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Review-#002-C 『ファイナルファンタジーXV』の12年間を受けて (後編)

 いよいよ後編です。ここまで見て下さった皆様、本当にお疲れ様です。総括に入りますよー。別のところを見たい人は、こちらから。

 ・前編 (紹介, 前置き, フィールド, 戦闘システム)
 ・中編 (シナリオ)
 ・後編 (総括とあとがき) ←いまここ

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【総括】12年間の旅の終着点として

 ということで全体的な評価は非常に悩むところであるが、王子様御一行の旅に同行させていただいた私としては今の気持ちはこんなん。

 GOOD。無難な判定である。そう、FF15というゲームは控えめに言ってもGREATのような判定を付けられるほど「良作」ではない、と私は感じた。全体の評価付けにおいてシナリオが足を引っ張った感が否めない。とはいえPOORやBADを付けてこれは「駄作」と見なすのは短絡的とも思えるような魅力が本作にはある。じゃあここは間を取ってMEDIOCREかと言われるとそういうことでもない。もし1年前の段階ならあり得たかもしれないけれど、幾分か改善された現在のバージョンではこの判定はフェアじゃない。グラフィックやサウンドは他の凡ゲーとは比較にならないぐらい、クオリティが高いしね。だから最終的に落ち着いたのがGOOD。おすすめする相手は間違いなく選ぶだろうが、それだけに多くの苦楽を味わった旅のようなゲームであった。

 私は久しぶりのFFナンバリングタイトル作品だったから、当時は「はえ~…こんな感じなんだ」と色々ワクワクしてプレイしていた。釣りとかそういった寄り道要素も、RPGとしての正当な評価に含めるのはやや危ういかもしれんが楽しめる部分はなかなかに楽しめたのではないだろうか。第9章以降はシナリオ重視(一応)なせいかゲームのテンポが速く「え!? もう終わり!?」と尻切れ蜻蛉に終わってしまったけどね。100レべに上げた時点で100時間だったので、成程これは寄り道しなければクリアタイム10時間切りも難しくないですわ。トロフィーもゲームを進めていくと自然とポンポン埋まっていく感じ。
 もう一度、私からの評価はGOOD。何度でも言うが未プレイの人は周りの評価ばかりを鵜呑みにするのではなく自分自身の手で確かめて、満足の5つ星を与えるのか、元が取れる分の楽しみを得られたと感じたか、次回作を様子見するのか、はたまたFFシリーズと縁切りするのかを決めて欲しい。ここに書いていることだって、所詮は個人の感想でしかないのだから。

 シナリオに対しては「うーむ…」と、疑問符を付けようと思えばいくらでも付けられる。だけどそこにあるのは「キャラクターのことを深く知りたい」という私自身の願望だ。ノクトをはじめとするキャラクター達の印象は自分の中では良い方なのだ、それだけにより細かに彼らの心情を理解できればいいのになと思う。発売当初からアップデートやDLCでそれなりに補完されつつあるが今のシナリオではまだ十分に引き出せていない。
 仮に補完しきったとしても、ストーリー全体の流れにちゃんと納得できないままだろうけどね。シリーズの中にこういう話があってもいいと思うけどさ、やっぱりモヤモヤするっていうか。結局、皆が皆自分の境遇に踊らされた挙句かなり重たい「痛み分け」で終わってしまっている。ここはもう大元を変えるでもしない限り評価を覆すのは難しいのではないかと。
 この記事に書いたこと以外にもツッコミ所はいくらかあるけれど(例えば「一都市の住人の避難に人員が3人で足りるのか?」とか)、まぁキャラクター描写が特に改善させるべきであろうポイントである。
 せめてアレかな、エンディングかそれ以降の描写を増やすとか。戦いが終わり平和を取り戻したイオスに「生きる」人々が何を想っているのか…そこが伝われば命を捧げた者達も今度こそ報われると思うんだけどね。ただ一番気になるのは、恒久的な平和が訪れたのであればまだしも、星の危機が再び起きた時どうなっちゃうんだろうということであるが。

