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#152. はないちもんめ、じつは பணம்?!
低学年の子どもが図書室から「単位のおはなし」の本を借りて来た。おっ!なかなかいいチョイスをするではないか。そのなかで「匁」に興味を持ったらしい。そう「はないちもんめ」の「もんめ」である。
「匁」は重さの単位で 3.75 g。五円玉の重さはちょうど 3.75 g つまり 1匁になるようにできている。 江戸時代に「匁」は銀目、つまり銀の重さの単位であり、銀貨を表す通貨単位だったが、明治期に 3.75g と規定されたようだ。
日本で発明された養殖真珠の重さの単位として「monme」は OEDにも記載がある。初出は1727年。定義は「A Japanese unit of weight equal to 3.75 grams.」
では、「はな」となんだろう。
Wikipediaの「はないちもんめ」の項に『花を売り買いする際のやり取りだとされるが、「花」は若い女性の隠語であり、一人が一匁(銀一匁はおよそ2000円ほど)を基本とする値段で行われた人買い...に起源があるとする主張もある』とある。
それに沿うかのように、「はな」の語源はサンスクリットの पण (paṇa) が起源だという意見もある。
仏教用語として沢山のサンスクリット・パーリ語の語彙が日本語に入ってきたが、原語の/p/の音は日本語ではハ行に変わってしまう (例:般若 はんにゃ ← パーリ語 paññā, サンスクリット प्रज्ञा prajñā。玻璃 はり ← パーリ語 phālia, サンスクリット स्फटिक sphaṭika 等) ので、 「はな」が पण (paṇa) という語から来ているとしても全く驚きではない。
पण (paṇa) とはどういう意味か。サンスクリットを借用したタミル語で பணம் (paṇam) は「money」という意味である。(タミル語の -mは主格語尾) 同じ南インド・ドラヴィダ系の カンナダ語でも ಹಣ (haṇa) で「money」という意味だ。
そして、もとのサンスクリット पण (paṇa) の意味はなんと、「賭け事、簡潔な条件、賭け金、謝礼、ある硬貨の重さ、あるいは花嫁料」である(※)。
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「はな」がサンスクリットのपण (paṇa) であれば、「賭け金」であって、勝負前の同意として「賭け金は銀1匁」という意味にもとれる。また、「花代」という隠語があるが、それは「芸者や娼妓を揚げて遊ぶ代金」という意味だ。それもこの पण (paṇa) ではないかという学者もいる。いずれにしても、宴会の席での賭け事がからんだ遊興を連想させる。「はないちもんめ」もなぜ「勝って嬉しい...負けて悔しい...」となるのか、それは「賭け」をして勝った負けたからなのだ。
子どもの遊び歌なので、花屋との駆け引きで「こんな安値で花を買って嬉しい」「ここまで値切られて負けて悔しい」という意味だという説明をされることがある。それはそれで、そうとも解釈できるように隠すこともできる日本語の言葉遊びの奥深さでもある。子どもへの説明は大きくなってからにしておこう...。
(※ पण (paṇa) の語源はよく分かっていない。印欧祖語からの語彙ではないようだ)