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Review-#028-A 『ペルソナ5スクランブル ザ・ファントムストライカーズ』Part 1

怪盗どうでしょう


 アニメになったり、スマホゲーのコラボでお呼ばれされたり、他所で大乱闘を繰り広げたりと、着々と10年選手への道を辿りつつある『ペルソナ5』の主人公、雨宮蓮(あまみや れん)。またの名を9股もとい10股の屋根裏の……何も言うまい。

 昨年4月、実質完全版である『P5R(ペルソナ5 ザ・ロイヤル)』と同時に発表された本作。躍り出た『P5S』の三文字に「ついにペルソナ5がニンテンドースイッチ(Switch)でも遊べるのか?」と期待するファンもいる中、その実態のヒントとなる情報が流れるのに、あまり時間はかからなかった。
 同年4月24日から25日にかけて両国国技館で開かれた音楽イベント『PERSONA SUPER LIVE P-SOUND STREET 2019 ~Q番シアターへようこそ~』にて飾られていた祝い花に、よく知られた会社の名前があったのだ。

 株式会社 コーエーテクモゲームス と。

 その文字に気付いた者は程なくして、パズルのピースが繋がった音、あるいは「あっ…ふーん」と何かを察した声が頭に響いたのだろう。この会社がらみで何かあるとすればジッチューハック「無双系」であり、それこそが『P5S』の正体である…そう確信したのだった。
 そして25日、ライブDay2にて正式に発表された。『P5S』改め、『ペルソナ5スクランブル ザ・ファントムストライカーズ』は「コーエーテクモゲームスのオメガフォース」が開発を担当し、ペルソナシリーズ初のアクションRPGとして「PS4とニンテンドースイッチ向け」に発売するのだと。

 マルチ展開に、アクションRPGに、新たな物語。果たしてどんな作品になるのやらと思いながらも、私は様々な情報が明らかになるにつれて本作への関心が高まっていったのである。ということで、今回は『P5S』(長いので略称を使わせていただきます…)をざっくりプレイした感想を雑談を交えて…むしろこっちがメインになりそうではあるが、とにかく書いていこうと思う。

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目次

・Part 1 (まずは気になるストーリーから…) ← いまここ
Part 2 (日常パートとか)
Part 3 (戦闘パートとか)
Part 4 (総括とあとがき)

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作品情報

ペルソナ5スクランブル ザ・ファントムストライカーズ
(PS4/Switch・2020年2月20日発売)

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定価:8,800円+税 (通常版)
   13,800円+税 (限定版)
ジャンル:アクションRPG
メーカー:アトラス(開発はコーエーテクモゲームス)

<プロモーション映像…だけどネタバレが嫌ならスルー推奨だぞ!>

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ストーリー

『ペルソナ5』のその後ならではの、怪盗団の「強さ」を見た

※本作も例によって戒厳令が敷かれているので、極力ネタバレは避けるようにしています(というつもり)。誰からも就寝提案しかされなくなるのは嫌だけれど、『お仕置き』をされ続ける呪いはむしろご褒美という人もいるんじゃあ…いや何でもないです。


 「精神暴走事件」の終結から半年後。夏休みを迎えた主人公は四軒茶屋にて「心の怪盗団」のメンバーと再会し、楽しい時間を過ごそうと旅行の計画を立てていた。
 しかし、坂本竜司(さかもと りゅうじ)とモルガナと共に準備を進めている最中に、現実とは似て非なる異世界に迷い込んでしまう。困惑する彼らに、異世界の主「王(キング)」から"ネガイ"を奪えという命令を受けたシャドウたちが襲い掛かる…。

 一方、かねがね主人公を監視していた公安当局は、近頃人格が突然豹変する「改心事件」が日本各地で発生していることから、改めて主人公を調べあげるべく長谷川善吉(はせがわ ぜんきち)を心の怪盗団の許へと送り込む。
 自分自身たちへの疑惑を払拭するには、事件の元凶を突き止める以外に術はない…かくして心の怪盗団は異世界で出逢った謎の少女ソフィアを交え、日本を巡る世直しの旅に出掛けることになったのである。

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☝ 本作でも色んなところでアニメシーンが挟まれている。

 高校3年生となった主人公。私の雨宮君は「知恵の泉」だからいいとして、他の連中は遊んでていいんか!? とやっぱり思ってしまうのだが…まぁ、いいか。作中でも言及はされていることだし。あと日本を巡るって書いたけれど、別に主人公が性懲りもなく各地で現地妻を作る話では……ない。ないよ??

