#139 モノクロ・アナクロ世紀末

 『平成少年ダン』という漫画が話題です。いろんな意味で。

 アニメ化もされた『干物妹!うまるちゃん』で知られる、サンカクヘッド氏の最新作。人生が上手くいっていない三十路の男、大鷹団(おおたか だん)が何やかんやあってファービーのパチモンに転生し、少年時代の自分自身と1999年(平成11年)を過ごす、「ノスタルジック日常コメディ(自称)」漫画…らしいですよ。

 ところがいざ読んでみると、「コレ本当に1999年の日常風景?」と疑念を抱かせる描写がわんこそばの如く出て来ます。
 第1話からしてツッコミどころが多い。インターネットの集合知によって、物事の真偽にアクセスしやすくなった(勿論、望ましい結果とは逆の場合も有り得るのですが)この令和の時代に、

  • 「何で1998年に『おジャ魔女どれみ』のステンシルがあるんだよ
    (『おジャ魔女どれみ』は1999年放送開始、この頃は『夢のクレヨン王国』)

  • 「何でWANDSの『世界中の誰よりきっと』をチョイスするんだよ」
    (無理筋ではないがシングル発売年は1992年、『錆びついたマシンガンで今を撃ち抜こう』とか『明日もし君が壊れても』とかで良くない?)

  • 1999年に「ぬ~ぼ~」もう売ってねぇよ」(1996年に販売終了)

まだ始まって間もない出来立てホヤホヤの新作ではありますが、こんな系統のツッコミが最新話(本記事を書いている時点で第4話)まで途絶えていませんからね。リサーチが足りない、というかリサーチせずにサンカクヘッド氏の頭ン中のうろ覚え平成史で作ってないかこの漫画?
 更には担当編集が作者よりも年下だそうで。いや、年齢の上下関係なく精査するのが仕事だろう。作者のTwitterを見てみたら、11月9日にネームが一発で通って小躍りしている作者近影が上がっていた。

 時期的に『平成少年ダン』のネームの話だよね。これほどボロがボロボロ出てくる内容だというのに、大丈夫か。


 もしかしたら、間違った情報を敢えて連発することで「違げーよ! 俺たちの平成11年はこんな感じだったよ!」と感想を述べさせ、結果的に読者のノスタルジーを引き出す、巧妙な狙いが隠されているのかもしれません。
 あるいは、「主人公が転生した平成は本当の平成ではなく、これから正しい時間軸に修正していく使命を自覚する展開になるんだよ!」的な布石として、敢えて微妙にズレている描写を盛り込んでいるのかもしれません。

 作者の人そこまで考えてないと思うよ。

 「団地住まいの貧乏家庭」という設定(予防線)があるので、何も描写の一つ一つが全部おかしいわけではないのですが、「これが平成11年」と十把一絡げにされて心から賛同できる人は少数派でしょう。
 サンカクヘッド氏は1986年生まれ。1999年当時は13歳ということになります。皆さんの中にも経験した方はいると思いますが、歳が1・2コ違うだけでも話題が噛み合わなくなる時があるものです。
 作者の13歳までの思い出を主人公(1990年生まれ)の9歳の思い出に当てはめているのだから、悲しいかな認識のズレが生じて当たり前だし、寧ろ納得が行く。

 それどころか「これが『平成』なんだ…」という台詞(正確にはモノローグ)まで飛び出してくる。謎時空の範囲をデカくするな。
 そもそも平成から令和になって、まだ2年半ぐらいしか経っていないんですよ。元号が変わったからといって、色んなモノがすぐさま姿を消すわけではない。本作によると午後5時の鐘は過去の遺物らしいです。え、今でもフツーに聴いておりますが?

 平成に飽き足らず令和にも疑念を呈していく『平成少年ダン』。これからもツッコミどころ全開の作風でよろしくお願いします。


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 せっかくなので『平成少年ダン』に触発されて浮かんだ、この頃あたりの話をしたいと思います。

 最新話(第4話)のテーマはゲーム機です。初代PSをねだるもプレゼンの弱さが仇となって母親から拒否られてしまい、それでも諦めきれない少年期主人公が団地を駆け巡って「プレステが欲しいか」アンケートを取り、数の暴力で説得しようと試みたお話でした。

 翌年にPS2発売を控えた1999年夏、この頃の本体価格は発売当初(1994年12月)の39,800円から15,000円(税別)まで下がっていましたが、まぁ…自分の子の誕生日プレゼントを999円(税5%込)のファービーのパチモンにするぐらいの貧乏だというし。バブルが弾けたとか言って買わない理由をこじつけているし。
 ニンテンドー64、ね…。このエピソードでも色々思うところはありますが、キリがないので割愛。

