思い出のFC版ドラゴンクエストⅡ 第1回 遥かなる旅立ち
かつてファミリーコンピュータというゲーム機があってだな。
それまでシンプルなゲームしかなかったこの時代。1986年に『ドラゴンクエスト』が登場してから、日本のゲーム界は変わった。
わたしが個人的に思い入れのある2作目『ドラゴンクエストⅡ 悪霊の神々』について語っていきたいと思う。それも、リメイクではなくファミリーコンピュータ版だ。ここで記述するのはファミコン版のことであって、リメイク版でのさまざまな変更点については基本、無視している。
ちなみに、記事の性質上、ネタバレ全力全開!世界全開オールオッケーで行くので、嫌だという人は読まないように。
あと、さんざん厳しいだの過酷だの書いてありますが、当時の子どもたちは、わたしを含めてけっこうクリアしている人が多い。あくまで、後のドラクエや、リメイク版と比べると難しいという話だ。クリア不可能というほどでは決してないので、ご安心ください。
もう一つ。長くなるので何回かに分けて投稿します。興味があったら最後まで読んでみて。でも、ごめん。長いよ。
まだあった。ローマ数字が文字化けしていたらごめんなさい!
ドラゴンクエストⅡ前夜
さて、わたしが小学生のころは、男子は運動のできる奴と同等にヒーローになれたのが、ゲームのうまい奴だった。
はい、わたしはゲームが大の下手でした。
どうも苦手だ。画面を見ながらタイミングよくボタンを押したり、自分のイメージどおりにコントローラーで操作したりといったことが、どうしてもうまくいかないのだ。おかげでマリオが何人無駄死にをしたか。
あと、家ではゲーム大好きな弟がファミコンを独占に近い状態だったこともあり、わたしはそれほどゲームをやらなかった。ゲームよりも読書と特撮・アニメ鑑賞が好きな少年であった。
そんなわたしが好きだったのが、エニックス(現スクウェア・エニックス)という会社から発売された『ポートピア連続殺人事件』というアドベンチャーゲームだった。これなら、マリオのように無駄死に死体累々とならなくても、ゲームをクリアできる。しかも、子どものころから好きだったミステリーが題材だ。こういうゲームもあるんだなあ、と思ったものだ。
そんな中、出会ったのが『ドラゴンクエスト』だった。『ポートピア連続殺人事件』と同じ、エニックスが発売したものである。これまた、ゲームの操作が下手でも遊べて、しかもストーリー性もある。何といっても、新感覚のゲームだ。それこそ、今まで特撮ヒーローしか知らなかった昭和40年代の少年たちがマジンガーZに出会ったように(まだこの話をしてるよ、世代でもないのに)。
わたしも『ドラゴンクエスト』をプレイしてみたのだが、このカセット(ゲームソフトは、当時はカセットと呼ばれるものに入っていた)が借り物だったこともあり、最後まではできなかった。弟がクリアするのを見ていただけだった。
しかし、2作目の『ドラゴンクエストⅡ』は弟が購入したので、特に時間制限なくプレイできた。こうして、初のドラクエクリアを達成したのである。
その後、なぜかドラクエ熱が冷めてしまい、『ドラゴンクエストⅢ』は、プレイしなかった。一度友人の家で最初だけプレイさせてもらい、「なんで魔法使いなのにホイミが使えねえんだよ! ホイミって魔法だろ!」などと、僧侶と魔法使いの役割分担に混乱したものだ。
こうして、1作目と3作目は、スーファミ版が出るまではクリアすることがなかった。そういう事情で、ドラゴンクエストといえば2作目に多大な思い入れがある。やっぱり子どものころに受けたインパクトって特別だよ。
ドラクエといえば、1作目がゲーム界にもたらした革新性や、大人気だった3作目のイメージが強いという人が多いだろうに。2作目に思い入れが強いという人も稀少であろう。何を言いたいかわかるかね? つまり俺ちゃんってば希少価値の高い人間だってことさ。