 それでも、広いフィールドの中でノクティス達4人が(祖国の存亡の危機などお構いなしに…)旅を楽しむというプレイ体験はとても印象に残るものだった。オープンワールドのフィールドは改善すべき点はかなりあるだろうが、本作のチャームポイントである旅情感は100%とはいかなくとも制限が生み出す不満をある程度払拭してくれるものであった。好みは分かれるとは思うのだが、従来のRPGに欠かせない「冒険」に内包される旅というエッセンスに大きくアプローチをかけた点は私にはドンピシャな要素であった。ここは今後も何らかの形で取り入れてくれるといいなぁ。
 王子様御一行が旅路にて語り合うそれぞれの中身は全く堅苦しくなく、仲の良さがひしひしと感じられる。個人的にはこうした光景を見ているのが楽しいからね。9章からだんだんと雲行きが怪しくなるどころか、暗雲が立ち込めてしまっているのが非常にもったいない。ラストもそれこそDLCの隠しシナリオみたく4人で協力して立ち向かう展開でも良かったと思うんだ。

 だからそう、良いところも悪いところもいっぱいある。手放しで喜べないのだけれど、かと言って一概に全然ダメ! と否定することができないのがFF15。 嫌いには絶対なれない。むしろ好きだよ王子。好きだから、このまま終わらせて欲しくないというのが正直な気持ち。先に言ったことの繰り返しになるが、描写を少し入れるだけでも印象はガラリと変わるものだ。今後もアップデートが行われるようだし、是非ともそれらを盛り込んでもらいたいものである。

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 もしFF15の開発陣に一言何かを伝えることができるとしたら、多分それは

 「とりあえずお疲れさま。だからこれからも頑張って」

 ということかしら。

 まず、発表から10年以上いざこざがありつつも一つの形として世に出すことができたという点について「大変だったろうなぁ」と感服せざるを得ない。本来ならもう開発中止になりただの「幻想」だけで終わってしまってもおかしくない状況の中で、当初の目指すゴールとは別だったとしてもファイナルファンタジーの新たなるナンバリングタイトルとして体験することができた。

 残念ながらその一つの形というのが、プレイを心待ちにしていたすべての人たちの期待に応えられるものではなかったということだ。尤も「すべて」なんて満たせるわけもないだろうが…何しろナンバリングタイトル、期待のハードルも相当に高かったことだろう。FF15の開発期間は実質3年程度だったということを考えればある程度酌量の余地も(という言い方もどうかとは思うが)あるかもしれないが、そんなのプレイヤーは知ったこっちゃないというわけであり。ナンバリングにしないで外伝作品として扱えば批判も抑えられたかもしれないが、それは結果論でしかないのであり。

 発売前にFF15が「極上のクオリティ」であると謳っていたのも拍車をかけてしまった。発売後に本作のロードマップが掲載された。長期間のゲームプレイを提供するというその意気は評価できても、やはり発売当初の時点で「本当にコレで胸張って極上って言えんの?」と疑問符が付いてしまったら、アップデートも追加コンテンツも本作の不足分を少しでも補うための小細工にしか捉えられなくなるだろう。かえって「未完成品を売っていたのか」と、要らぬ不満が沸き上がってしまうこともあり得る。私はFF15をより良くしようとしているのだとポジティブに受け止めているつもりではあるのだが、本作を快く思わない人からすれば「延命治療」をしている制作陣の姿が滑稽に映ることだろう。あんなどえらいキャッチコピー付きの広告掲げていたらなぁ…。やることをやりつくせてはいなかったことだけは確かだろう。良い意味でも悪い意味でもアップデートを重ねた結果だと思うが。

