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治療開始前に卵子凍結に踏み切る

数年前、30代半ばに差し掛かり結婚の予定も全くないときに、「卵子凍結しておこうかな」と半ば冗談で母に話して「そんなことやめなさいよ」と言われたことがありました。
まさか、こんな形で現実になるとは夢にも思わず…。

私が行うホルモン治療中は基本的に月経が止まります。それをやめたとき、月経が戻るかどうかは100%保証できません。(30代であれば戻る可能性の方が高いとは言われている)
ということは、そのまま閉経して妊娠できない可能性があるということ。

妊娠可能な若年がん患者の、妊孕のための卵子凍結や治療に補助金が出ることを知りました。
卵子凍結しても妊娠できる可能性は高くないのに、そこまですべきか迷いましたが、「子供が欲しい」という気持ちより「子供は絶対いらない」とまで割り切れなかったので、後悔しないために卵子凍結に踏み切ることにしました。
数年前は反対した母も、今回は「やったほうがいいんじゃない」と背中を押してくれました。

自分の家から近い、補助金対象の病院は不妊治療でとても有名で、仕事でも名前を聞くことがあり、友人や知人も数名通っていたところ。さぞかし予約が取りづらいだろうと思っていたら、ZOOMで概要を聞いた4日後には初診予約が取れるというスムーズさ。
がん治療の妊孕は、治療が関わるのでスピーディに対応してくれるとのこと。

病院に行くとまず、採血やその他必要な検査→内診→検査結果が出たら医師の診察→薬処方
というのが大体の流れで、1回の診療にかかる時間が1時間半〜2時間くらい。
全部電子化されていて、検査や診察室にメールで呼ばれるシステムに驚き。
人気病院なので平日の昼間でも患者さんが多く、ご夫婦でいらしている方もちらほら。

数多く凍結するために、本来月ひとつしかできない卵子を増やし、排卵をコントールするのための薬は、毎朝の自己注射と内服のホルモン剤。薬剤師の私もあまり知らない領域で「こんな薬を使うんだ〜」と驚きました。
それにしても、強制的にホルモンに負荷をかける薬は体への負荷も大きい!
飲み薬も注射も気持ち悪くなるし、毎朝の注射や内服が割と面倒。
採卵直前は、薬を使う時間まできっちり決まっていて妙な緊張感もありました。

ちなみに、注射はペン型の操作が簡単なタイプもあれば、医療従事者レベルの操作が必要なバイアルとアンプルの場合もあります。
私は抗がん剤の調製でこの作業をするので慣れていますが、一般の人は絶対大変だろうなと!!

アンプルの生理食塩水をシリンジ(注射器)で抜いて、バイアル(瓶)の中身を溶かして打ちます。
まさか家でこれをやることになるとは…
自分で打つのは結構勇気いる。
ペンタイプはインスリンみたいで針も短い



通院日は基本自分の体の状態で決まるため、いつ受診日になるのかが読めず、急に「明日来て」と言われることも。
予定が立てられずただですらストレスなのに、体にも負担が大きくて「なんで私はこれをやることにしちゃったんだろう(涙)」と目的を見失い泣き崩れた日もありました。
とはいえ、今まで入ったどの保険よりも「自分で選んだ」感覚があり、どんな結果でも前向きに乗り越える決意をしました。

採卵は、一応手術に当たります。オペ着に着替えて手術室に入り、局所麻酔なのでモニターを見ながら状況を説明してもらいます。
卵胞液を抜きつつ培養士さんが顕微鏡で卵子を探して、「ひとつありましたー!ふたつめありましたー!」と叫びながら教えてくれるのが衝撃的で、思わず笑ってしまいます(笑)
手術室に入ってから15−20分で終わるものの、緊張で変に力が入り、経膣で器具をぐりぐりされ針も刺すので痛みもあり、心身共に結構疲労しました…。

私は1回目の採卵では午前中採卵して午後から出勤し、少し痛みや違和感はあるものの問題なく仕事をすることが出来ました。
忙しい方や気を紛らわせたい方はそれも良いですが、2回目の採卵日は1日休みにしたらかなり余裕があったので、思い切って休んでもいいでしょう。

それにしても、世の中の不妊治療の人は、終わりが見えない不安の中こんなに大変なことを一生懸命やっていることを想像すると、本当に労って優しくしてあげないと、と思いました。

卵子凍結はいろいろな考え方があるので、良いとも悪いとも言えず個々の価値観次第だと思います。私は結論良かったと思っていますが、子どもが欲しくなったとき、出来れば使わずに妊娠できたらいいぁ、と切に願っています。

最後に愚痴!
同意書の記名欄が「妻」「夫」しかなくて、独身の私は若干戸惑いました(笑)「本人」にしてくれればいいのに(笑)

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