見出し画像

Review-#008-A 『ペルソナ3 ダンシング・ムーンナイト』&『ペルソナ5 ダンシング・スターナイト』Part 1

お前らも踊るんかーい!


 ついにこの時がやってきた。2015年にPSVitaにて『ペルソナ4』の楽曲で踊り明かすリズムアクションゲーム『ペルソナ4 ダンシング・オールナイト』が発売され、そして2016年に発売された『ペルソナ5』にて新主人公の雨宮蓮にバトンタッチ、これにて8年間アトラスを守り続けてきた鋼のシスコン番長こと鳴上悠の活躍は一旦の終幕を迎えることとなった。
 まぁ2018年5月31日に『BLAZBLUE CROSS TAG BATTLE』が発売されたそうで、鳴上君はまだ休めそうにもないのだけれど。

 誰もが予測していた。今度は彼があらゆる分野に手を出す、いや出されてしまうことになるだろうと。鳴上悠はあの1年間の激闘に飽き足りることなく格ゲーやらパチンコやらクロスオーバーやら音ゲーやら引っ張りだこ、それは同じく波乱万丈の1年間を送った雨宮蓮も同じ運命を辿ることになるであろう。間もなくしてp5uやp5dといった何かを匂わせるドメインが登録されたことにより、予測は確信へと変わったのであった。

 そして2017年夏。横浜アリーナで催された"PERSONA SUPER LIVE P-SOUND BOMB !!!! 2017"にて衝撃の発表が行われたのであった。3つの新作、『ペルソナ5 ダンシング・スターナイト』、『ペルソナ3 ダンシング・ムーンナイト』、『ペルソナQ2 ニューシネマラビリンス』(発表当時は仮称)。
 驚いた。まずペルソナ5のスピンオフ作品ならば格ゲーが先に来るだろうとばかり思っていたのだ。まさか先に音ゲー、しかもしばらくご無沙汰であったペルソナ3も同時に発表されるとは。

 そういうわけで、2018年春に発売された『ペルソナ3 ダンシング・ムーンナイト』&『ペルソナ5 ダンシング・スターナイト』(以下『P3D』&『P5D』)のレビューをしていきます。丁度5ヶ月経ったね。発売後からしばらく続いた『P3D』や『P5D』のDLC更新も終わったことだし。今更感は何を今更な感じなので気にすることなく、DLCにも触れながら紹介しようかと思います。

 なおPS4版のオールスター・トリプルパック版を購入したので、特典としてPS4DL版の『ペルソナ4 ダンシング・オールナイト』(以下『P4D』)がついている。早い話がPSVitaの高画質版というところか。2本進めるのでさえ時間がかかるのに特典で1more喰らわすとはアトラスめ、味な真似をする。
 せっかくなので、この『P4D』も軽く(フラグ)紹介する。つまり今回は一挙3本立て。お得な記事ですよ皆さま。一体、何ページに分割することになるのやら…

--------------------------------------------------------------------------------------
 ということで、まずは原点の『P4D』PS4DL版について紹介します。というのも『P3D』も『P5D』も基本的なゲームシステムは『P4D』と変わらないからね。目次はこちらから。

・Part 1 (『P4D』PS4DL版レビュー) ←いまここ
Part 2 (『P3D』&『P5D』音ゲーパート)
Part 3 (『P3D』&『P5D』コミュパート)
Part 4 (総括とあとがき)

--------------------------------------------------------------------------------------
ペルソナ3 ダンシング・ムーンナイト
ペルソナ5 ダンシング・スターナイト (PS4/PSVita・2018年5月24日発売)

画像1

画像2

定価: 各通常版(パッケージ・ダウンロード共通)
    7,480円+税(PS4), 6,980円+税(PSVita)
    ペルソナダンシング オールスター・トリプルパック(PS4限定)
    16,880円+税
    ペルソナダンシング デラックス・ツインプラス(PSVita限定)
    15,780円+税
ジャンル:サウンドアクション
メーカー:アトラス

※PSVita版はCERO:B(12歳以上対象)、PS4版はCERO:C(15歳以上対象)。PS4版は一部モードにてPSVR対応。PS4版とPSVita版のクロスセーブ対応(ただしオールスター・トリプルパック特典の『ペルソナ4 ダンシング・オールナイト』はPSVita版とのクロスセーブは非対応)

<プロモーション映像>

<☟バンチョウモヨロシク... >ハイカラですね>
ペルソナ4 ダンシング・オールナイト (PSVita・2015年6月25日発売)

画像3

定価: 通常版(パッケージ・ダウンロード共通) 6,980円+税
    クレイジー・バリューパック 9,980円+税
    プレミアム・クレイジーボックス (限定PSVita本体同梱版)
    28,980円+税

--------------------------------------------------------------------------------------

※ネタバレについては公式がめっちゃ警告していますので皆さんもSNS上に大っぴらにネタバレしないように。「あの人」の「あのわかめ姿」でしかプレイできないようになっちゃうので、そっちのケだったとしても止めようね!