 実際、私の中でも「それは最初から入れて欲しかったな…」と思う箇所はそれなりにある。未だにオフラインメインの向きはあっても一応ゲーム機をインターネットに繋いでいる私はともかく、インターネットに繋いでいないためにアップデートの内容を体験できていないユーザーは一定数存在するのだから。
 初期段階で投げ出してしまったプレイヤーもいるだろう。長期のアップデートとコンテンツがそうした人をどれだけ呼び戻せたのかは疑問である。
 もし1年間分のアップデートとDLCの内容を詰め込んでから発売するという流れになっていればここまで日本のレビューが荒れることはなかったのかもしれないが、その分延期するわけにはもうこれ以上は問屋が卸さないのであり。とにかくこの12年間という長いような、短いような年月が開発陣とプレイヤーの意識を大きく変えたことだけは間違いない。

 これまでのアップデートにおいて色々盛り込んだおかげで良くなっている部分があるとはいえ、根本的な部分はどうしても手を付けられないのか発売当初から変わっていないところも結構あった、というのは前中編を見ていただければ概ね理解してくれるかと思う。この1年間は改築ではなくて増築を行い続けてきたと言えるだろう。2018年もアップデートを続けていく方針であるらしいが、ただガワだけが見映えの良い工事にならないことを願う。

 日本だけで見れば紆余曲折ありまくりだが、なんやかんやあってFF15は全世界で650万本以上の販売を達成している。ということで『ファイナルファンタジーXVI』の開発決定も現実的なものとなっているらしい。もしかしたらすでに開発しているのかもしれないけどね。スクウェア・エニックスの松田社長もこれから発売される作品の発表から発売までの期間を短くすると口にしているようだし、その言葉を信じるならばFF16は2020年ぐらいに出るんじゃね? と勝手に予想している(キングダムハーツⅢは2018年内に出るし、となるとFF7リメイクは2019年に第1部がリリースされるだろう、ということで。スクエニの悪癖が出なければいいけれど…)。
 そうそう、本作の開発に大きく携わった田畑端ディレクターをはじめとするスタッフが「LUMINOUS PRODUCTIONS」を発足したとのことだ。ここでどんなモノを開発するんだろうか? 田畑氏だし『ファイナルファンタジー壱式』とかありそう。FFシリーズ以外かもしれないね。とりあえず新たな船出を素直に祝うとして、「年内に」とアナウンスされている新作の発表を待ちましょう。

 まぁ何にせよ、もしFF16がリリースされるのであれば本作で懲りることなく色々とチャレンジしてもらいたいなと思うんです。アンケートも取っていたから開発側には手応えがあった部分も厳しい意見が殺到した部分もよく把握していると思う。良い、悪いを含めて本作で多くの経験値を手に入れたのだ、次で全部無かったことにするような真似だけは絶対にしないでほしい。折角オープンワールドとアクションRPGという二大宝刀を手にして大地に立つことができたわけだし、次回作以降はもっと広がりのあるゲームプレイを体験させていただきたい。

 で、次回作は特にシナリオを重視することを意識すべきだろう。説明不足だったり唐突だったり、何遍も同じ展開が続いてしまうとプレイヤー側も「どうせまたそうなんだろ」と諦めモードにオプティマチェンジしかねない。

 本シリーズは2017年で30周年を迎えた。初代が発売された1987年と言えば『ドラゴンクエスト』真っ盛りであり、このブームに乗り遅れるなと色々なドラクエライクのRPGが世に出されている。そんな中で何故『ファイナルファンタジー』が埋もれなかったのかと言えば、「ビジュアル・システム・シナリオ」の3本柱が単なるドラクエの亜流作品に留まらせなかったからだと思う。
 この30年間でグラフィックは、格段というレベルでは表しきれない程に進化した。ゲームシステムもハードの性能の向上とともに様々なアイデアが組み込まれ、毎作斬新かつ画期的な、挑戦に溢れた体験ができた。FF15でも意欲的な部分は多く見られるし、評価すべき点は確かに存在すると思う。

