【分析】Xにおける「信者度」を見分けるための簡単な方法 信者比率という概念の提案

RTに対するいいねの数が少ないツイートは、狂信的なツイートである。そして、あまり世論を反映していない可能性が高い。私はこれを信者比率と名付けている。

はじめに

Xにおいて炎上は時に、人工的に演出される。幅広い人からの共感を集めるものではなくても、熱心な支持者によって一生懸命に拡散されることで、まるで大勢の支持を得ている意見であるかのように見える。

そんな、修羅、インターネットをどう歩いていけばいいのか? 私は、ツイートを見る時に、RTといいねの比率に注目している。そしてこれを「信者比率」と呼んでいる。

驚くべきことに、この信者比率に注目すると、バズっているツイートのうち、何が人工的な炎上・党派的な盛り上がりで、何がサイレントマジョリティの世論を反映したものか、たちどころに分かるようになる。5秒とかかるものではない。下記ではその解説と実践を紹介する。

信者比率はRTの数の何倍いいねがあるかという考え方だ。一般に、RTはいいねよりも心理的ハードルが高い。なので、RTの数は、そのツイートに対する「熱心なファン」の数に対応する。逆にいいねの数は「ゆるいファン」の数に対応する。

そしてこの信者比率、つまりRTに対するいいねの数が少なければ少ない、いいねに対するRTの割合が高いほど、「熱心なファン」の数に比べて「ゆるいファン」の共感が少ないツイートだということがわかる。つまり、信者比率は0に近づくほど、狂信的ということになる。

そして、基本的な考え方はこうだ。RTの数に対していいねの数が3-2.5倍位の以下の比率のツイートが多くなってくるとそれはちょっと警戒した方が良い。さっくりとした目安を下に置く。

信者比率2倍以下 最警戒 
信者比率2.5-3倍以下 要注意
信者比率5倍以下 注意

おおまかにこんなイメージである。何がというわけではないが、なんとなく数字が低くなるほど「ヤバい」気がしてくる。体感としては10倍弱くらいの信者比率が一般的なバズである。

実際に例を見てみよう。まずは一般的な「バズツイート」から。普通、この信者比率は、桁が一桁ぐらい違うことが多い。 

一般的バズツイートの信者比率と、政治的なツイートの信者比率の比較

まず一般的なツイートから信者比率の考え方を当てはめていってみよう。

このネタツイートの場合、いいねはおよそ7.3万。RT数は引用RTも含めてざっくり1万。つまり7倍前後の信者比率である。

悪評高い滝沢ガレソのツイートも見てみよう。

滝沢ガレソの中ではほっこりとしたツイートである。この場合およそ8000のRTに対して8万のいいねであるから、信者比率は10倍弱。穏当な数字である。

しかし、同じ滝沢ガレソの数字でも、政治的なテーマになると一気に信者レベルが高まってくる。下のツイートを参照されたい。

中国人の脅威を煽るツイートである。このツイートは1.6万のRTに5.3万のいいね。信者比率は、3倍強にもなる。つまり信者レベルが上のツイートに比べてだいぶ高いということになる。

どうだろう。この信者比率という考え方の面白さがわかっていただけただろうか。

それではこの信者比率という概念を使って様々なことを分析してみよう。

政治的なツイート群の信者比率の比較

イメージの通り、政治家のツイートや政治に関するツイートは、党派性を帯びやすいために、信者比率が低くなり、信者度があがる傾向にある。

岸田文雄の信者比率 


まずは前総理大臣の岸田文雄のツイートを見てみよう。まずはこのツイート。

約5倍弱の信者比率である。やはり一般的なツイートに比べると信者レベルはあがってくることが確認できるだろう。これをベースに考えてみる。

同じ岸田文雄のツイートでも、メッセージ性が下ると信者比率は上がり、狂信度は下がる。

このツイートの信者比率は10倍を超えるのだから、かなり幅広く共感されたといってもいいだろう。 

逆に、安全保障のツイートになるとかなり信者比率はさがってくる。

約3倍の信者比率。狂信的レベルに近づいている。

このことから、やはり政策的メッセージが入ると信者レベルがあがり、かつ、経済政策以上に安全保障政策の方が信者レベルが高いんじゃないか、ということが考えられる。

しかし、まあ政治家のツイートの信者比率が高いのは分かりやすい。政治家のツイートはみなある程度警戒して読むことができるだろうし、政治家のツイート=世論と考える人は少ないだろう。むしろ信者比率が効果を発揮してくるのは、政治家以外による政治的なツイートの分析において、それが自然な共感か、ある種狂信的な何かなのかということである。

