天気予報士なら初対面でも天気の話で何時間盛り上がれるのか?

もちろん私は自他ともに認めるコミュ障である。典型的INFPなので「仲良くなったら面白い」と言われたことは数あれど、初対面で好印象を持たせたことは皆無と言っていい。

なぜか。原因は色々ある。顔つきや仕草のような視覚情報から、声質のような聴覚情報もあるだろう。痩せてゆっくり喋れば解決する問題も多い。しかし今回言いたいことはそこではない。私は初対面同士の会話が下手なのである。

自分を好きかも嫌いかも分からない相手を前にして無難な話をしようとすると、なんだかむず痒くなってしまう。こんなことを話して何になるんだと、セルフツッコミが止まらない。つい、「人が必ず死ぬのって怖くないですか?」みたいな根源的過ぎることを聞いてその人の人生観を知りたくなる。かろうじてある常識が私をそこから食い止めている。

天気の会話が苦手だ。無難な会話の代表例といってもいいが、いい天気ですねと言われてもそうですねぇとしか言うことがない。暑いですねと言われても私は汗かきの割に温度に鈍感で、汗だくになりながら「暑いですかね?」と意味不明な返答をしたことも多々ある。汗だくの人間が汗だくの口で汗を吹き飛ばしながら暑くないかもアピールをしてくる構図はサウナで痩せ我慢をしている男子高校生でしか許されない。無論私は自分が寒いのかも良くわかっていないので、11月になっても半袖で外を歩き回って鼻水を垂らしたりする。そんな人間に、天気の話は難しい。

しかし、ある日ふと気づいた。コミュ力がないと嘆く私は果たして真剣に天気の話をすることと向き合ってきたのだろうか。答えは否。私は天気の話に一度だって向き合ってこなかった。その証拠に私は天気の季語も知らなければ、雲の名前も「入道雲」しか分からない。

成長しなければいけない。コミュニケーション能力がないと嘆くのであれば、私は天気の話をするべきだ。「入道雲」しか分からない時点でこれは知識と努力の問題であり会話のセンス以前の問題である。自分のコミュ力は怠惰の証に過ぎない。

というわけで天気の話をする時に多少前提知識があったらどんな会話ができるのか考えてみよう。

雲の名前と私の会話

例えば巻雲。

巻雲

「いかにも秋晴れといった雰囲気の雲」らしい。中学受験でもしかしたら覚えたかもしれないが、今の私はこの雲を見ても春夏秋冬の区別などつかない。もし相手が巻雲の話をしてきたらどうなるか。

相手「今日は巻雲が出ていていかにも秋ですね」
私「……細い雲ですねぇ~」

これではだめだ。相手の風流のレベルに全く合わせられていない。雲について私は細いか太いか、薄いか厚いか、それくらいの感覚しかない。

もし私がここで巻雲について勉強していたらどうか。

相手「今日は巻雲が出ていていかにも秋ですね」
私「巻雲は5000m以上の高度にできるらしいですよ。スカイツリー10個分くらいの高さなんですね。あそこまで高いと気温はマイナス40度らしいです。高度が高くなると気温が下がるということで思い出したんですが、飛行機の車輪の格納庫に入って密航しようとすると、大体高度の寒さと酸素の薄さでやられて7-8割方死んでしまうらしいですね。

だめだ。決定的にだめすぎる。巻雲について付け焼き刃の知識を披露としようとした結果、途中で「俺はただ巻雲の豆知識でマウントを取っているだけなのでは?」という気づきを経て、早口で軌道修正しながらオモシロ話をしようとした結果、飛行機の密航の話をしてしまうことになる。

これでは相手も「へ、へぇ〜……」というしかないだろう。

季語とか風流な話

では秋という連想から季語とかにつなげてみるのはどうだろう。これなら相手の情緒に対してもう少しうまく返せるのかもしれない。

相手「今日は巻雲が出ていていかにも秋ですね」
私「似た形のうろこ雲、いわし雲は秋の季語ですね。正岡子規も「『 すさまじき 雲の走りや 秋の空 』と読むような空ですね。」

ダメだ。風流感はだいぶ増したが、突然の正岡子規である。こんなこと言われたら普通の初対面の人は、「俳句お詳しいんですね。お好きなんですか?」と聞かれるに決まっているが、私は今「秋空 俳句 有名」でグーグルにお尋ねしただけであり、正岡子規の俳句なんて柿しか知らないのである。

というか普通に天気の話をしただけなのに俳句の話をされても困るだろう。私だって困る。なんて答えればいいんだろう

相手「正岡子規も「『 すさまじき 雲の走りや 秋の空 』と読むような空ですね。」
私「正岡子規ってみんな横顔しか知らないですよね」

横顔の正岡子規 顔の右半分を知らない

オワリ

ちゃんと考えようと思ったのだが生産性がなさすぎて前振りのほうが長い文章になってしまった。

結局天気について勉強しても知識でマウントする感じになって会話は難しいのかもしれない。初対面の天気予報士同士はコミュ力に苦労しないという話を聞いたことがないことからも、天気の知識だけではだめなのかもしれない。無論知識がないに越したことはないにせよ。

特にオチがなくて申し訳ないが、コミュ障が天気の話をできるようになる方法を知ってる人は教えてください。最近、オードリーもラジオでずっと天気の話をしているが、それなのに面白いのでちゃんと分析してみようかな。

正面の正岡子規

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