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『高校無償化』こんなに違う!東京都vs大阪府 先行自治体の違いに注目!
与党と日本維新の会での協議が進み、実現が見えてきた「高校無償化」。
これまでも、国の制度として、「一定の所得以下」の家庭に対しては、公立・私立ともに「授業料無償化」が図られてきました。その所得制限をなくそうというのが今回の動きです。
実は、すでに東京都と大阪府は、独自の取組として、国が定める所得制限を超えた家庭でも、「授業料を実質無料」になる仕組みを導入しています。日本を代表する二大自治体での先行事例は、今後、国が行う所得制限撤廃の仕組みに大きく影響するでしょう。
ところが、同じく「無償化」をうたう東京都と大阪府の仕組みは、実のところ、大きな違いがあります。
今回はその比較をしてみましょう。
違いの大きい「私立高校」に焦点を置いてご説明します。
東京都の授業料負担軽減
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東京都の仕組みは、要は、国の支援の仕組みをベースにしつつ、
①所得制限なし
国の仕組みでは所得によって支援対象に外れる部分を、東京都が負担して支援している=所得によって支援額が変わりません。
②国の支援よりも手厚い48万4千円が上限
国の支援は上限396,000円までですが、都の上乗せで、484,000までが支援対象になります。私立高校授業料の平均額を少し超えるので、学校で授業料が実質ゼロになるケースが増えます。
③東京都外の私立高校も対象
神奈川、埼玉、千葉などの高校に通う場合でも、東京都に在住している生徒であれば、無償化の対象となります。これは、神奈川・埼玉に近いエリアに住んでいる生徒にとっては、大変ありがたい仕組みになりますね。
という点で手厚くなっています。
支援の対象は、国の事業と同じく、「授業料」のみです。
入学金や施設費などは対象になりません。
なお、生活保護世帯、住民税非課税世帯などに対しては、授業料以外にかかる教育費を助成する「私立高等学校等奨学給付金」があります。これは東京都だけでなく、他の自治体にもあります。
大阪府の授業料無償化制度
大阪府の無償化制度は、東京都と同じく、国で定める所得制限を撤廃し、大阪府が独自に支援することによって、所得にかかわらず、授業料無償の対象になります。
対象となる学年は、
令和6年度の高校3年生から段階的に適用し、令和8年度に全学年で授業料を完全 無償化します。
となっており、令和8年度(2026)から完全実施となる計画です。
大阪府の制度のポイントは二つあります。
①所得制限なし
大阪の新制度では、東京都同様、国の仕組みでは所得によって支援対象に外れる部分であっても、保護者の負担が軽減されます。全ての生徒が支援の恩恵を受けうる形です。(ただし、後述③の対象校には注意)
②支援の金額が手厚い
国の制度では、無償となる授業料は、年額396,000円までです。前述の東京都では、48万4千円までが対象です。それに対して、大阪府では、「63万円まで」が授業料が支援されます(令和7年度まで)。
東京都の48万円というラインは、ほぼ、私立高校の授業料の平均程度なので、この金額では授業料全額をまかなえない学校もたくさんあります。しかし、大阪府の63万円では、かなりの学校において授業料全額をまかなえることになります。
そしてさらに、令和8年度からは、63万円を超える部分までも、保護者負担がゼロになるという予定です。
これにより、大阪府内では、公立高校の入学希望者が激減し、定員割れが続出するという問題が起きています。
③対象となる学校が指定されている
大阪府の無償化制度は、授業料が無償になる学校が大阪府によって指定されています。条件に合えば、大阪府内だけでなく、京都府、兵庫県、奈良県、和歌山県の私立高校であっても、大阪府内在住の生徒は対象になります。
大阪府の高校は、ほとんど全校に近い93校が対象。
それに対して、大阪府以外の私立学校団体は、大阪府の制度に賛同しておらず、対象となる学校は、京都1校,兵庫2校,奈良2校、和歌山8校に限られます。
(対象校の一覧)(https://www.pref.osaka.lg.jp/o180160/shigaku/shigakumushouka/suishinkou_koukou.html
例えば、「近畿大学附属和歌山高等学校」(和歌山)、高校野球などで有名な「智弁学園高等学校」(奈良県)などは対象に入っていますが、超難関進学校で知られる「灘高等学校」(兵庫県)、「西大和学園高等学校」(奈良県)をはじめ、現状、大阪府外の多くの私立高校は、大阪府の授業料無償化の対象になっていません。
(なお、大阪府の制度の対象にはなりませんが、国の支援の対象にはなりますので、一定所得以下の家庭であれば、いずれの高校に通う場合でも支援対象にはなります。)
なぜこのようになっているかというと、大阪の無償化では、令和8年度からは、前述のとおり授業料63万円を超える部分も、保護者負担はなくなる(完全に無償)のですが、授業料63万円を超えた分については、大阪府が負担するのではなく、学校が負担するという案になっています。学校によっては、特色ある教育を実現するために、やむを得ず高額な授業料を集めざるを得ない学校がありますが、63万円を超える部分を学校側が負担しないならば、その学校は無償化の対象校(就学支援推進校)に入れないのです。
これには大阪府外の私立高校が強く反発しているため、大阪府外の学校で対象校となっているところが少数に限られてしまっているのです。
今後の私立学校側の動き、大阪府側の動きに要注目です!
まとめ:東京都は他県の私立高校も「ほぼ無償化」対象となるが、48万円を超える分は保護者負担。大阪は「完全に無償化」になるが、他県の高校は対象とならない学校が大半。
結論をまとめるとこうなります。
・東京都は他県の私立高校も「ほぼ無償化」対象となるが、48万円まを超える分は保護者負担。
・大阪は60万円まで支援、令和8(2026)年度以降「完全に無償化」になるが、他県の高校は対象とならない学校が大半。
そして重要なことは、やはり
・東京、大阪に住んでいる生徒が対象になるので、国の支援があるとはいえ住んでいる地域によって、支援の格差が大きい
という事実です。
このことが、今回、全国で高校授業料無償化の所得制限を撤廃しようという国会の動きにつながっているのですね。
国の無償化制度がどう見直されるのか。
私立高校の授業料無償化の所得制限撤廃は、令和8(2026)年度から行われる方向で検討がされています。支援額は年45万7千円まで。
国会の審議では、公立高校への影響、特に工業・農業などの職業系の専門高校への影響が心配する声も上がっています。
今後の動きに目が離せません。