 で、大事なことなので今のうちに言っておくと、キャッチコピーである「『ペルソナ5』その後の物語」とあるように、『P5S』は無印の『ペルソナ5』の続編と位置付けられている。
 『P5R』の追加キャラクターは登場しないし、当然ながら追加されたストーリーも本作とは関係がないことになる。そのためアイツも出て来ない。本筋には深く関わらないけれど、どこかでチラッと出てくる…とかそういうことは一切ない。勝手に期待して勝手に裏切られないように。

 「『P5R』より後に出ているのに変なの」と思うかもしれないが、『P5S』は『ペルソナ5』が出てから直ぐに開発が始まったのだそうだ。盛り込める要素が戦闘BGMぐらいしか無かったのは、そういった理由からであろう。尤も『P5R』から『P5S』に繋げようにも、色々無理が生じてしまうのだが。ついでに言うと今に始まった事じゃないし(『P4G』の後の『P4U』とか…)。


 とにかく「完全続編」と強調された『P5S』であるが、実際『ペルソナ5』にて激闘の1年間を経た心の怪盗団の成長が感じられるストーリーとなっていた。本作で最も注目すべきポイントがここにあるのだ。
 身勝手な大人たちへの「反逆」が『ペルソナ5』の物語であるとするなら、人間性を否定する束縛からの「解放」が『P5S』の物語であると思う。どちらも「自由」が共通のテーマとして存在しているのだが、(理不尽な目に遭っていたこともあって)自分たちのことで手一杯だった『ペルソナ5』に対し、『P5S』は自分たち以外の誰かのために動いている、という印象を強く受ける。

 『ペルソナ5』と比較すると『P5S』のストーリーは比較的明るめであり、事実開発中も「明るさ」を意識してお話を構成していたようだ。ちなみにコエテク原案でペルソナチームが脚本を担当したとのこと。
 明るいとはいっても、起きている状況は至って大真面目。怪盗団はいつものように、異世界を統べる王を「改心」させることで事件の解決を図ろうとするが、どうやらこれまでとは事情が違うことに気付く。異世界の構造、メカニズム…そして王の隠された過去。

 「改心事件」に関与している大人たちは、如何にして王と成り果てるまでに歪んでしまったのか。彼ら彼女らの現在やっていることが許されるわけではないにせよ、幾分か同情もできる。
 王の成せる力を以てして実現する世界を知ってしまったなら、こうやってお話を追っている自分もいつかどこかで縋り付きたくなるかもしれないし、ひょっとしたら怪盗団のメンバーの中にもそういう方向に走ってしまう者がいたかもしれない。
 そんな付け込まれる危うさのある心を、仲間という最高の力で強くした怪盗団が――むしろ怪盗団だからこそと言うべきか、彼らは「改心事件」に巻き込まれた人々だけでなく、加害者たる王さえも救ってみせる。ただ改心させるのではなく、王に再起を期すよう発破をかけている。ここなのよ。

 各地の王たる大人たちと怪盗団のメンバーに因縁は用意されているが、直接虐げ&虐げられている関係ではない。怪盗団を抑圧してきた『ペルソナ5』の大人たちは悪辣さが目立ったこともあって、改心されても正直「ざまあみろ」程度の感想ではあった。
 まぁ、何にせよ後味は良くない。行き過ぎた欲望の先に待ち受けていたものが「孤独な破滅」だったのだから。