#国民民主党に騙されるな  の信者比率

上記の記事というエビデンスがあるので、ここでは#国民民主党に騙されるな というものが党派的なネガティブキャンペーンだったという前提に立ち、これらのツイートの信者比率を見ていきたい。

8000のRTに1.3万のいいね。信者比率が2倍を切るかなりの低水準であり、極めて狂信的なツイートだ。

一方で、このハッシュタグを使って逆に国民民主党を擁護するツイートはどうか。

驚くべきことに、政治的ツイートでありながら10倍近い信者比率である。かなりサイレントマジョリティのゆるい共感を集めていたことがわかる。こちらのツイートについても同様に信者レベルが低く、サイレントマジョリティの支持を確認できる。

なんと10倍を超える信者比率である。

ご存知の通り、国民民主党は選挙において躍進した。世論は信者でなくサイレントマジョリティの意見の反映である。このことから、SNS上での反応と世論のギャップを見るのに信者比率は有効手段だと言えないだろうか?

(ちなみに玉木雄一郎本人のツイート群の信者比率は政治家なのでかなり低くなり、信者レベルは高くなる。あくまで、政治家以外によるツイートの分析として効果的なのかもしれない。)

石丸伸二と国民民主党の関係性についての信者比率

このことをさらに考えていく。信者比率が高いほど、狂信度が低くサイレントマジョリティ的思考パターンを反映しているため、実際の世論に近いのではないか、という仮説の証明である。題材はふたたび国民民主党。

Xにおいて、国民民主党は、選挙期間中、石丸伸二との関係性に関わる批判を度々された。

しかし、各ツイートの信者比率を見ると、「石丸伸二と絡めて国民民主党を批判するツイート」の信者比率は極めて低い一方で、「石丸伸二のみを批判するツイート」や、「国民民主党を擁護するツイート」の信者比率は高く、サイレントマジョリティは一定、石丸伸二に嫌悪感を示しながらも、国民民主党への支持を変えていないことが予測できた。下記の通り見ていこう。

まず、石丸伸二と絡めて国民民主党を批判するツイートである。

5420対8025。信者比率は驚くべきことに2を割る。こうなってくるとネット工作の域である。極めて狂信的なツイートだといえよう。

一方で、石丸伸二が選挙前日に国民民主党の演説会場に登場したことで、批判はさらに沸騰した。こうなると、信者比率は4倍まであがり、多少サイレントマジョリティの考え方が揺らいだことが伺える。

1036対4384

しかしこのタイミングにおいても最も信者比率が高く、サイレントマジョリティの思考に刺さっていたと考えられるツイートは下記のように、国民民主党を擁護するものだった。驚くべきことにいずれも信者比率10を超えて、ゆるい共感を呼んでいるツイートである。拡散はしづらいけど国民には入れたいという心理状態が強くある。

205 3113
264 3011
98 1255

このことを踏まえると、石丸伸二と絡めた形で国民民主党の批判をしていた勢力の声の大きさは過大評価されていた可能性があるだろう。

結果的に国民民主党は28議席を獲得する躍進を見せた。少なくとも石丸伸二との関係性が国民民主党にネガティブに働いたとは考えづらい。してみると、信者比率が高く信者レベルの低いツイート群がサイレントマジョリティの声を反映していたと言えるのではなかろうか。

信者比率による社会現象の分析は、狭義の政治以外でも可能である。次は、Xおなじみの男女論をこの概念で分析してみよう。

男女論における信者比率

実は、この信者比率を分析すると、Xで見られるミソジニーが二つの種類に分けられる。「理屈っぽい狂信的ミソジニー」と「嘲笑するサイレントマジョリティのミソジニー」である。

