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Review-#027 『Wattam』

今年の年末は『Wattam』と『DEATH STRANDING』やってました


 2019年も今日でおしまい。「よもやま」の書き納め、ということで今回は久しぶりにゲームを紹介したい。『塊魂』シリーズや『のびのびBOY』で知られている高橋慶太(たかはし けいた)氏による最新作『Wattam』(ワッタン)である。日本語の「輪」とタミル語で「円」を意味する"Vattam"とのかばん語になっている。

 いやぁ、待ってました。最初のトレイラーが発表されたのが2014年12月のこと。それからもう5年経ったのか…。前から何となく気になっていて、まだかまだかと『Wattam』を待ちわびて、今年ようやくプレイできた。よし、あとは『天穂のサクナヒメ』だな! 来年出るっぽいけど。

 この『Wattam』で重要なのは「繋がり」。そういや『DEATH STRANDING』もやってるんだけどね。とりあえずメインを進めようかと考えているのに、色々やれることがあるからついつい寄り道しちゃうんだよね。今年中に終わりそうもないので、今は気にせず『Wattam』について知ってもらえたらと思う。

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作品情報

Wattam (PS4/Epic・2019年12月17日[PS4], 2019年12月18日[Epic]発売)

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(☝ フィジカルエディションという名のパッケージ版が来春発売予定。輸入モノなので価格はお高めですが、欲しい方はぜひぜひー。)

定価:ダウンロード版
   2,420円(PS4), 2,080円(Epic)
   フィジカルエディション(PS4限定)
   5,000円(税込, 2020年春発売予定)
ジャンル:アドベンチャー
メーカー:Annapurna Interactive

<☟公式によるゲームプレイ映像>

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作品紹介

手と手で(ついでに爆発で)つながる友だちの"Wa(輪)"


 『Wattam』はどういうゲームか、というと「友だちを見つけて、手を繋いで、ドカーンして触れ合う」ゲームである。何が何だか、と思うかもしれないが実際そういう遊びなのだからそうなのである。
 ひとりぼっちだと思っていた町長(Mayor)が、ある時友だちを見つけたことをきっかけに、どんどん新しい友だちに出会っていき、そしてこの世界の過去を知る…というストーリーが用意されている。

 『塊魂』では転がしてモノをくっつけて大きくする、『のびのびBOY』ではBOYを伸ばして星々を繋げる。高橋氏が手掛けたゲームには「ひとつになる」というテーマが見え隠れしているが、本作もその例に漏れない。友だちと触れ合い続け、やがてはひとつの大きな輪を描くことになる。

 『Wattam』の特徴として、プレイヤーは町長以外のフィールド上にいるキャラを自由に動かすことができる。右スティックを使って矢印のカーソルを移動させると、そのカーソルが指しているキャラを操作できるようになるのだ。
 一部のキャラには固有の能力が備わっている。町長は帽子から爆弾を取り出してドカーン、と皆を楽しませる。桜の木のみちる(各キャラには固有の名前が付いている)はキャラを吸い込んで食べ物に変える。口のざぶろうは食べ物のキャラを食べてうんちとして排出する。そしてトイレのだいじろうは流したキャラ(うんち以外も可)を金ピカに変える…とユニークである。『スーパーマリオオデッセイ』を連想した方もいるだろう。

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☝ 風船のせいこはジャンプ(×)ボタンで宙に浮くことができる。
キャラを紐に付けて飛ばすこともできるが…。気にしてはいけない。

 まぁ、とりあえず手当たり次第みちるで吸い込んで食べ物にするよね。そんでざぶろうにうんちにしてもらうよね。でもってだいじろうに流してゴールデンうんちを大量に出現させるよね。「お前小学生か?」と言われそうだけれど、うんちになってもキャラが可愛いからね。ついやっちゃうんだ。