 1年間を経て心の余裕が生まれたのか、それとも「人は変われる」としながらも見届けられずに別離れてしまったことに思うところがあったのか。どちらの理由にしろ、怪盗団は大人たちに「独りではない」ことを伝え、大人たちもそれに応える。事の規模を考えれば前途多難ではあるだろうが、きっと立ち直れるだろう…と希望のある展開である。
 1年前は「これで良かったのかな」と戸惑っていた怪盗団も、今回は「これで良かった」と自信を持てている。成長したわねぇホント。


 もう一つ、ストーリーと大きく関わることになるのが「EMMA」の存在。作中では優秀なAIコンシェルジュアプリとして、瞬く間に広く利用されている凄いツールなのだが、これが現実と異世界を繋げる…要は『ペルソナ5』における「イセカイナビ」の役割を果たしてしまっているのである。とはいっても、インスコもアンインスコも普通にできる上に一般企業が提供しているこのアプリ、果たしてその正体と目的は…?

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☝ 本作の名前入力のタイミングはここ。
当初は"福山 潤"にしようかなと考えましたが、考え直しました。

 AIと人間との関係ということで本作のお話は結構シンプル、というかオーソドックスな内容ではあるのだが、「自由」をテーマとする『ペルソナ5』との相性はピッタリだし、技術が高度化された現代だからこそ考えなくてはいけないことではあると思う。
 イノベーションばかりに吸い取られて人間性が貧しくならないようにするには、どのように生きるべきなのか。ちょっとばかし『デビルサマナー ソウルハッカーズ』を思い出したりして。

 事件の真相を探る中で、怪盗団は「正義」の在り方に頭を悩ませる。自分たちも王たちも「改心」の力を使う中で、自分たちの行いの正義をどのようにして示すのか。『ペルソナ5』の時点で少なからずあった自己矛盾への問いかけとしても、そこから自分たちの生き方として一つの答えを提示する、怪盗団の成長が垣間見えるシーンとしてもGOOD。
 誰もが彼らほど強い存在でなかったとしても、見習うことはできる。自分もまた、自由に焦がれながら自由から逃れようとする、一種の自己矛盾を孕んでいるのかもしれないのだから。


 大筋のストーリーについて触れたが、キャラクター描写についてもイイ感じ。
 既存のキャラクターだと、本作では特に奥村春(おくむら はる)にスポットライトが当たっているという点が良かったかなと。『ペルソナ5』だと加入時期が遅めだったからあんまりストーリーに参加できていなかったしね。その分ネタキャラ成分も増したような気もするけど、面白いので全然オッケー。あの持ちネタもノリノリでやってくれるぞ。
 竜司も仲間思いってとこが強調されていて株が上がったと思うし、喜多川祐介(きたがわ ゆうすけ)は…あー、うん。食べ物の話ばっかりしてたな(人のことを言える立場でもないけども)。会話のオチ担当みたいになってらぁ。

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☝ ちなみにこういうネタ会話が増えたのも『P5S』の特徴。
まぁ『ペルソナ5』の時点で主人公はノリノリではあったけどさ…。

 本作から登場した新キャラクターにも注目だ。
    異世界に放置されていた謎の箱から飛び出した少女ソフィア(CV.久野美咲)は、彼女の中に唯一残された記憶である「人の良き友人」の役目を果たすため怪盗団と行動を共にする。旅の中で得られた経験を通じて、人間の心を少しずつ理解していくソフィア。彼女の正体が明らかになる終盤では熱い展開が待っている。

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☝ バトルにも参加するけれど、このフォームの表情はどうやっても
([∩∩])<死にたいらしいな」にしか見えない。白ボンかよ。

 敵か味方か、長谷川善吉(CV.三木眞一郎)は改心事件の真相を探るため怪盗団に取引を持ち掛ける。見た目からも「善吉」という名前からも「正義の味方」なんて自称からも、メンバーから指摘されるほどの胡散臭さ漂うキャラクターであるが、間の抜けた面もあってなかなかどうして憎めない奴である。

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☝ 怪盗団の実体については一周回って新鮮な反応も見せる。
そりゃあ…普通の人はそうなるわな。

