さよポニの話「銀河」
お久しぶりです(4か月ぶりn回目)。今年もさよポニの新アルバムリリースの時期です。となれば当然今回はさよならポニーテールの新作アルバム「銀河」の話です。多幸感あふれる1枚で宇宙旅行はいかがかな?
M1 はじまった
アルバムはみぃな作詞作曲のアコースティックなナンバーから始まります。さよポニのアルバムにみぃな(と,言うかボーカル組)の曲が収録されるのは2012年のミニアルバム「なんだかキミが恋しくて」以来です。(多分)。ちなみにその時のみぃなの曲のタイトルは「はじまりの合図」でした。そこから9年,ソロアルバムのリリースも経てようやく「はじまり」ました。曲は1曲目にふさわしい,自然にアルバムの世界に入れる曲です。当然ですがソロアルバムの「Long time no sea」の流れを感じます。ここで少しだけ聴けますのでぜひ。
M2 劇場
ふっくん作詞作曲のゆゆの透き通ったボーカルが際立つ劇場賛歌。劇場の臨場感と夢の時間,そして終わった後の喪失感と想い出に昇華される様子が描かれます。そしてなんと言ってもゆゆのボーカルが光ります。サビは特に伸びと透明感のあるゆゆのスイートスポットが存分に味わえます。耳に残る
ゆあーん ゆよーん ゆやゆよん
のフレーズは中原中也の詩,「サーカス」の印象的な一節ですね。ちなみにタイトルは「劇場」ですが,アルバムカバーのタイトルの英訳は「Circus」なのがなんとも粋です。
M3 キマイラ
アルバムに先んじて公開されたマウマウの曲です。まさにキメラのようなトリッキーなAメロからあゆみんとしゅかのツインボーカルが収束していくサビまでの流れは圧巻の一言。最初に聞いたときは甘めで気だるげなマイクリレー,ドラムに対してちょっと早いボーカル,暴れだすベースと品数多すぎなAメロに思わず笑ってしまいました。トリッキーな中にも推進力のあるベースは流石のマウマウ曲。
M4 楽園
今年リリースされたカセットに収録のクロネコ曲です。ここまでの曲は各ボーカルの個の力が目立った曲でしたが,この曲はコーラスワークやマイクリレーなどこれまでのさよポニらしさが感じられる曲です。
永遠なんてどこにも
ある訳ないでしょ wow
ここではない何処かへ
ここには居ない誰かと
といった歌詞は「わ~るど(みたいな)」や「空飛ぶ子熊,巡礼ス」で使われたフレーズを意識して使っているように感じました。さよポニの黒幕クロネコの曲なので何かさよポニの根幹に関わる要素があるんじゃないかと思わず疑ってかかってしまいます。ホントのところは依然謎に包まれていますが。
M5 昨日のように遠い日々(Acoustic ver.)
