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ミライース

 iPhoneの新色イエローが発売になったという広告を最近よく目にする。iPhoneのイメージといえば白か黒で、黄色はたしかに斬新に映る。

 わたしは黄色が好きだ。帯が真っ黄色の拙著『あそこ』を刊行して以来、それまで意識したことのなかった黄色という色が他人事ではなくなった。何かを買うにあたって色の選択肢を与えられたとき、特段の支障(全身が黄色になってしまうとか、部屋に黄色が多すぎて目が疲れるとか)がなければ、黄色を選ぶようになっていた。

 大槌に赴任するにあたって車を用意する必要があった。大槌での生活には車が必須だ。宿舎から職場まで五キロ弱、最寄りのスーパーまでは三キロ強。自転車や便数の少ない路線バスだけでは不便極まりない。当時は三陸鉄道も復旧しておらず、町外へ出かけようにも車がなくては困ってしまう。しかし大槌での一年のために車を買っても、東京に戻ればおそらく乗らなくなる。リースすることも考えたが、自分のものでないと毎日乗るのにどこか気兼ねしてしまう気がして、廉価の軽自動車を購入することにした。

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