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私の奈良旅④:早朝の奈良公園と野鳥たち

奈良旅4日目、最終日。
今日の目的地は奈良で一番有名な観光地、奈良公園だ。
インバウンドなどによる混雑が苦手な私。
早朝なら空いているだろうと、朝5時にホテルを出る。
この日の奈良。日の出は6時だ。

出発するJR奈良駅は当然真っ暗。

この時間、バスは走っていない。
奈良公園までは道一本。
人気のない静かな道を歩く。

猿沢池に到着。夜が明けてきた。

公園敷地内に入ると、あちこちの足元からブチブチと鹿が草をむしる音が聞こえる。
すでに彼らは起きている。

興福寺の芝生でもシカが草を食んでいた
鷺池から朝焼けを拝む
徐々に白む東の空

この日の最低温度は19度。
清々しい朝の空気を胸いっぱい吸い込む。
木の香りに奈良公園の神々しい雰囲気。
厳かな時間をしばし過ごす。

池に浮かぶ浮見堂が見えるようになった
夜が明けていく飛火野
人っ子一人いない春日大社参道

明るくなりだすと、あちこちで鹿のピーッという鳴き声が響き渡る。
東大寺に向かってのんびり歩く。
地元の方だろうか、ちらほら見かける。

春日山の稜線がきれい
一人佇むシカ
暗いうちから高鳴きするモズ

尾をクルクル回しながら木のてっぺんで鳴くモズ。
他の鳥たちも鳴きだすが、光が弱くその姿を探し出すのが難しい。

明るくなってきた
東大寺参道を歩くハクセキレイ

芝生をサクサク歩いていると、木のてっぺんに留まる小鳥が見える。

あ、エゾビタキ

榛原でも出会ったエゾビタキ。
ただ今絶賛渡り中なのか。

木の実と格闘するヤマガラ
中の実をとりだそうと奮闘している

調べてみると、シキミと呼ばれる木の実のようだ。
シキミという木は葉に光沢があり、サカキの木と同様神事に使われる木として寺社の敷地に植えられたらしい。
別名「墓花」と呼ばれ、木や実にアニサチン、シキミニン、イリシンなどの猛毒を含むそうだ。
私たち人間が実を食べると、下痢・嘔吐などの中毒症状が出るだけでなく、最悪は死に至るらしい。

取り出した実を冬用にせっせと埋めている

ねえ、ヤマガラさん。
その実、猛毒が含まれているんだって。
私たちが食べたら死ぬんだけど、君は大丈夫なのかな。

ヤマガラ「えっ?!」

…と実際ヤマガラが驚いたかはともかく、ヤマガラにはシキミの猛毒を解毒する仕組みを持っているらしい(こちらを参照)。
他の鳥は毒で食べられないシキミの実を、ヤマガラが独り占め。
シキミの実を遠くに運ぶのにヤマガラが一役買っているわけだ。
自然は面白い。

この日は小鳥たちが混群となって木々を渡り歩いていた。
私の目の前に立つ木に小鳥達が次々に現れる。

シジュウカラ
あ、またエゾビタキ

エゾビタキは飛び立ったかと思うと、Uターンして同じ枝に戻ってくる。
虫などを捕らえた後に同じ枝に戻る習性があるらしい。
独特の動きに、遠くからエゾビタキとわかる。
英語では、この行動がそのまま名前となり“Grey-streaked Flycatcher(虫を捕まえるもの)”と呼ばれるようになったそうだ。
開けた場所の木に留まり、虫を探す彼ら。
芝生が多い奈良公園は、彼らにとって餌を探すのに好都合なのかな。

ここにもエゾビタキ
こちらは首が伸び頭が逆立っている

目の前にある別の枝に留まったエゾビタキ。
首を伸ばし頭の羽がふんわり逆だっている。
警戒させちゃったかな。

しばらくして頭が落ち着いた
この子もエゾビタキかな…
と思ったらコサメビタキ(たぶん)もいた

お腹の斑紋の濃さや大きさで見分けるエゾビタキ・サメビタキ・コサメビタキ。
とても見分けにくい。
エゾビタキばかりと思っていたら、コサメビタキも交じっていた。
帰ってから写真で気づく。
どれも地味だけれど、目がクリっとして可愛いなあ。

