人生初の海外旅行 ニューヨーク編 part1
自分の人生に最も影響を与えた街となると、やはりニューヨークになる。
自分にとってはじめての海外旅行でもある。それも「なぜニューヨークなのか?」と言われると、好きなバンドがその街の出身だったということが大きい。その頃自分が影響を受けていたのはラモーンズやテレビジョンやパティスミスなどだ。そんなバンドが出演していたライブハウスCBGBという店には必ず行こうと考えていた。(今は残念ながら閉店してしまった。)
そこで思い出すのは昔バンドでお世話になった名古屋のライブハウスの店長の言葉だ。
「20歳になる前に一人で海外に行きなさい。人間は歳をとると知識が増えて冒険がしにくくなるから。いつか行こうと思っていても大人になると情報が先に入ってしまい不安になって海外に行けなくなってしまう。」
若かった自分には、その言葉が強く胸に刺さった。
今になるとその言葉の意味がよくわかる。
だから、みんなにも若い時に海外に行くことはおすすめしたい。
そのこともあって、20歳になる手前に自分はニューヨークへ行くことにした。と言ってもわずか7日間の海外一人旅である。まずは白帯からスタートである。そのためにパスポートを申請したり航空券を申し込んだりととにかく全てが初体験だった。当時はインターネットが普及していなかったので、アメリカに行ったことがある人に具体的なアドバイスを求めてそれに従った。そこですすめられたのが「地球の歩き方」というガイドブックだ。これは今でも超有名なガイドブックだが初めて聞いた時は、そんな本があるんだと感銘を受けた。そこに書いてあることを読んでは「現地にいったらこうすればいい」とかイメージトレーニングをした。しかし現地に行ってみると実際にそれを実践すること自体がなかなか難しいものである。ページの後ろの方に簡単な英語のフレーズが書いてある。
「トイレはどこですか?」とか「駅はどこですか?」
そんな言葉を一生懸命に覚えようとした。航空券はH.I.Sで購入した。その時に日本からニューヨークと言ってもいろんなルートがあるということを知った。もちろん直行便があるのだが航空会社とルートや時間帯によって金額がかなり違うのである。その時に格安だったのがアシアナ航空のソウル経由のニューヨーク行きで確か往復で5万円程度だった。今では考えられない安さだが当時はそんな値段で格安航空券が買えた。今のように燃油サーチャージ料などもなかった昔の話である。ついに旅行の当日になって一人で空港に行くのはドキドキした。確か名古屋空港から乗ったはずだが昔の話で思い出せない。しかしいざ飛行機に乗る時にふと疑問が湧いてきた。世界地図を思い浮かべると日本からニューヨークへ行くのになぜソウルに行くんだろう?もちろん料金が安いからその航空券を購入したのだが「わざわざ逆の方向へ行くことが現実的にあるのかな?」
「もしかしたら自分が間違えて違う航空券を買ってしまったのか?」
と、当時は全く知識がなかったので不安になった。しかしそれは間違いではなかった。数時間するとすぐにソウルの空港に到着して乗客はみんな飛行機から降りて行く。飛行機を乗り換えるらしいことがわかった。自分もそれに従った。そしてその時にまた疑問が起こった。自分の荷物はどうなるんだろうか?そんな不安を抱えながら飛行機から降りて空港内のロビーに入っていく。すると喫煙所でタバコを吸う人たちを見つけたので、自分も気を落ち着かせるためにタバコを吸った。そしてしばらくすると次の難関が待ち受けていた。どうやら飛行機を乗り換えてソウルからニューヨーク行きの飛行機に乗る必要があることがわかった。そこでパニックになったのが途中でパスポートの提出を求められたのだが、その時にここに入れておいたつもりのところに入っていないことがわかった。
もしかしてパスポートが見つからなければソウルから日本に逆戻りになるかもしれない?と考えるとさらに汗が噴き出した。なんとか必死に鞄の中を探すとパスポートが自分が思い込んでいた場所とは違うところに入っていた。それをすかさず差し出した。こんな些細なことでも非常に疲れたのを覚えている。海外に行くのも大変だ。先が思いやられる。色々ありながらもなんとかソウルからニューヨーク行きの飛行機に乗ることができた。そして飛行機が離陸して地上から空に向かった時は感動した。窓側の席だったので、外をみると雲の上を飛んでいる景色が見えたからだ。いつも地上から眺めていた雲を上から見下ろす経験をしたのはその時が初めてだった。気がつけば光に照らされた雲海が視界いっぱいに広がり、天国とはこんなところなんだろうか?とすごく敬虔な気持ちになったことを覚えている。
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