 1999年は『ポケットモンスター 金・銀』の発売年です。本来は1997年末頃の予定だったものが、延期に次ぐ延期で結局1999年11月までズレこんだのでした。確かに『モンスターファーム2』や『サルゲッチュ』の発売年でもあるんだけれど、「『ポケモン金銀』早く出ねーかな~!!」とならないのが不思議です。権利的な問題が絡んでる?
 少年期主人公の居間には初代ゲームボーイ(とファミコン)が置いてあります。誰のものなんでしょうか。お父さんかな。

 私自身は『ポケモン』というとこの頃のイメージが強いです。2009年にリメイクの『HGSS』が出た時は興奮したもん。こないだ『ダイヤモンド・パール』のリメイクがリリースされて、こちらもいろんな意味で話題になっていますが、いつの世代でも楽しいゲームです。だから余計に作中で話題が回避されているのが不自然極まりないんだけれども、逆に『ポケモン』ほどのビッグネームだとノスタルジーを感じさせにくいのかな。

 そういえば小学館の学年誌の付録には『ポケモンスタンプ』が付いてきましたね。毎月綴じ込んであるシートから切手(状の印刷物)を切り離して、台紙に貼って少しずつ完成させていくやつ。
 今はやってないのかなと思って調べたらやってない、というより学年誌自体が次々と廃刊になって今は『小学一年生』と『学習幼稚園』と『小学8年生』しかないんだった! ウワーッ!!


 …それはさておき、ひょっとしたらポケモン本編よりも印象深い関連作品がございまして。この年はミュウツーを繰り出すオカン(故深浦加奈子氏)が大人げない『ポケモンスタジアム2』や、未だに学会が賑わう『ポケモンスナップ』などが出ましたが、個人的には親戚が持っていた『ポケモンカードGB』です。ただしこちらは1998年12月発売。
 ポケモンカードゲームをゲームボーイで気軽に楽しめる、そして『サンダー LV.68』の壊れ性能でお馴染みの本作。クリアのゲームボーイカラーで遊んでいましたね。モノクロじゃない!
 あの頃のガジェットは何でもスケルトン(クリア)パーツだった。今どこやったかな。

 …とは言ったものの、ポケモンカードゲームそのものは熱中していたわけではありませんでした。一時期カード収集をしていましたが、それでもって誰かとデュエルしようとかは全く考えてもいない、ただコレクションすることに満足していた子供でした。
 強さやレアリティは二の次で、新しいカードが増えればそれだけで嬉しかったのです。現在は使えないカードがいっぱいあるんでしょうなぁ。

 それでいて何が印象深かったのかというと、BGMでしょうか。今でもずっと聴いていられる良曲揃いです。人気どころだとクラブマスター戦

 『ファイナルファンタジーVIII』のミニゲーム(本編?)である「トリプルトライアド」のBGM、『Shuffle or Boogie』も出だしが似ている。何だろう。カードゲームのイメージって共通しているのか?

 現在は3DSがあれば、バーチャルコンソール版で遊べますね。いい時代になったなぁ。それとは別に、最新バージョンのポケモンカードゲームに準じたコンシューマー向けの作品は出さないのかな、とか思いながら検索していたら、こんなのを発表していました。スマホ・PC向けだし、今のところおま国なんだけど。

 …”Pokémon”の”é”が「辿」になってる。

 今となってはいよいよポケモンカードのことは知らぬ存ぜぬだし、リリースされたからって遊ぼうという気にはならないのですが、もし『ポケモンカードGB』のBGMが公式でリメイクされたらどんな感じになるのか(GB音源含めての印象ではありますが)、という点が気になるだけです。

 色々と調べてみると、開発元のハドソンが制作許可をもらう前からフライングで開発を始めていたという噂があるそうで…本当かソレ? 複雑なルールをプログラムに落とし込むのが大変だった、という話に尾鰭が付いただけなんじゃと思うのですが。


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 こんな風に書き綴っていると、『平成少年ダン』を読んでいる時よりもよっぽど回顧(懐古)してない? と思うのですが、その切っ掛けとなった本作に感謝すべきなのでしょうね。作者の術中に嵌ったのだとしたら、恐れ入りましたと言わざるを得ない。

 

 話はガラリと変わりますが、今回からnoteの新エディタ(β版)を使用して記事を書いています。まだ全然使いこなせていませんが、区切り線や右寄せなどが使えるようになったのは、今後も使いどころがありそうで良い改善点ですね。改行は前の仕様で慣れていたこともあり、新たに身体に覚えさせるのは時間が掛かりそうだけど…。

 さて、今回はこの辺で。久々に『団地ともお』でも観るか。