揮者たちは聞いたこともないような名前を次々と挙げていく。変な汗をかき始めた頃ふと気がついた。これこそ自分を実力以上に見せたいがための無駄な自意識過剰ストレスじゃないか。教養という名のおばけに怯えて実際に知識を得る機会を逃すやつ。知ったかぶり、カッコワルイ。ということで片言のドイツ語でありのまま話した。
「私はまだみなさんのようにたくさん経験があるわけではありませんが、4月に振ったミュライユはなんかいい感じでした。私にとっては新しい音楽は新しいです。」
我ながら馬鹿っぽい。現代音楽は自分にとって新鮮だって意味合いのつもりだったんだけど "für mich ist neue Musik neu." と、アホくさいけどどこかの偉い人が言ってたらなんとなく深そうな発言になり、大いに笑われた。
最終的に全員全曲準備することに話はまとまり、結局譜読みに追われる日々に落ち着くことになりそうだ。自他共に認めるプロクラスティネイターの夏休みが終わろうとしている。
procrastinator
【名】
〔するべきことを〕ぐすぐすと先延ばしにする人、〔仕事などを〕すぐにやらない人、ぐず◆【動】procrastinate
数日前にカタカナビジネス語ダサいとか書いたのはもう忘れました。要は先延ばし野郎だけど響きだけでも「クリエイティブディレクター」みたいな感じにしてみようかと思って。いややっぱりダサい。