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地獄から。

2024/11/18
てんき さむい
きぶん どんより

森美術館へ、ルイーズ・ブルジョワ展を見に行った。
東京住まいではないが森タワーは東京に来るとき必ず寄るところ。地下鉄にも慣れてきた。

前日予定があったので恵比寿のカプセルホテル「℃(ドシー)」へ泊まる。4000円代で泊まることができるので、とても便利。清潔で、マナーも良い。

3度目の宿泊
宇宙船の艦内のようで
少しときめく
コットのようなこの空間がとても居心地がいい
布団は硬いが、熟睡できる
至るところベニヤ板で、
都会にいるのに落ち着く空間

秋が終わったようで、冬の風が六本木の洗練した空気をさらに引き締めていた。
軽やかな足取りで森タワーへ向かい、美術館へ。

ルイーズ・ブルジョワ展

地獄から帰ってきたところ 言っとくけど、素晴らしかったわ

ルイーズ・ブルジョワ(1911年パリ生まれ、2010年ニューヨークにて没)は、20世紀を代表する最も重要なアーティストの一人。
男性と女性、受動と能動、具象と抽象、意識と無意識といった二項対立に潜む緊張関係を探求しました。そして、対極にあるこれらの概念を比類なき造形力によって作品の中に共存させてきました。

ブルジョワの芸術は、主に自身が幼少期に経験した、複雑で、ときにトラウマ的な出来事をインスピレーションの源としています。
彼女は記憶や感情を呼び起こすことで普遍的なモチーフへと昇華させ、希望と恐怖、不安と安らぎ、罪悪感と償い、緊張と解放といった相反する感情や心理状態を表現しました。また、セクシュアリティやジェンダー、身体をモチーフにしたパフォーマンスや彫刻は、フェミニズムの文脈でも高く評価されてきました。

本展の副題「地獄から帰ってきたところ 言っとくけど、素晴らしかったわ」はハンカチに刺繍で言葉を綴った晩年の作品からの引用です。この言葉は、ブルジョワの感情のゆらぎや両義性を暗示しつつ、ブラックユーモアのセンスをも感じさせます。自らを逆境を生き抜いた「サバイバー」だと考えていたルイーズ・ブルジョワ。生きることへの強い意志を表現するその作品群は、戦争や自然災害、病気など、人類が直面する、ときに「地獄」のような苦しみを克服するヒントを与えてくれることでしょう。

公式サイトより

展示のはじめに、性・暴力についての表現がある旨についての忠告がある。ドキドキしながら、足を踏み入れる。

入ってすぐのインスタレーション
ブルジョワが精神分析を受けている時の言葉だとのこと
バラバラにされた体のパーツが
彼女の心身の分離を思わせる
ここで、ずいぶん重たいものを見にきてしまった、
と感じる
ブルジョワの母はタペストリーの修復人
巣を紡ぐ蜘蛛
守護者捕食者の二面を持つ蜘蛛を
母親の存在に準えたという
不気味で強かな迫力
いまにも、捕らわれてしまいそうで恐ろしい
融合するカップル
溶けあい、解けあい。
ブルジョワの父は、彼女の家庭教師と不貞を働く
それを知ってからさらに、精神を崩したという
ブルジョワの葛藤や混乱、怒りという
ネガティブな感情が静かに爆発している
だんだん負のエネルギーに負けて気分が悪くなり
ベンチで休みながらゆっくり鑑賞する
晩年にかけ徐々に穏やかになる作品
ブルジョワは最期、すべてを受け入れられたのだろうか
ヒステリーのアーチ

負のエネルギーに負けた私は、展示を最後まで見ることができなかった。
休み休み見ていたが限界を迎える。
嘔気と眩暈に襲われ、特に母性についての生々しい展示を前にした瞬間、力が抜けてしまった。
あまりの怒りのエネルギー。
ブルジョワの育った環境が彼女を壊したのだろうが、何故ここまで彼女が苦しまなくてはいけなかったのだろう。かわいそうになった。
駆け足で出口へ向かい、そのままトイレへ駆け込み、突っ伏した。しばらく出られなかった。

つらいものを見た。まさに、ブルジョワの体験した地獄をそのまま体感したようだった。

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