 『Wattam』はデジタルトイとしての面白さもある。遊び方が積み木遊びに似ているのだ。手を繋いだり、ドカーンして吹っ飛ばすというところがそうだが、どのようにキャラを繋いだり、積み重ねたりするかを考える楽しさがある点にも注目したい。
 操作キャラを変更すると、流れるBGMの演奏楽器が変わることに気付く。ギター・ホーン・コーラス・パーカッション…違うキャラと手を繋いだり、積み重なったりすると、音が重なりあってBGMがより華やかなものになる。繋がっている状態で操作キャラを変更すると、どの音がメインになるかが変わるし、フィールドが変わると使われているBGM自体が変わる。色んな組み合わせを試してもらいたい。

 ゲームデザインとしては『塊魂』と『のびのびBOY』の中間にあると思える。『塊魂』ほどゲーム性が強いわけではないが、『のびのびBOY』ほどゲームとしての目的が漠然としているわけではない。ストーリーを進めるために、次に何をすればよいかが提示されるが、時間制限は設けられていないので、のんびりと進めることができる。
 ミッションをこなす前に、たくさん集まったキャラで輪になったり、皆で協力して高みを目指したり、なんとなしにドカーンしたり。与えられた場所で、どのように楽しむかはあなた次第だ。

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☝ わーい、できたできた。ゴールデンうんちタワー! しょうもねぇ…。

 ひとりではどうにもできないことも、色んな人がいるからこそ、力を合わせて道を切り開くことができる。高橋氏が海外の生活で感じたことが『Wattam』で盛り込まれており、プレイし終えた私自身も本作のメッセージをそれとなく受け取れたと思う。尤も、ストーリー自体はそこまで説教臭いものではないから、シュールな世界の中でほんわかな雰囲気を楽しめればそれで良いのではないだろうか。

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 ただ、この「新しい友だちと繋がる」というゲームの目的は楽しいだけではなく、常にストレスと隣り合わせである――ということに気付けるのに、そう時間はかからないと思う。操作性もカメラワークも良いとは言えないし、ゲームの内容自体にも「う~ん」となる箇所が多々ある。

 ゲームの内容から触れよう。春夏秋冬4つのステージがあるのだが、どれも似たり寄ったりな内容だ。
 まず新たなキャラと出会って、お話をする。ちょっとしたミッション(ドカーンするとか)をこなして、土にタネを植えて木を生やす。そのうち謎の場所が現れて、そこで世界の秘密が少しずつ明かされる。そして再びお使いが挟まれ、ちょっとしたすったもんだがありつつ次のステージへ…。

 大体こんな感じ。ゲームの進行自体はユニークなのだが、パターン化してしまっているのだ。これだけキャラクターがいるわけだし、もっと色んなことをミッションとして織り交ぜられそうなもんじゃない? と思うのだが、残念ながらそうではない。
 そのため最初の春のステージは楽しめても、だんだんと「ハイハイ、今回もそれやればいいのね」と、さっさと次のミッションに進みたい気分になってくる。ストーリーは3~4時間でクリアできるが、新鮮な気持ちでゲームを進められるのは1時間ほど。もうちょっと長くモチベーションを維持できる仕掛けが欲しかったところである。


 で、輪(『Wattam』だけに)をかけてうんざりするのが操作性。全体的に難があり、イライラさせられることが多々ある。
 手を繋ぎたくても、場所によっては繋げられない。長く繋げたいけれど、どのキャラが先頭(後尾)なのか分かりにくいし、操作キャラの変更も狙いのキャラにカーソルを当てるのに一苦労。何とか手を繋げても、真ん中のキャラが勝手に手を離してしまって繋ぎなおし。後尾がフィールド外に出て(挟まって)身動きが取れない…etc.

