評価とフィードバックの役割
インストラクショナルデザインにおいて、評価とフィードバックは、学習プロセスの中で極めて重要な役割を果たします。
学習者の理解度を確認し、学習の質を向上させるための基本的な手段です。
講座やセミナーで評価とフィードバックがないやりっぱなしで、学習者がゴールまでたどり着いたのかどうかも把握しないで終わってしまうことも良くある話です。
<1. 評価の目的と重要性>
評価の主な目的は、学習者の学習成果を測定し、学習の進捗を確認することです。
教師や学習者自身が現在の理解度を把握し、次に進むべきステップを決定することができます。
これをしないと、あらかじめ決めたカリキュラム通りに進めることが目的になってしまって学習者がおいてけぼりになってしまいかねません。
「ここは思ったより理解度が早いから進めちゃおうか」「これはもっと深掘りしたほうが良さそうだ」「フォローアップが必要そうだな」など、カリキュラムの進行が目的ではなく、学習者がゴールに辿り着くかどうかが目的として、カリキュラムに囚われすぎずに学習者に合わせて変更したい。
評価は学習者自身がゴールまでどれくらいまできたのか?達成できたのかどうか?という、「私にもできる感」や「満足度」にも直結します。
ただし、「できない私」を思い知らしめるだけのテストにならないようにしなければ、評価恐怖症の患者を作りかねないので、ここは注意が必要かと思います。
<2. 評価の種類>
評価には大きく分けて二つの種類があります:形成的評価と総括的評価です。
形成的評価(Formative Assessment): 形成的評価は学習プロセスの途中で行われ、学習者の理解度や進捗を随時確認するための評価です。クイズ、小テスト、ディスカッション、観察などが含まれます。形成的評価は、学習者が現在の進捗を把握し、必要な改善を行うためのフィードバックを提供することを目的としています。
総括的評価(Summative Assessment): 総括的評価は学習の終わりに行われ、学習目標の達成度を総合的に評価するものです。期末試験、最終プロジェクト、ポートフォリオなどが該当します。総括的評価は、学習者が学習目標をどの程度達成したかを明確にし、学習の最終的な成果を評価します。
<3. 効果的な評価方法>
効果的な評価を行うためには、さまざまな評価手段を活用することが重要です。テストやクイズだけでなく、プロジェクト、ポートフォリオ、プレゼンテーションなど、多様な評価手段を取り入れることで、学習者の多角的な能力を評価できます。
ルーブリックの活用も効果的です。ルーブリックは評価基準を明確に示した表で、評価の透明性と一貫性を確保するために用いられます。
これを説明しようとするとボリュームが大きくなりすぎるので、また別の機会に書きますが、ルーブリック表を活用することで、学習者は何が評価されるのかを事前に把握し、自分の学習成果を評価基準に照らして自己評価することができます。
<4. フィードバックの重要性>
フィードバックは、学習者のモチベーションを高め、自己改善のための具体的な指針を提供する重要な手段です。効果的なフィードバックは、学習者が自身の理解度を確認し、次の学習ステップに進むための指針となります。
フィードバックを通じて、学習者は自分の強みを認識し、改善が必要な点に取り組むことができます。また、フィードバックは学習者の自信を高め、学習意欲を向上させる効果もあります。
ただのダメ出しはフィードバックではありません。どうフォローアップするのかが大事です。
<5. 効果的なフィードバックの提供方法>
効果的なフィードバックを提供するためには、いくつかのポイントがあります。
リアルタイムフィードバック: 学習者が学習活動を行っている最中にフィードバックを提供することで、その場で理解度を確認し、必要な修正を行うことができます。オンラインスクールでは実現が難しいですが、レッスンごとにフォーラム機能やコメント欄を活用することで、リアルタイムフィードバックを擬似的に行うことができます。
ポジティブなフィードバックと建設的な批評のバランス: 学習者の努力や進歩を認めるポジティブなフィードバックと、改善点を指摘する建設的な批評をバランスよく提供することが重要です。これにより、学習者は自信を持ちながらも自己改善に取り組むことができます。僕の感覚では3つほめて1つ改善してもらう、ぐらいのバランスです。あと、先にほめる。順番も大事だと思っています。
<6. 評価とフィードバックの一貫性と公平性の確保>
評価とフィードバックの一貫性と公平性を確保するためには、評価基準を明確に設定し、全ての学習者に対して同じ基準で評価を行うことが重要です。
主観による評価に偏ると、一貫性と公平性も偏ることも。とはいえテストのように客観的に数値化する評価にだけ頼っても偏ってしまう。バランスが大事です。
フィギアスケートのスコアリングみたいに芸術点など主観的な評価をする場合は、予め何を見ているのか?など、評価の指針や数値化の透明性を高め、公平な評価を実現することができます。
また、評価結果を定期的に見直し、必要に応じて評価基準や方法を改善することで、一貫性と公平性を維持します。学習者からのフィードバックを取り入れることも、評価プロセスの改善に役立ちます。
<まとめ>
評価とフィードバックは、インストラクショナルデザインにおいて学習者の理解度を確認し、学習の質を向上させるための重要な手段です。効果的な評価方法とフィードバックの提供により、学習者は自己改善に取り組み、学習意欲を高めることができます。評価とフィードバックの一貫性と公平性を確保することで、より効果的な学習環境を提供していきたいですね!
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?