【サウンドアクション】音ゲー初心者でもとっつきやすいが…

 『P4D』,『P3D』,『P5D』のサウンドアクションは簡単に言うとシンプルな『maimai』である。『maimai』がどういう音ゲーなのかは各自ググってもらうとして、使うボタン・スティック数は上・左・下キーと△・○・×ボタン、あとスティック(キーコンフィグで変更可能)の7種。

 中央から飛んでくるマーカーが円状に並んでいる枠に重なったところでタイミング良く対応するボタンを押す、あるいはスティックを倒すという、よくある音ゲーである。
 ただ私はあんまり音ゲーに精通しているわけでもなく、『太鼓の達人』とか『初音ミク -Project DIVA-』作品に少し手を出しているぐらい。
 そうそう、『Project DIVA』の開発も行っていたディンゴ(2018年春に破産手続を開始)は本作でも開発に協力している。最初に『ペルソナ4 ダンシング・オールナイト』が発表されたときは『Project DIVA』に近いシステムだったが、なんやかんやで今の形に。『maimai』はプレイ経験がゼロなため、こういう形式の音ゲーはついていけるだろうか…とちょっと身構えてプレイした。

 後述するストーリーモードからまず手を出したが、一応難易度をNORMALに設定してスタート。実際にプレイしてみると、このゲームは初心者が投げ出したくなるような理不尽な難易度ではない。尤もNORMALなんだからもっと難易度の高いHARDやALL NIGHTと比べてノーツ数も少ないので当たり前ではあるのだが。
 先ほどスティックを使用すると書いたが、これは「スクラッチ」という円形のノーツに対応する。外してもコンボが途切れたりはしないのだが、当然決めればスコアに加算されるし、FEVERと書かれた特殊なスクラッチを複数回成功させることにより曲の盛り上がる部分でFEVERタイムに突入するので狙えるのならば狙っていきたい。

 音ゲーが苦手…というプレイヤーでも、「プレイカスタム」にてアイテムを使用することでゲージの増減に補正をかけたり、ボタンの区別を無くしたり…と救済措置があるため、有利なアイテムを使用するとスコアや獲得できるP$(ゲーム内通貨。プレイすることで報酬として獲得でき、アイテムの購入などに使用する)が減少してしまうデメリットが存在するものの、難しい譜面の楽曲にも挑戦しやすくなっている。
 アイテムには「ノーツが途中で現れる・消える・非表示になる」とか「速度が変わる」とか、より捌くのが難しくなるものもあり、これらを使用するとスコアやP$がいつもよりも多くもらえるので、慣れたプレイヤーや手ごたえを求める上級者は使ってみよう。「非表示」は本作のデザイン的にほぼほぼ記憶ゲーと化すか、他のアイテムと併用してのボタン連打ゴリ押しゲーになるが。その分P$が+800%になるので他のアイテムと併用してクリアしても稼げるのはかなりでかい。

画像4

↑ 番長もノリノリ。堂島さんとお揃いの服でレッツ・ダンシング!

 出てくるノーツの種類は、単体、ホールド(押し続ける)、ユニゾン(2つ同時押し)、スクラッチの4パターン。
 少なくとも他の音ゲーのように16分の連打が出るということはまず無いので、その辺はご安心を。といっても8分でも6+1ボタンで捌くのはそれなりに難しいし、BPMが速かったりリズムが複雑になると尚更である。

 そしてある程度慣れてくると、ノーツの配置には一定の法則があることが分かる。飛んでくるノーツの位置は直前のノーツと同じか、あるいは隣り合わせになっていることが多いのだ。小節の替わりで途切れるという例外もあるが、基本的には時計回りか反時計回りにノーツを捌いていくことになる。この法則を頭に入れておくと、ある程度難しくなっても全然手を付けられない、ということなく何とか対処できるようになる筈。本作のゲームシステムに慣れるか、アイテムを併用してプレイすれば、HARD以上の難易度でもパーフェクトはともかくクリアへの道が見えてくることだろう。

 ちょっと厄介なのがスクラッチで、スティックからボタンへの指の移動が大変かなぁと感じるがここはキーコンフィグでL・Rボタンにすれば使う指の数が増えるものの負担は少なくなると思われる。開発スタッフは持ち方によっては暴発しかねない、との理由で当初はスティック限定にしていたようだが、要望が多かったためパッチで変更可能にしたとのことである。PS4だとスティックが内側にあって指を動かしづらいしL1・R1の方がおすすめ。
 私見ではあるがPS4のコントローラーの方がプレイしやすいだろうね、これに限らず音ゲーする場合は。PSVitaは固いから、『太鼓の達人』とかをしようにもやりづらかったからなぁ…