まず、理屈っぽいミソジニスト達のツイート群を見てみよう。

信者比率は3-4倍。それなりに狂信的なツイートであり、エコーチェンバーを伺わせる。

これも信者比率3-4倍。画像内の引用元のツイートも3-4倍のレンジに収まる。

これらのことから理屈っぽいミソジニーは狂信的で、エコーチェンバーの中にあるマイノリティ集団だと分かる。一方で同じミソジニーでも、嘲笑系のツイートの信者比率はかなり高く、サイレントマジョリティの中にあるミソジニーの存在を確認できる。

このツイートの信者比率は10倍弱になる。一般的バズツイートの水準だ。

これもフェミニスト的なツイートの揶揄としての投稿だが、信者比率は10倍弱である。

つまり、ミソジニーがこの社会に根深くあるとするのであればそれは、フェミニズムに対する反論ではなくて嘲笑的な形を取っている。女性のステレオタイプ化による嘲笑的な態度はかなりサイレントマジョリティに浸透している印象を持った。

一方で、いわゆるフェミニスト色が強いツイート群はどうか。性加害を割と広い主語で断定的に批判するツイート群だが、信者比率は5-7倍程度である。それなりにサイレントマジョリティの支持を背景にしている。

一方で、男叩きの文脈でいわゆる「チー牛」を嘲笑ツイートはさらに信者比率が高くなりサイレントマジョリティの思考を反映してくる。

驚くべきことに信者比率は15倍を超える高水準だ。嘲笑的ミソジニーツイート以上にサイレントマジョリティの実感を反映している。

このことを踏まえると、結局サイレントマジョリティは「女さん」と「チー牛」を嘲笑する傾向があり、フェミニストよりはミソジニー系論客の方が狂信度が高いということになる。フェミニズムの敵は、論客ではなく、サイレントマジョリティの嘲笑的な態度なのだろう。そして、男全般への怒りよりも「チー牛」への嘲笑の方がサイレントマジョリティの態度である可能性もある。

女性差別とチー牛差別は確かに存在していると言えよう。さらに言えば信者比率10の女性差別と、信者比率15のチー牛差別は後者の方がより根深い可能性も考えられる。

無論私の恣意的なセレクションによる可能性もあるので、異論反論ある方はぜひ自分でも調べてみてほしい。

信者レベルの低さが示唆するものは、そのツイートが他人の考え方をどれだけ変えたかということである

さて、この信者比率という概念を使っていえることはこれだけではない。政治家や政治運動においては支持者を増やすために、信者比率を意識してツイートをすることも有効だろう。

人は何もないところから、ゆるい共感を経て、強い共感に至る。人の考えを変えるためにはまずゆるい共感をしてもらう必要がある。

このことを踏まえると、信者比率が10倍近くなるような、信者レベルが低くサイレントマジョリティに共感されるツイートをすることが、支持層を広げる上では有効なのではないだろうか。

逆に、信者比率が2倍に近いような、信者レベルの高いツイートは、反応の強さの割に誰の考え方も変えていない可能性が高い。仲間内で気持ちよくなっているだけかもしれないのだ。

具体的には掲載しないが、いわゆるリベラル派論客のツイートを見てみると信者比率が低くエコーチェンバーに閉じこもっている傾向が見られた。左派はもう少し、信者比率が高いツイートをすることを志向するべきだと思われる。

まとめ

議論をまとめる。

RT数に対していいねの少ないツイートは、熱心な共感者の数に比べてゆるい共感者の数が少ない、狂信的なツイートだと考えられる。
サイレントマジョリティの考えを予測するうえでこの「信者比率」は参考になるかもしれない。
信者レベルの高いツイートは、ゆるい共感者が少ないため、あまり支持者を増やす効果はなくむしろ仲間内で気持ちよくなっているだけの可能性があり、世論を正確に反映しない。

追加問題

このnoteでは結論を記載はしないが、信者比率を使って分析してみたい人に向けて参考書ライクに追加問題を列挙しておこう。

◯兵庫県知事選挙で前職のさいとう元彦はどれくらい勢いがあるだろうか?#さいとう元知事がんばれ というハッシュタグの信者比率を見てみよう

余談

エッチな画像の信者比率は体感20倍くらいになる。拡散したくはないがいいねとは思っているむっつりの人たちが多いということの証である。男女差があるなか気になったので#創作BLというタグでいくつか信者比率を確認してみたが、大体20-30倍くらいが多そうだった。

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