今回は「勇者エクスカイザー」ベタボメ記事だ
とうとう「ウルトラマンZ」が始まりました。今度はウルトラマンゼロの弟子だそうです。セブン→レオ→ゼロ→Zという師弟関係の流れ。
YouTubeではスカイライダーのほうの「仮面ライダー」の配信も始まり、わたしの特撮ライフの充実っぷりも極まってきました。極まりすぎて、全部は見ていられないかもな。
ちなみに、特撮ではないですが、先月までYouTubeで配信されていた「勇者エクスカイザー」を見ておりました。
これは90年代に展開された、「勇者シリーズ」と呼ばれる8年続いたロボットアニメシリーズの第1作です。いわゆるスーパーロボットアニメですな。
期間限定の配信だったので、急いでエクスカイザーの全48話、見ましたよ。近年は12話くらいのアニメが多く、そのくらいの長さに慣れていたので、この話数を急いで見るのは、焦りました。ただし内容がおもしろく、楽しみながら全話を見ることができました。
単純明快、勧善懲悪。子ども向けのアニメはワクワクして、しかもスカッとします。
アニメはキャラクターが命だ、なんてよく言われますが、こういうスーパーロボットアニメでは、やはり主役ロボの魅力が第一でしょう。
主役メカは、主人公のコウタ少年の家の自動車に、宇宙生命体が憑依している状態です。ガイスターという敵が何かやらかすと、この自動車がどこへでも駆けつけ、人型のロボットに変形します。これがエクスカイザーです。なぜか胸にライオンの顔が現れます。ムネライオンです。
エクスカイザーは戦闘中にキングローダーというトレーラー車みたいなのを召喚し、合体します。変形したキングローダーにエクスカイザーが収納される感じです。こうして巨大合体キングエクスカイザーとなります。サナギマンとイナズマンの関係を思い出していただければいいです(古いな)。
中盤からドラゴンジェットというのが現れ、これとエクスカイザーが合体して、巨大合体ドラゴンカイザーとなります。これもエクスカイザーが収納されて合体します。
さらに、キングエクスカイザーに、ばらばらに分離したドラゴンジェットがあちこちにくっつくことで超巨大合体グレートエクスカイザーが完成します。
仲間には、2体のロボットがそれぞれ右半身と左半身になって合体するという珍しいタイプのウルトラレイカーと、3体のロボットがイデオンかダイオージャみたいに縦に合体していくゴッドマックスがいます。
これらは、見ているとおもちゃが欲しくなる。ビジネスの話をすると、こういうアニメはスポンサーの商品を売るための宣伝であるとよく言われますが、やはりアニメを見て、おもちゃが欲しいと思わせたら成功でしょうね。アニメ的にも、強くてかっこいいヒーローは、やはり魅力的ですし。
そんなエクスカイザーですが、普段は自動車に擬態(と言っていいのかわからないけど、とにかく自動車の姿でいる)しており、主人公のコウタと、飼い犬のマリオ以外には秘密で活動しています。マリオは、アニメによくある、明らかに人語を解する犬です。
家のガレージで、自動車モードのエクスカイザーとコウタが話をする場面がたびたび描かれていました。
エクスカイザーは、よくあるアニキ系のキャラとは違います。偉そうに説教したり、自分の考えを押しつけようとはしません。コウタにとって新しい見方を示してくれます。
例えばこんなふうに。遺跡で大昔の劇をやることになったけどうまくいかず、コウタは悩みをエクスカイザーに吐露します。エクスカイザーは優しく言います。
「宇宙が誕生してから百数十億年。さまざまな惑星文明が生まれたり、滅んだりしてきた。けれど、どの星のどんな生物も、それぞれに一生懸命生きてきたんだ。コウタ、きみだってその仲間なんだよ」
「その劇をやれば、きっとその時代の人が、すぐ隣にいる友達みたいに感じられると思う。そしていつか、ほかの時代、ほかの国、ほかの星の人たちとだって親しくなれるくらい、大きな心を持てるようになってほしいね」
ちょっとしたシーンなのですが、壮大かつ素敵な言葉だと思いました。これには、コウタは素直に応じます。
コウタがクラスメイト(ガールフレンドと言ってもいい)のコトミの人形を壊してしまい、エクスカイザーに直してもらおうとしたときにはこう言います。
「わたしの力を借りて人形を元に戻しても、コトミちゃんは喜ばないと思うな。変に思うだけじゃないのか」
「そんなことをするより、何かほかのことで一生懸命がんばったほうが、コトミちゃんは喜ぶんじゃないのかい」
真面目なエクスカイザーは、子どもたちの人間関係にも真剣で、コウタを優しく諭すのです。
また、コウタが本を読めずに悩んでいると、こう言います。
「漫画には漫画のおもしろさが、本には本のおもしろさがあるんだろう? どちらか片方より、両方楽しめるほうが素敵なことだとは思わないかい?」
「文字と本のおかげで、地球の人たちは、自分の考えや経験を、たくさんの人に時代を超えて伝えることができる。わたしは以前から、こんなすばらしいい発明は、広い宇宙を探してもめったにあるもんじゃないと思ってたよ」