 少年少女の視点から物語が紡がれる『PERSONA』シリーズとしては、善吉の存在は新鮮である。良くも悪くも青さのある怪盗団が自分たちの考えをぶつけるのに対し、善吉も人生経験を積んだ大人としての意見を述べる。とはいえ、善吉とて全てが全て「そういうものだ」という諦観した主義を取っているわけではない。彼の心の奥底に留まっている感情、それが爆発する時に一体何が起こるのか…

 それについては本編を遊んで確かめてもらいたいところではあるが、今更なんだけどPVで色々出し過ぎじゃないっすかねぇ…。上記のプロモーション映像で「ネタバレが嫌ならスルー推奨」と書いたのもそういうこと。
 とにかく、本作の新キャラクターは敵味方関わらず好きになれるところがどっかしらにはあると思う。是非とも彼らの(良くも悪くも)ひたむきな所を感じてもらいたい。


 ストーリー、キャラクター共に好印象な『P5S』であるが、ちょっとだけ気になった所も触れておく。

 まず、ストーリーの後半部分が駆け足気味。前半はあちこちを回って王を改心させるいつものパターンを踏みつつ、改心事件やキャラクターへの理解を深めていくのだが、後半ではより改心事件の真相に迫るべくパターンから外れた展開がなされていく。
 似たり寄ったりなお話でそのままクライマックスへ…とならなかったのは評価できるが、「この後何かあるのかな?」と思ったらもう次の街に移動するということもあったり。ストーリーとしてもゲームプレイとしても、もう少しボリュームがあれば更に良かったんだけどなと感じる。

 次にラスボスに与する者の描写が少ないとこ。このキャラは黒幕じゃない、このキャラも踊らされているだけ、となると残るはこの人しかいないじゃん、と海外の刑事ドラマを見ているような感覚で正体を知ることになるのだが、「…え、貴方、そういうキャラだったの?」というのが正直な感想。
 そういう人だと分かった上で今までの言動を思い出してみると、あぁだからあんな感じだったのかと納得はするのだが、如何せん伏線が少ないからなー。あまりの変わりようにビックリした方も多いのでは。

 あとは…これは日本中を廻るというストーリーの都合上仕方のないことではあるんだけれど、『ペルソナ5』のコープキャラの出番がかなり少ない
 状況を見るに、どうやらこの世界では主人公がきちんと好感度を上げたおかげで各々の問題も解決しているようだ。それならば今どんな風に人生を送っているのか気になるところなのだが、残念ながら直接相見えることは叶わない。佐倉惣治郎(さくら そうじろう)には会えるんだけれどね。魅力的なだけに実に惜しい。

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☝ ということで、1年半越しの伏線(?)回収。ていうかこんだけの規模だと
シャドウワーカーが動きそうなもんなんだけどね。野暮なツッコミだけど。


 とまぁ、こんな具合でちゃんと『ペルソナ5』の延長線上のお話として怪盗団の活躍が見られたことはとても良かった。ここまで「続編」らしいストーリーを拝めるとは思わなかったからねぇ…ただ、これだけの内容で「前作(『ペルソナ5』)をやっていなくても楽しめる」かと言われると疑問。
 『P5S』を十分に楽しみたいならば、やはり怪盗団の軌跡はしっかりと追っておいた方がいいだろう。『ペルソナ5』、『P5R』、『P5A』が用意されているけれど、基本的にはどれでも大筋は把握できる(はず)のでお好みで。


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☝ あ、いや、違う。弁明させてくれ。
ワガハイはアン殿の眩しい表情を残しておきたかったのだが、
タイミングが悪くて次のカットがスクショされてしまったんだ。
決して疚しい気持ちがあったとかそういうんじゃねーからな!


 『P5S』のストーリーが分かった(?)上で、次からゲームシステムについて見ていきます。Part 2では日常パートを紹介。あなたの地元にも怪盗団が来てるかも?


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目次

・Part 1 (作品情報, ストーリー) ← いまここ
Part 2 (日常パートとか)
Part 3 (戦闘パートとか)
Part 4 (総括とあとがき)

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