 「手を繋ぐ」というこのゲームの肝となる要素が、思うようにいかない。ミッションの中には輪になって回るものがあり(「木を生やす」ミッションぐらいでしかやらないんだけれど)、キャラが沢山いることだし、どうせなら「皆で輪っかになりたい!」と思っていた。が、それがやたら難しいと分かると、「うん…もう少人数でいいや」と投げやり気味に。輪になっていればOKなので、トロフィーを獲るつもりがなければ態々多くの人と手を繋いで輪を大きくする必要は無いのである。

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☝ 結構梃子摺った。さながら秩序の無い保育園みたいなこの世界、
「並んで!」とか「集まれ!」とか、そういうコマンドが欲しくなる。

 ドカーンするのも、飽きる…以前にあまりやりたいと思わなくなる。(キャラを大量に表示していることもあり)元々高くないフレームレートが余計に下がるからだ。
 だが、各キャラの固有のアクションボタンと、キャラと会話するボタンが同じ△ボタンなので誤発動しやすい。新しいキャラへの挨拶代わりに(うっかり)ドカーンしちゃって「あ~あ~…」となっているのを余所に、画面の中のキャラは「たのしかったねー」。こちとら楽しかねーんだわ。

 カメラワークも悪い。先述したように右スティックが操作キャラの変更に割り当てられているため、カメラ操作はL/Rボタンで行う。そのため左右回転と(段階的な)ズームイン・アウトしか行えない。カメラ手前にいる別のキャラで操作キャラが隠れていても透過処理されずに、「そこにいる」ことを示す影が表れるだけ。初代の『塊魂』じゃないんだから…。

 おもちゃ箱を開けるような楽しさが用意されている『Wattam』なのだが、ゲームとしてはあと一歩な完成度なのだ。
 色んなキャラクターがいるけれど、ストーリーで活かされるのは一部だけ。皆を活躍させようにも、ハードルが高い所為で積極的にそうしたいと思えなくて(あるいはだんだんと萎えてきて)、結局少人数でゲームが完結してしまう。事実、出したっきりで特に何にもせず終わったキャラは多い。

 「できる限りたくさんの人と繋がりたいけど、そうしようと頑張ってもイライラするだけなので諦める」。なんだろうね。このゲームのテーマにプレイスタイルを合わせて思いっきり満喫したいはずなのに、ゲームの方から水を差されている気分になる。それとも「理想は分かるけれど、現実はそんなにうまくいかない」という皮肉なのだろうか。そうではないと信じたいが。

 あ、ちなみに2人プレイもできるよ。できるけれど距離が離れた時に画面分割はしてくれないので、それぞれが別々のフィールドで自由に動き回ったりすることはできないの。どっちかに合わせないといけないのよ。むー。

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総評

独特かつほのぼのとした世界と、ややちぐはぐなゲーム性

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 評価はGOOD。ゲームとして面白いかというと、先ほど言ったように「あと一歩」。値段に釣り合うゲーム体験ができるかというと、微妙なとこ。クリアするだけなら数時間で終わっちゃうし。もっと気持ちよくキャラを操作できればなー、と惜しく感じるのだ。どうも開発中はバグとの闘いだったようで、まぁ確かにこういうゲームデザインとなると大変だろうなぁ。

 だけどこうした世界の表現は高橋氏ならでは(裏を返せば高橋氏じゃなかったらそもそも見向きもしなかったかも分からないが…)だし、「手を繋ぐ」、「仲良くなって世界を広げる」といったコンセプトは良いと思う。言うなればそうね、ゲームというよりは積み木遊びやインタラクティブ性のある絵本を楽しんでいる感じ。雰囲気ゲームや癒しゲームが好き、というのであればチェックしてみてもいいかも。

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 はい、ということで2019年の「よもやま」はこれにて閉幕でございます。大分ジャンルが偏りましたね。いや、紹介できればいいなー、と思いつつ出来なかったネタが割とあるのよ。『運び屋』とか『グリーン・ブック』とか『フランス版シティーハンター』とか、今年は結構映画観たので。

 果たして来年はどんな作品と出会えるか。あと紹介できるか。やるやる言っておきながら全然音沙汰もない「アニメを観たので感想を書く」シリーズは来期やれるのか。2020年も乞うご期待(?)ということで、よいお年を。


《了》

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