 画面上にゲージがあり、これは盛り上がっている状況を示す。曲が終わるまでにノーツを捌いてノルマ以上の盛り上がりをキープすればクリア、逆にミスを連発して盛り上がりに欠くと曲の途中でも容赦なくゲームオーバーになってしまう。アイテムを使えば、途中でゲームオーバーにならず最後まで演奏することも可能だ。

画像5

↑ 全てのノート(およびスクラッチ)をGREAT以上で捌き切れれば「KING CRAZY!!!」という最高評価がもらえる。簡単になるアイテムを使ってプレイしても取得可能なので、惜しまずに使っていこう。

 さて、基本的なゲームシステムについてはある程度列挙したので、ここからは具体的な『P4D』の評価に移る。初めての音ゲーということもあってか、色々と慣れない部分が存在している。

 まず音ゲーの一番の要であろう選曲。オシャレな『ペルソナ4』の人気曲を概ね集めてきてはいるが、ボリュームとしては物足りなさを感じる。

 本作の特徴として、原曲そのままを収録したものもあれば、著名なアーティストによるリミックスバージョンを収録している曲もある。アトラスサウンドチームの小塚良太氏や、ペルソナシリーズではおなじみのLotus Juice氏、他にも浅倉大介氏、山岡晃氏、小室哲哉氏、大沢伸一氏、三宅優氏、Banvox氏などなど...このメンツはなかなかに凄いものである。

 リミックスバージョンについては好みが分かれてしまうというのは仕方がないとはいえ、全体的にクオリティが高め。むしろ大胆なアレンジを加えたことにより、サウンドアクション向けにマッチしている曲もある。個人的には『NOW I KNOW (Yuu Miyake Remix)』などがお気に入り。
 新曲は少ないが、テーマ曲である『Dance!』は他の例に漏れずとてもオシャレなサウンドに仕上がっている。

 …うん、新曲に関わらず、やっぱりボリュームが多くないのは否定できない。まずDLC曲を除くと、隠し曲を含めて全27曲。『太鼓の達人』のPS2版初代よりも少ない。ただ本作は1曲1曲が長いので、どちらかと言えば『初音ミク -Project DIVA-』のような作品としてとらえるべきだとは思うがそれでもPSP版の初代が39曲だったので、やっぱり少ないだろう。本作に一番近いのは…PSPの『アイドルマスター シャイニーフェスタ』だろうか。あっちは20曲(3バージョン+DLCを購入すると43曲)だったか。

 ただでさえ少ない27曲がさらに少なく感じる要因は「バージョン違い含めて」ということもあるだろう。特に『ペルソナ4』のOP曲である『Pursuing My True Self』は原曲+リミックスバージョン2曲と、バージョン違いが3曲収録されている。いくら何でも枠を取りすぎだ、と感じても仕方ない。他の曲もバージョン違いで2曲入っているものが多いため、ではこれらバージョン違いを抜きにしてもう一度数え直してみると19曲。うーん…。

 そもそも1楽曲あたりの尺が長い、というのは譬え曲自体が良質であってもゲームにおとし込んだ時プレイしづらい原因にもなる。ただでさえ相当の集中力を要する音ゲーで、1曲に3分も4分もかけるとなると大変である。
 ロングがあるのに越したことはないから、ショートバージョンも入れてみてはいかがだっただろうか。音ゲーが苦手でもサクサクと進めることが出来れば当然ポイントが高くなるし、ショートをプレイしてクリアするとロングを解禁できるという方法にすればモチベーションの向上につなげられたかもしれない。なんだったらショートとロングで別の曲として数え…ゲフンゲフン。

 DLCを入れると全40曲。こちらも既存曲のバージョン違いが存在しているが、それを差し引いても29曲。『Never More』などのデフォルトでは収録されていない曲や『P4A』や『P4GA』(『ペルソナ4』のアニメ化作品)の楽曲といった新曲が多いため曲数の改善は一応なされている…けれど、一部無料コンテンツを除き500円~900円。1,2曲入れるというには結構な額を要求される。
 ストーリーには関与しない新規キャラクターやアニメ・ライブ映像を含めてのお値段とはいえ、全曲を揃えようとすると5,000円。うーむ、いくらなんでも高いような気が。ちょっと安くなった音ゲーがもう1本買えてしまうぞ。

 DLCではセガ繫がりで初音ミクとのコラボレーションもある(といっても「Heaven feat. Hatsune Miku (ATLOS Remix)」の1曲だけなので出しゃばっている感はゼロ)。ペルソナシリーズのキャラクターデザインを担当する副島成記氏によるミクは新鮮である。