前作「きまぐれファンロード」の曲をみぃなが演奏・アレンジしたバージョンになっています。「きまぐれファンロード」のver. はバラード調のAメロからカントリー調のポップなサビに急転換するアレンジとなっていましたが,このAcoustic ver. はバラード調のままサビに入るアレンジになっています。カントリー調の特徴あるアレンジにしなくても郷愁やセピア色の情景をイメージさせるあたりにみぃなの技術というか,その時代の音楽の理解の深さを感じます。そして何よりみぃなの歌唱がアレンジがシンプルで品数が少なければ少ないほど際立ちます。
M6 永遠の灰色
アルバム定番の中盤で挟まるジングル的なふっくんの曲です。こういうローテンションなインストはずっと聴きたくなります。ギターの間に挟まるピアノ(シンセ?)も心地いいです。アルバムとしてはここで一区切り,後半は新しい表情を見せます。
M7 ちいさなへいわ
前の曲から急転直下のメグ曲。まさかのボーカルもメグ。聴きなれない歌声にびっくりして歌詞カードの最後を確認してもメグのところに「歌」とは入っていなかったので「誰?」となっていましたがやっぱりメグでした。
好きにやりすぎでは……。一方で曲自体はオノマトペを多用した歌詞が実にリズミカルでキャッチー。
3時のおやつに 全力投球
適度なルーティン 余力でスヤスヤ
のあたりがわかりみが深くてお気に入りです。実はメグも「メグとパトロン」というソロユニットで活動しています。
さよポニでの曲よりもよりピコピコ感あふれるアレンジになっていますね。
M8 ゆめであえたら
またまた前の曲から急転直下でメグの正統派ポップソング。作曲メグ・ボーカルあゆみんの「フローティング・シティ」以来のお気に入りコンビです。やはりあゆみんの伸びやかなボーカルが心地いいです。前作「きまぐれファンロード」の「シオン」と続きのような曲で,部屋を相手が出て行ったばかりでその前の生活を思い出しつつ前に進もうとするような「シオン」と,そこからしばらく経ってその生活もすっかり風化してしまった「ゆめであえたら」。この対比が何と言うかエモい。
ただ夢であえたらいいな それでいいな
というサビ終わりの思い出と今の生活を天秤にかけている感覚がなんともほろ苦いです。この感覚は初代あゆみん卒業曲,「ゆめなんです」に近いのかもと思ったり。
メグさんもこう言っているのでどんどんメグ×あゆみん曲作ってほしい。私が喜ぶ。
M9 夜の冒険者たち
324Pの都会的な雰囲気漂うおしゃれ曲。この雰囲気と「三人そろって歩く」という歌詞からおはようツインテールへのオマージュかと思っていましたが,単純にさよポニの三人時代に作っていた曲が今回晴れて収録されたのだそう。
「海岸通りは八時」という歌詞とシティーポップ的な雰囲気からピチカート・ファイブの「東京は夜の七時」を連想したのですが,冷静に聴いてみると全然似ていないですね。聞き流してください。
M10 みえないフレンド
マウマウの現実と妄想入り混じる切なめな曲。Twitterがテーマの曲で「フォローした同じ学校のあなたは誰?」,「画面越しの君が実は隣にいたら楽しいね」というあらすじのです。自分の学生時代にはTwitterとかはまだ一般的じゃなかったのに感情移入できちゃうのが不思議です。このテーマを一切リアルな情報を出していないさよポニでやってしまうというメタ。この曲はそういったメタな作品としてみるか,さよポニの中の人からファンへのメッセージとしてみるか,はたまた実はお互い素性がほとんど分かっていないという中の人同士のやり取りとしてみるか,といった具合にいろんな視点で見ても成立する不思議な曲です。ちなみに曲名の英訳は「Someone」。粋。
M11 この道
324P渾身のバラードです。アレンジは合唱曲を思わせるほどにシンプルでミニマルな構成ながらも心に迫るのは,みぃなの歌声と曲そのものの地力があるからでしょうか。周囲の環境の不条理とそれに小さな一歩で向かっていく歌詞は,同じく324Pの名曲「メッセージ」を思わせます。こういう壮大なテーマを何の力みもなくやれてしまうあたりはさよポニらしいな,と思います。この曲はMVも公開されているのでぜひこちらも。
ちなみに男声コーラスが入っており,「誰だ?」と思ったら324P本人でした。メグも参加しているみたいです。
おわりに
ということで今回はさよポニの新アルバム「銀河」についてでした。前作「きまぐれファンロード」同様アンソロジー的な要素が強いですが,学園感のあるテーマで揃えられた青春群像劇的な「きまぐれファンロード」に対して,「銀河」のテーマの振り幅の大きさはリード曲の「キマイラ」そのものといった印象でした。そしてみぃな・ふっくんが軸だった時代からは様変わりして個々の個性がより前面に出るようになったように感じます。
それにしても毎年コンスタントにアルバムを仕上げてくるさよポニにはホント感謝です。このアルバムを聴きながら年を越して,来年のリリースをまた楽しみにしたい思います。
以上,お納めください。