『ドラゴンクエストⅡ 悪霊の神々』とは
それでは『ドラゴンクエストⅡ 悪霊の神々』(以下、『ドラクエⅡ』と略すこともある)の概要を話していこう。
前作『ドラゴンクエスト』の主人公がローラ姫とともに築いた国がローレシア。そしてその国がローレシア・サマルトリア・ムーンブルクの三つに分割(内戦でもあったのか?)。それから100年。大神官ハーゴンの手によってムーンブルク城が滅ぼされた。ハーゴンの野望を食い止めるため、ローレシアの王子(以下、ローレ)は旅立つ。彼は旅の途中でサマルトリアの王子(以下、サマル)とムーンブルクの王女(以下、ムーン)と合流し、ハーゴン打倒を目指す。
簡単に言うと、物語は以上のような感じだ。ドラクエは今作から3人パーティーとなり、また、船を使って海を渡って世界のあちこちへ行けるようになる。シリーズの現在につながるシステムが、かなり完成してきているようだ。
大評判の前作から1年もたたずに発売された今作ドラクエⅡだが、満足なテストプレイができなかったとかいう話もあり、いろいろと難易度の調整があまりよろしくないという状態で世に出てきてしまった。そのために、ここで語るような数々の伝説が生まれたわけだ。
ちなみにこのゲーム、「復活の呪文」と呼ばれるパスワードによって、ゲームの続きをプレイできた。前作では20文字だったこの復活の呪文だが、今作では(パーティー人数や所持する道具の数によって文字数が変わるらしいが)最大52文字となっている。こりゃ長いよ。毎回毎回、何十文字もパスワードを書き留めるのはなかなか苦難だった。しかも1文字でも間違えたら続きをプレイできず、その分をやり直さなければならない。かつてのブラウン管のテレビは文字がにじむことがあってね、「ぬ」と「め」や「ば」と「ぱ」の判別などは難しかったのだ。
ドラクエⅡ最大の敵は復活の呪文、などと呼ばれることすらあった。でもさあ、こんなのは、これから述べる数々の困難と比べたら、まだまだ序の口にすぎなかったんだ。
子どもたちをイラつかせる男、彼こそサマルトリアの王子!
どうしてまあ、王子様ともあろうお方が直々に魔物討伐の旅に出ないといけないのか。それも、貧弱な武器と所持金で(この国の財政は傾いているのか?)。そんな疑問を誰も抱かない世界で、ローレは行く。訪れる町のほとんどで、彼は王子だなんて認識されず、庶民扱いされている。それでも何とも思っていない様子の、人間としての度量が最高クラスの男がローレだ。しかし彼は、物理攻撃は滅法強いものの、呪文は一切使えない。
彼をサポートできるのがサマルだ。序盤で何回かすれ違いを経て、ローレとサマルは出会う。サマルくんはサマルトリアの城に戻ったかと思いきや、途中のリリザの町でのんきに寄り道をしているのだ。そのくせ、こっちに向かって「探しましたよ」とか言うのだ。コントローラーを持った子どもたちは、みんなイラっときたものだ。
サマルはホイミを使えて、いると助かる。魔法も使えて打撃もいける。しかもルーラやザオリクを使えるのは3人のうちで彼1人だ。非常に重要なキャラクターであることは間違いない。
ただ、打撃も魔法もなんとも中途半端だ。打撃でいうと、装備できる最強の武器は鉄の槍。こんな中途半端なものが最強の武器ですぜ、旦那。もうちょっとなんとかならなかったんすかねえ。それに、ローレが強烈な打撃攻撃を行うので、どうしてもサマルの打撃は爆発力不足に見えてしまう。