頭ごなしに漫画を否定したりはせず、新しい方向性を示してくれる言葉です。さらには文字や本がどれほどすごい発明なのかを教えてくれるのです。
ただし生真面目すぎるエクスカイザーにはおかしなシーンもいくつかあり、自動車モードで仲間に通信で指示を出していたら、駐車違反の切符を貼られてしまったことがありました。
妊婦を見かけたときには不審に思ってその人の身体をスキャンし、「わたしは長いこと宇宙警察をやっているが、人間に寄生する悪質な宇宙生物は初めてだ」などと言い出す始末。これにはコウタも大笑いでした。
強くてかっこよく、聡明で優しいエクスカイザーは、地球の文化や風習を理解しようとします。ハロウィンとか、クリスマスとかについて質問します。コウタはそれらに簡潔に、そして的確に答えます。この子、小学3年生とは思えないほど日本語能力に長けています。
いつもエクスカイザーに助けてもらっているコウタですが、貯金箱を使って敵の気をそらしてエクスカイザーを救ったり、なかなか「持ちつ持たれつ」の関係が築かれています。
エクスカイザーからすると、コウタは「教え導くべき人生の後輩」ではありません。あくまで、「年が離れただけの友達」なのです。
そんなコウタとエクスカイザーが別れることになるのが最終回。地球での任務を終え、エクスカイザーたちは次の任務のために去らなければならなくなります。アニメでは一時期、「別れたと見せかけて、やっぱり一緒にいたいから戻ってきちゃった」という最終回が多くなっていた中、エクスカイザーのように別れをきちんと描いたのはむしろ珍しいのではないかとさえ言われました。
今まで2人の関係をしっかりと描いていたからこそ、別れのシーンは素晴らしいものでした。
最後の2人の会話はこんな感じです。
「エクスカイザー。また、会える?」
「いや、それは約束できない。しかし、わたしは宇宙のどこにいようとも、いつもきみを見守っている。きみの心の中にいつもわたしがいることを、忘れないでほしい」
以上は、ファンの間では有名な会話らしいです。
たぶんですが、脚本家が伝えたかったのはこの後半部分、「きみの心の中にいつもわたしがいることを、忘れないでほしい」のほうでしょうね。ラストシーンでコウタがエクスカイザーのことを思い出すときも、この部分のセリフが再び流れましたし。
でもこのやりとりを有名にしたのは、「それは約束できない」の部分のようです。主としてこの部分が語り継がれています。
なぜかというと、これもわたしの勝手な推測にすぎませんが、二つの意味で「エクスカイザーだからこそのセリフ」だったからじゃないかと。
一つ目として、エクスカイザーのキャラクターに合っているのです。彼がコウタをただの子どもではなく友達として扱うからこそ、嘘はつけなかったのです。生真面目な彼の言葉としては、似つかわしいと思えます。
二つ目としては、エクスカイザー以外にこんなこと言うキャラクターはそうそういないということです。だって、普通なら「いつかきっと会えるさ」とか何とか、嘘でもいいから言うところでしょう。特に子どもや女性には。
普通の人が言いそうなことと違うことを言うのは、やはり印象に残ります。
これは創作のいいヒントになりそうですな。
細かいことを言いましたが、いいシーンでした。
ただ、わたしを泣かせたのはこの後のシーンでした。エピローグ部分です。
ガレージで、もはや答えてくれることもない自動車の近くにたたずむコウタ。悲しみに沈んでいます。そんなコウタに、母親が優しく語り掛けます。
「なんだか、大事なお友達とお別れしたみたいな顔してるわよ」
「え?」
「どんなお友達とお別れしたのか知らないけど、コウタにはパパやお姉ちゃんがいるじゃない。ママにとっても、コウタは大事な子どもなのよ」
「……」
「いつか、別れたお友達も帰ってくるわよ。さ、朝ごはん食べて元気出して」
このお母さんは、ものすごい天然ボケで、危機的状況においてものんきなセリフを言ったりする変な人です。
そんなお母さんが、息子の悲しみの原因をぴたりと言い当ててしまうのです。
わたしは、やっぱり母親なんだなあ、息子のことをよく見てくれているんだなあ、と思ったんですよ。感激でしたね。特に普段の天然ボケとのギャップがすごいので、感激というのが増幅されてしまったわけです。
こんなことを書いていると、「あんたは自分の涙にさえいちいち理屈をつけるんかい。ドン引きだ」と言われそうですけれども。
創作を志す者にはそういう視点も必要なのかなあ、と思います。
むしろ、創作好きな人は自然とそういう見方をするものじゃないかな、などとも思います。
まあとにかく、お母さんの言葉でコウタが元気を取り戻し、「ありがとう、エクスカイザー!」と高らかに叫ぶところで物語は終わります。
いや、とてもいいアニメでした。勇者シリーズのほかの作品も見たいのですが、ほかのはYouTubeでは5話までしか配信がないです。
わたしの加入している月額制のアニメ配信サービスでも勇者シリーズはあったのですが、なぜか3月で軒並み配信終了してしまったのでした。
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