学生フォーミュラを知ろう!#7 (静的期編)
今日はお休みを挟んで「学生フォーミュラを知ろう!」のスケジュール編第三回目。大会前の前哨戦,静的審査のための書類を準備する時期,静的期編になります。
まずは概要
静的審査のデザイン・コスト・プレゼンの内,大会前に大がかりな書類の提出があるのは,デザイン・コストになります。大抵6月上旬にデザインの書類,続いて6月中旬にコストの書類の提出があります。デザインはデジタルでアップロードになりますが,コストの書類は郵送(当日消印有効)となります。ちなみに提出が遅れると,ペナルティで大会のポイントから魅かれてしまいます。数ポイントの差で優勝を争っている各校にとって,このポイントは大きいので遅延は許されません。
ロジックを組み立てろ!
まずはデザインから。デザインはマシン設計の適切さや革新性,整備性や製作性などが審査項目としてあります。高得点を狙うには,これらの項目に触れつつ各項目でしっかりと評価されるようにアピールしなければなりません。一方で(私が現役の時は)紙面に制限があったので,限られたスペースでいかにアピールするに苦心していました。
一方で,ただ項目を列挙するだけでなく「なぜその設計にしたのか」というロジックがないと評価されません。そのため,「コンセプトからこういうマシンをつくる」→「そのために目標性能はこのくらい」→「それを達成するには各パーツの性能はこれくらい」と,いうようなロジックを組み立てます。また,各パーツの性能を評価する際にはいわゆるPDCAサイクルで評価することでロジックを強化します。
各担当が自分のパーツについて設計意図を書いて,それをメンバーでまとめて推敲,ブラッシュアップしていきます。最終的には各部門のリーダーやチームリーダーが仕上げていきます。その時もほかの主要メンバーもサポートに回っています。締め切りが近づくと部室がすし詰めになり,相談が飛び交い,提出前日には一部のメンバーはそのまま朝を迎えます。この後のコストもですが,静的時期の部室は6月に不夜城と化します。
計算ミスを許すな!
次にコスト。コストは決められたテーブルに従って,マシンの製作費を計算します。その結果の安さと計算の正確性が評価対象となります。チームによっては,マシンの作り上どうしても安くできない場合があるので,その時は計算の正確性でポイントを稼ぐしかありません。私のチームもそうでした。
コストもデザイン同様に,各担当が自パーツのコストの計算シートを作成し,それをまとめていきます。まとめの際にはそれぞれの計算シートを相互チェック,印刷して紙で確認,修正して再度相互チェック,そしてコスト大臣(毎年担当が決まる)がチェック,という工程を何度も繰り返してミスがないようにします。これも締め切りが迫ると深夜まで及びます。
この書類の量も膨大で,年を経るごとに分厚くなっていきました。最終的には20cmほとの厚さとなり,殴ったら人が死ぬんじゃないかと思うほどでした。
ということで静的編でございました。走らせるだけでなく,こういったロジックを組み立てたり,ルールに従ってコスト計算したりとクルマ作りの根本のところも評価されるわけです。
次回は大会までのマシンのアップデート,走り込みの時期の話になります。静的が終わると大会へ一直線,タイムを削るために力を注ぎます。モータースポーツの醍醐味と言える期間を紹介していきたいと思います。
ではまた。