使える呪文も、攻撃ではベギラマが最強。今作のベギラマは敵全グループに攻撃できるものの、ダメージは最大でもせいぜい30程度。数値的にはバギとあまり変わらない。これを覚えるようになったレベルでは、けっこうな強敵と戦っているころだ。20~30程度のダメージでは雀が泣くくらいの威力しかない。そんなわけでベギラマは使い物にならない。さらにはムーンがベホマやイオナズンといったマーベラスな呪文を使うので、ますますサマルの頼りなさが強調される始末だ。
そのうえ、HPもムーンより低かったりする。打たれ弱く、真っ先に死亡するイメージが子どもたちから拭い去れない。ザオリクを使えるキャラが真っ先に死ぬのは困るのだ。いかにサマルを守るかが、戦術の重要なポイントではある。
決して無能ではないんだ。サポート能力は低くないし、パーティーでは必要な存在なんだ。だからこそ、真っ先に死んで子どもたちをイラつかせるというところはある。派手さに欠けて、なんか中途半端なキャラクターになってしまった、悲しい男がサマルなのである。
大器晩成型で、高レベルになるとかなり強くなるらしい。また、リメイク版ではかなり強化され、「光の剣」まで装備できるようになる。ただ、こういう強化が必要ということは、サマルくんの弱さを公式も認識したということだろう。
あくまで個人的なイメージなんだけど、旅の途中、サマルはムードメーカーになっていたんじゃないかと勝手に思っている。なんとなくだけど、個人的な想像では、ローレは武道を極めんとする求道者、ムーンは悲しみを背負った悲劇のヒロインという感がある。サマルは空気を読んで二枚目半のキャラを買って出たのではないかと。みなさんの想像とはまた違うだろうけどね。プレイヤーの数だけ、彼らのイメージがある。こういう勝手な想像ができるのも、敢えてキャラを立てないドラクエのおもしろいところだ。
最初の試練! ムーンペタ そしてムーンブルク
いくつも試練のあるゲームだけど、やはり最初の試練といえば、ムーンペタではなかろうか。
ローレとサマルの2人体制になって、やっとムーンペタ地方へ行くことができるようになる。敵が急激に強くなることで有名だ。特にここではマンドリルという猿の化け物みたいなのが集団で登場する。こいつらは攻撃力とHPが異様に高い。のちに登場する同タイプ上位モンスターのバブーンと能力値がほとんど変わらない。明らかにプログラムミスである。特に、ムーンが加入前は苦戦必至。要全滅覚悟である。何度こいつらにひどい目に遭わされたか。全国の子どもたちが見ている前で、ローレとサマルは何度も何度も、ホワイトベース隊の前に現れるザクやリックドムのパイロットたちのように、若い命を散らしていったのである。諸君のプレイするローレも、サマルも、このエニックスのプログラムミスの前に死んでいったのだ! この悲しみも怒りも忘れてはならない! 立てよ国民!
国民というか王子なんだけれども、ローレたちはムーンブルクの城にたどり着く。これが前述のように滅ぼされており、すでに廃墟なんだ。モンスターも出るし。ここで必須アイテムであるラーの鏡の話を聞くことができるが、なんだかとても曖昧な情報である。そんなんでも仕方がないから鏡を探すわけだ。どこにあるのか、わたしは攻略本か何かで場所を教えてもらわないとわからなかった。
ムーン王女は、ムーンペタの町で犬にされているんだな。犬だよ、犬。別に猫でもいいんだけどさ。どうしてハーゴンは王女を生かしておいたんだろうな(殺したところでザオリクで生き返ってしまうから……という説があるようだ)。とにかく彼女は、ラーの鏡によって王女の姿に戻ることができる。こうして3人パーティーになった彼らは、次の目的地に進む。
ここからフィールド上のBGMが明るいものに変わるので、ある種の感動が芽生えてくる。プレイヤーたるわれわれも、どんどん楽しくなってくる。本当の戦いは、ここからだ!
今回はこんなところで。
また次回に。
大冒険は続く。