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のびしろしかないわ


音楽なんて他人事だと思っていた。


厳密に言えば、音楽そのもの、あるいは音楽を通して描かれている世界、それに対して「まさに自分だ」と心の底から共鳴することは少なくなかった。

一方で、音楽を紡ぐ人々、その思い、その人生に共感したことはほとんどなかったように思う。


彼らに出会うまでは。


自分を削る音楽。切っても切り離せない表現と表現者。それが魅力だと彼はよく言っていた。

一ミリも交わらない人生が、音楽を通して一瞬だけ重なる、それがおもしろいのだと。

まあ、私の場合は一瞬どころではなかったが。

一ミリも交わらないどころか、どんどん距離は遠くなるけれど、そんなことは気にも留めず、ずっとずっと重ね続けている。


重なりがずれたとき。眩しく見えたとき。自分が変わらなきゃいけなかった。重ね続けるために。

隔たりを認めること。一歩踏み出すこと。自分の道を歩くこと。全てを自分のものにした。


それでも、私は未だにオトナにはなれない。

全てが敵に見える瞬間。自分にないものばかりが目に入る刹那。

彼らにとっては過ぎた過去であるその音楽に、きっとこれからも頼り続けるだろう。


希望を持つ。たったそれだけのことが、今は難しい。

時代のせいにしたくなる。世界のせいにしたくなる。クソみたいな世界なんかに自分を決められるのは嫌だけど、切り開くための気力すら奪われてしまう。


でも、彼ら、否、ふたりが今こうして笑っているのを見ていたら。

軽快な音の上、幾重にも重みを増した言葉を聞いていたら。

自分の未来だって、明るい気がしてしまうじゃないか。

たとえ大きな隔たりがあると知っていても。


だって私には、




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