 そしてシナリオはゲーム全体のデザインにも大きく関わる重要な部分である。過去作で言うならば、FF7の「マテリア」やFF8の「ドロー」などは作品の世界観・設定から大きく影響されている。逆に言えば、シナリオの出来がゲーム全体の出来に影響するということでもある。FF15もその例に漏れない。本当に旅をしているような感覚が楽しめる一方で、世界の危機が差し迫っているという状況がどうしてもゲームシステムそのものと乖離を起こしてしまっているというのは先に触れたとおりだ。
 シナリオという要素はRPG、特にJRPG(国産RPG)というジャンルにおいてグラフィックなどよりも重要視されることが多いのだそうだ。確かにRole-Playing(なりきり)なのだから、そこに欠かせないのはプレイヤーがゲーム内に登場するキャラクターに入り込めるぐらいの物語である。それゆえに本作のシナリオが良くないと見なす人は、もうこの時点で「FF15 = クソゲー」という単純明快なチャートが完成してしまったのだと思う。
 ロイヤルエディションとか、今後色んな関連作品が出てきてもずぅっとそれを引き摺るんだろうなぁ、「やっぱつれぇわ」と。まぁこのゲームが傑作だと思って褒めたたえても、掃き溜めだと思ってガンガンと批判してもそれは問題ではない。自分の感性を大事にしよう、だが他人の感性が自分のとは異なるからって大っぴらに人格否定するのはアウトだと思う。大体、本作のことを触れている人のうちどれだけの割合が実際にプレイしているのか怪しいとこよね。

 FF15は3本柱のうち、「シナリオ」という柱に見過ごせないヒビが入っているのだろう。3本柱だから多分、1本でも崩れ落ちると全体がもたなくなってしまう。それは他の要素への深刻な悪影響を意味する。今行われているアップデートやDLCが柱の修繕を担っているのだが、どこまでヒビを塞げるのか。制作陣の真意が問われることだろう。
 FF16にて、本編に対するファーストインプレッションの段階でアップデートやDLCに頼らずとも納得できるストーリーテリングを展開できるのであれば、海外の評価は勿論厳し~い目のした日本においても真っ当な評価を今度こそ下せるはずだ。最初の印象というのは強く残ってしまうし、今ではネットで自分の感想を良くも悪くも拡散しやすい環境になっているのだから尚更初動に気を配る必要があるのではないだろうか。
 シナリオがうまく心をつかむことさえできれば、あとはFFの得意分野が全体的な評価をグイグイと押し上げてくれるはず。"変わらない良さ"はドラクエが充分過ぎるぐらいにその責務を果たしている。FFが今更その後追いをする理由など、どこにもないだろう。FF15にて「世界は常に変貌し続けている」と謳ったのであれば、これからもその世界を見せてほしいものだ。

 FF16が出るとしたら、一体どのような作品になるのか? ご存知の方も多いとは思うがFF15で使用されているゲームエンジン「LUMINOUS STUDIO」の技術デモとしてこのような映像がある。

 "FINAL FANTASY"の名を冠しているということもあり、世間では「これがFF16のひな型になるのでは」と噂されているが、果たしてどうなることやら。とにかくFF15により、新たなナンバリングタイトルの可能性が見えてきた。その点は功績と言えるものなんじゃないかな。発表済みで今後リリースされるタイトルとして『ファイナルファンタジーVII リメイク』がある。公表されている情報は多くないし、いつ第1部が発売されるのかも分かっていないが今から気になっている作品である。それはそれとして、これまでの作品とは異なる路線を打ち出したFF15を受けて、次は一体どのような物語が紡がれていくのか…今後の発表に注目したい。でも発売までに10年もかけるのはさすがにファンも開発陣もこりごりだろうし、発表するならばあまり間をおかずにリリースの段階まで行けるようにしてほしいですね。

 これまでの30年間で積み重ねてきた分プレイヤーも様々ではあるけれど、とにかく何だかんだ言って皆、FFが好きなんですよ(暴論)。だからFF15に期待していて、その反動が日本ではかなり大きかったのではないかと私は思います。長く待たされたこともあってひとしおに、ね。
 FF15に対する意見は人それぞれだけれど、王子様御一行は旅の終着点に大きな道しるべを残してくれた。その先にある新たな「幻想」の到達点は何か、どれだけの距離があるのか、それは未だ明らかではないけれど…
 飽くなき挑戦が終わらずに続いてくれるよう今はただ、祈るばかりである。

《了》


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