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新山高原

 大槌でお気に入りのスポットはどこかと聞かれたら、新山高原と答える。「にいやま」ではなく「しんざん」でもない。「しんやま」高原だ。なんかかわいい。標高約千メートルの山頂に広がる高原で、車で行けば市街地から三、四十分で辿り着く。「新大槌八景」の一つということで、大槌に赴任してすぐ登ってみた。広大な原野に風力発電の巨大な風車が何十基と林立している風景に心ひかれ、その後一年の間に五、六回は登っただろうか。

 この新山高原では、毎年五月に自転車のヒルクライム大会が開かれている。全国から集まった猛者が、標高差八六四メートル、距離にして十三キロの登り坂を自転車でただただ登りまくるという。職場に回ってきた大会ボランティアの募集案内で知った。延々とそれも自転車で坂道を登りたいという参加者の気は知れないが、ボランティアスタッフになればまたあの高原に行ける。あの景観の中で働くのも悪くない。案内を見た夜さっそく大会事務局長なる人へ応募のメールを入れた。

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