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『最強の独学仕事術』の本自体が最強のアクティブリスニングだった

赤羽雄二氏の『最強の独学仕事術』を読みました。(以下、『独学』と略記)以下に、感銘を受けた点と、本書に刺激されて私がしてみたいと思ったことを書きます。

1.感銘を受けた点

ビジネスのハウツー本であれば当然、優れた仕事術が数多く紹介されています。それも、今日からコストゼロで始められる効果的なノウハウが、事細かに実例付きで。

ですが、一児の親でもある私が、何よりも感服したのは以下の点です。

(1)誰も否定せず、誰でも成長できるという信念が、書きぶりから溢れ出ている
(2)仕事の中で浮かび上がる問題の根源が幼児期の体験である、というような大きな問題についても章を割き、今からできる改善策を具体的に示している

(1)誰も否定せず、誰でも成長できるという信念が、書きぶりから溢れ出ている

私はこれまで、ビジネスのハウツー本一般に対して「利己的」「手段に特化」「その場しのぎ」といったイメージを持っており、役立つ箇所をつまみ食いすることはあっても敬服に至ることはありませんでした。得意げに開陳されるノウハウを「さすが」と思うことはあっても、「では何故それをするのか」が伝わってこなかったからです。

伝わってこない、ぐらいならまだしも、この手のハウツー本の中には、「落ちこぼれとデキるヤツ」「勝ち組になる」「生き残る」的な、選別的なイメージを増幅し、他者を蔑む書きぶりのものも少なくありません。読んでいると、つい、どうしてそんなに独り勝ちしたいんですか?何にそんなに困っているんですか?という疑問がふつふつと沸き起こり、本を閉じてしまう自分がいたのです。

ところが『独学』では、ちょっと意地悪く探してみても、誰かを放り出すような選別的・マウンティング的な言葉は使われていません。徹底的に排除されていると言ってもよいぐらいに。そしてその上で繰り出される、具体的なノウハウの数々。とどめに、必ず誰にでもできる、と何度も畳みかけてきます。

そこからは、著者の「何故それをするのか」が立ち現れてきます。そう、何故、高いスキルを身につけるほうが良いのか?『独学』から私が感じた、筆者のこの問いに対する答え、それは、自分を高め、人を助け、ともに成長することで、誰もが今より自信を持ち、充実感のある人生を送れるようにするため

つまり、『独学』は、徹底的に具体的なスキルを提示するスタイルを保ちながらも、それを自己目的化せず、その先に確かな目的がある。しかもその誰彼問わない語り掛け自体から、人を成長させる魔法=「信頼」をすべての読者に発信している。ここが、『独学』の類書と一線を画するところだと思います。そしてこれは、これまでに私が読んだ赤羽氏の著書*、もっと言えば氏の公演の質疑応答なども含めた発信すべてに共通の印象です。

東大、スタンフォード、マッキンゼーといった華々しい経歴を持つ著者であれば、いわゆる「勝ち組」の立場から万事を片付けることは容易にできるはずです。けれどもそうはしない。取り巻き予備軍を募ってちょっと優越感で釣れば、それだけでも簡単にいい商売ができるだけの経歴の持ち主です。けれどもそうはしない。無償のオープンコミュニテイの中で、いわゆる普通の、自信のない人達から、似たような質問が何度繰り返されようとも、面倒なそぶりを微塵も見せず、相手を理解し、問題を理解し、解決策を提示することに徹しているのです。

それがどうした、とおっしゃる方もあるかもしれません。しかし、親業を21年間つとめ、24時間365日、できれば愛情と信頼の源でありたいと願いながら、振り返れば「もっと良い言い方があったはずなのに」と後悔することが多々ある身としては、それが当たり前ではないことが理解できます。全ての瞬間に、あらゆる人に対して理解と信頼の態度を貫くことは、知力、体力、愛情を要し、信念がなければ難しいのです。

この言外の(というか、敢えて避けられたであろう言葉の数々から感じられる、といった方が正確か)信念をBGMに読み進めるうち、ハウツー本に警戒心を抱いていた自分が、いつしか、この著者のように、大切と信じることのために仕事をし、関わる人を理解し、自他ともに成長したい、と、思わされていたのです。

その意味では、本自体が、発信でありながら、読者の声なき声に耳を傾け解決策を自発的に見出させる、最強の「アクティブリスニング」になっている。それが本書『独学』であると私は思います。

(「アクティブリスニング」について興味のある方は、同氏著『自己満足ではない「徹底的に聞く」技術』に詳しく書かれています)

(2)仕事の中で浮かび上がる問題の根源が幼児期の体験である、というような大きな問題についても章を割き、今からできる改善策を具体的に示している

仕事の中で表れてくる問題の多くは、「自信がない」などの心理状態に起因しており、その心理状態は幼児期の体験に端を発することが多い、ということは一般に研究結果から認知されてきていると思います。しかし一般的なビジネスのハウツー本では、ニンジンをぶら下げる、優越感で自分を駆り立てる、など、姑息な手段で一時的な結果を出すことのみに注力しているものが多い印象です。

これに対し、『独学』では、幼児期の体験を巻き戻すことはできないと認めながらも、その影響を改善するための、実現できそうな手段を具体的に紹介しています。「なぜ今、ある人(読者、あるいはその上司、部下、同僚など)は仕事ができていないのか」というビジネスハウツーの切口から出発しつつ、ここまで根源的な問題に立ち戻り、しかもそれを誠実に解決しようとした著作はなかなか目にしません。

しかし、考えてみれば、人は社会のどこかでつながっているので、困っている誰か(自分であれ他人であれ)を蔑み、ますます抑圧するのではなく、理解し、助け、お互いに成長しようとする『独学』のスタンスは、社会全体の幸福度の総和を持続的に増大させるための、もしかすると唯一の手段なのかもしれません。

『独学』のこうしたスタンスはいわゆるビジネスハウツー本の範疇をはるかに超えており、これが広く家庭、教育現場、地域コミュニティなどで活かされたら、と願わずにはいられません。

2.『独学』に刺激されてしてみたいと思ったこと

本書に刺激されて、色々なことをしてみたくなった。
例えば、以下など。

(1)「小さな成功体験」のプラットフォームを作る

(例えば、所属するランニングチームの内外で、各自のトレーニング日誌を共有し、褒め合うグループを立ち上げる、など)

(2) 自分のスペシャルティである法学と育児経験をもとに、社会の中で自分を守り育てる目的に特化した子供向けの法学や心理学コンテンツを提供する枠組みを作る

(この後に、やりたいことの続きや、本書読後の質問を書きたかったのですが、時間切れです。何しろ、今日の丸善さんのオンライントークを聞いて初めて、読書感想文の応募を思い立ったのですから。まだ間に合うかどうか、ギリギリですがアップロードします。尻切れトンボですが、今回は悪しからずご容赦ください。)

(*『マッキンゼー式人を動かす話し方』『速さは全てを解決する-「ゼロ秒思考」の仕事術』『自己満足ではない「徹底的に聞く」技術』)

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#A4メモ書き

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