エナガも食事中
朝日が照らす東大寺大仏殿

7時が近づき、あたりは明るくなってきた。
この時期、大仏殿の開門は7時半。春日大社は6時半。
そろそろ人が増えてきそうだし、小鳥たちに十分遊んでもらえて満足。
せっかくだからお参りもしておこう。
東大寺の二月堂は24時間立ち入ることができるとのことで、足を運んでみる。

裏参道を上がる。
二月堂から奈良市街が一望できる
朝7時。は~絶景かな。

毎年旧暦二月にお水取り(修二会:しゅにえ)が行われることで有名な二月堂。
一度焼失しており、現在の二月堂は1669年に再建された。
国宝に指定されている。
ご本尊は十一面観世音菩薩。秘仏だ。

国宝のお堂を24時間お参りできるなんて贅沢
下から見上げた二月堂。お水取りを思い出す角度。
御朱印も美しい

御朱印に書かれた「南無観」。
お水取りの行法中に繰り返し唱えられていた「南無観自在菩薩」がだんだん短くなり、「南無観、南無観」となったそうだ。
南無とは一生懸命信じること。
「南無観」は観音菩薩さまに帰依します、という意味なんだね。

二月堂をあとにし、坂を下って大仏殿に戻る。

私のタイプ、黒ネッコがいた

朝一番の大仏殿。
さすがに空いている。
中国からの観光客がちらほらいる程度だ。

快晴の空に映える大仏殿、もちろん国宝だ
盧舎那仏さま

奈良の大仏さまは何度見たか分からない。
それでも毎回印象が変わる。
幼い頃はその大きさにびっくりしたし、成人になってからは意外に小さく見えた。
今は、長きに渡り堂々とした姿を保つ大仏さまを眩しく感じる。
私も歳を取ったのだろう。

東大寺参道は、いつものように鹿たちが思い思いに過ごしている。

シカさん、開店待ちですか
シカ「誰かこの口に鹿せんべいを入れてよ」
シカも夫婦は似てくるのかね
人間の子供に驚く子ジカ
こちらはまさに「神の使い」のように神々しい
朝8時。修学旅行生が現れた。

皆、朝早いんだね。
小学生たちは、地面に落ちた「鹿の落とし物」にキャーキャー言いながら、友達に踏ませようと押し合っている。
大丈夫だよ。鳥を探して上ばかり見ていた私は500個以上踏んでいる。

まだ朝の8時だけど、奈良公園を満喫し大満足の私。
奈良公園は絶対早朝に行くべきと確信する。
さあ、ホテルの朝食を食べに戻ろう。

奈良駅前を行き交う人を見ながらのんびり朝食

朝食バイキングの盛り付けがいつまでたっても上達しないけれど、散歩後でとてもおいしい。
可愛い野鳥たちや美しい光景に囲まれた早朝の3時間を思い返しながらコーヒーを飲み、完食する。

お世話になったホテル

奈良駅直結のこのホテル。
10年前からお世話になっている。
電車移動の私にとってはありがたい。

3泊4日過ごした奈良が名残惜しいが、帰りの時間が容赦なくやって来る。

帰り道、京都の母とニャンにも会ってきた

今回の奈良旅。
柿も奈良漬も苦手な私だけれど、野鳥と寺院の両方を楽しむことができて大満足。
ちょうど奈良に渡ってきた旅鳥エゾビタキにも出会えた。
静かでどこか懐かしい光景や美しい景色が心の疲れを癒してくれた。
好きなものを前に仕事を忘れ、童心に帰ることができた気がする。
今回は超有名な寺院が中心だったが、まだ訪れていない寺院やもう一度訪れたい寺院は山のように残っている。
ヤマセミにもまだ会えていない。
毎年とはいかないまでも、数年おきに奈良に来よう。
今度はどんな野鳥に出会えるのかな。
帰りの新幹線の中で美しい奈良の風景を思い返しながら、東京に戻る。

シカ「鹿せんべい20枚くれるなら相手してあげてもいいよ」



奈良旅1~3日目はこちら。

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