ふりかえるとよみがえる
「めでたし、めでたし。」
この言葉が嫌いでどうしようもなかった幼少期。なぜハッピーエンドでなければならないのかと友人に聞いたことがあります。
「そんなことしらねぇよ。おまえへんだよな。」
私にとっての疑問は世間の当たり前なのだと遠回しに悟りました。私にとっての「めでたし」とは何のことなのかと幼いながらに本能で不安を感じたのです。
それからというものの私と友人は全く違う人生を歩みました。彼はサッカー部キャプテン、私は帰宅部でしたし、彼の合格した高校と私の高校とでは偏差値の差が20ほどありました。
大学を卒業し、友人はIT企業の社員、私は絵本作家を目指しつつフリーターをしています。しかし先日、彼が自殺を図ったと連絡がありました。私には到底理由を理解することはできません。
しかし疑問に思うのです。彼の人生と私の人生どちらがめでたいのか。何が正しかったのか。正しい道なんてないのか。
ふりかえるとよみがえるのです。あの彼のひきつった笑顔が。
そして、誰も見ようとしなかった彼の涙が。