バーテンダー、石垣忍さんとの出会い その2
前回、「BIRDY.」に大きな影響をもたらしたバーテンダーとの出会いについてお話ししました。その名は石垣忍。東京・渋谷「Bar 石の華」のオーナーバーテンダーです。
石垣さん自身、シェイカーを製造する会社にオーダーして自分が設計したシェイカーをカスタムメイドした経験があり、シェイカーの内部構造はどうあるべきか、独自の理論やさまざまなアイデアをお持ちでした。
シェイカーの内部構造の理想的な形状は球体なのですが(なぜ球体が理想的なのかについては、いずれお話しします)、シェイカーは自立したほうが使い勝手がいいため、底面を潰して平面にしているんですね。
石垣さんは平面の底をさらに叩き、球体に近づけていたのです。
また、お客さまのオーダーのほとんどがシェイクのカクテルということもあり、腱鞘炎になってしまったそうで、シェイクにおける手首とひじの使い方を変え、丹田を意識した振り方にシフトしたそう。
そうした経験を踏まえ、「省エネルギーでいかに味わい深いカクテルを作るか」ということを、常に意識しているとおっしゃっていました。
「私がいま、開発中のシェイカーなら、シェイクの回数を減らすことができるかもしれません」と伝えると、「ぜひ、一度振らせてください」と、ものすごく前向きなのです。
ここまで何人かのバーテンダーにお目にかかりましたが、「完成したら教えてください」とおっしゃる方が大半で、「振りたい」とおっしゃったのは石垣さんだけでした。
このように「新しいシェイカー」に興味を持ってくれた石垣さんは、バーカウンターから出てきた私の隣に座り、1時間ほどシェイカー談義を繰り広げてくれました。
当時はこのシチュエーションが意味することがまったくわからなかったのですが、石垣さんが営業中にバーカウンターから出てくるということは、驚天動地の大事件だったらしいのです。
本人曰く、30年近いバーテンダー人生において、バーカウンターから出たのは2回きり。
その1回が「BIRDY.」だったなんて、なんて恵まれた出会いだったんだろう。いまでも時々、しみじみと当時を振り返ることがあります。
石垣さんとはこの時以来のお付き合い。
石垣さんの理論、アイデア、フィードバックは、「BIRDY.」に欠かせないものになっていきます。
続く
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