画像6

↑ 勿論、ただ出演しているだけでなくミク本人が歌うしダンス中のボイスも収録されている。800円で購入可能。

 ボリュームにフォローを入れるとするなら、本作の収録曲は『ペルソナ4』関連楽曲縛りが存在するということにある。
 当然ながら『太鼓の達人』やBEMANIシリーズに代表される有名な音ゲーのように何ら関連性のない版権曲を入れるというわけにはいかないし、『初音ミク』のようにそれに関連するアーティストや人気の高い曲の母数、というかそもそも楽曲自体がそれらと肩を並べられるほど多いわけでもない。音ゲーとの相性を考えることせず、無闇に曲を入れてボリュームを増やせば良い…ということはないので、この辺は已む無しだろう。

 以前『ゲームは1日飽きるまで!』で紹介した『太鼓の達人 セッションでドドンがドン!』は過去作の被りが多い割には琴線に触れる収録曲が(私の中では)少なかったから、結局様子見としてしまった。
 勿論、開発期間や版権曲にかかる費用などを考えれば過去作からの使いまわしが大きな問題になるわけではない。ゲームそのものはいつも通り安定の出来だし、被りが多い分有名な曲もたくさん入っているのでPS4で『太鼓の達人』を始めたい人や皆と知っている曲で楽しみたい人、選曲が自分好みであれば本作はおすすめできる作品だろう。
 ただかつて自分がプレイしたことのある重複曲(あるいは譜面)ばかりが目立って魅力的な新曲が少ないと感じた場合、その分割高感が強くなってしまうのである。それならば収録数が少なくても、自分の好みにマッチするサウンドの割合が大きい方が断然良いだろうと私は思うのだ。

 ここで同じPSVitaに出ている音ゲーをいくつかピックアップして収録曲数を比較してみよう。なお、ここでいうデフォルトとはDLCを購入せずに単体で遊べる曲を指す(つまり隠し曲もデフォルトに含めるということである)。

・太鼓の達人 Vバージョン(2015) : 86曲(デフォルト)+84曲(DLC) = 170曲
・IA/VT -COLORFUL-(2015) : 63曲(デフォルト)+19曲(DLC) = 82曲
・初音ミク -Project DIVA- F 2nd(2014) : 40曲(デフォルト)+1曲(チュートリアル曲)+6曲(AR/スタジオモード・エディット曲)+16曲(DLC) = 63曲
・アイドルマスターマストソングス 赤盤/青盤(2015): 40曲(共通)
・ミラクルガールズフェスティバル(2015) : 22曲(それぞれショートVer.とフルVer.が収録)
・うたの☆プリンスさまっ♪ MUSIC3(2016) : 33曲
・ハナヤマタ よさこいLIVE!(2014) : 8曲(尤もこのゲーム、音ゲーパートはおまけぐらいの要素だが…)

 うーん、ちょっと比較対象が少ないかな…。同じ携帯機繫がりということでPSPの音ゲーもいくらか取り上げることにしよう。

・ポップンミュージック ポータブル2(2011) : 85曲(デフォルト)+60曲(DLC) = 145曲
・太鼓の達人 ぽ~たぶるDX(2011) : 70曲(デフォルト)+110曲(DLC) = 180曲
・DJMAX Portable Hot Tunes(2010) : 64曲
・初音ミク -Project DIVA- 2nd(2010) : 46曲(デフォルト)+1曲(チュートリアル曲)+9曲(スタッフクレジット・エディット曲) = 56曲
・Megpoid the Music #(2013) : 30曲
・アイドルマスター シャイニーフェスタ ハニーサウンド/ファンキーノート/グルーヴィーチューン(2012) : 20曲(各バージョン共通、内6曲は共通曲)+1曲(DLC) = 21曲(3バージョントータルで43曲)
・けいおん! 放課後ライブ!!(2010) : 19曲

 プレイしていないソフトもあるので数え間違いがある場合はご容赦願いたいが、何にせよキャラゲーの向きが強い程収録曲数は少なくなる傾向にあるようだ。『初音ミク』もキャラゲー要素を持ち合わせた所はあるけどね。それに同じボーカロイドで単発の『IA/VT -COLORFUL-』は何も入れなくても60曲以上遊べるし。
 ということで、『P4D』はストーリーモードもそうだが純粋な音ゲーとして見るのではなく、音楽やキャラクターを楽しむキャラゲーとして見た方が気持ちとしては良いかもしれない。

 …とは言ったものの、量より質といえどもやはり一定の量も必要であることを示した例であろう。人気曲は他にもあっただろうし、新曲だって好評だったんだから『ペルソナ4』の作風にマッチしてさえいればもっと増やしても何ら問題なかったんじゃないの。例えば『I'll Face Myself』なども収録できたのではないか? 残念ながらDLCでも収録されないまま終わってしまったが。ストーリーモードのシナリオに紐づけた新曲も入れようと思えばもっと入れられたと思う。

 他の要素も見て行こう。まずサウンドアクション自体だが、先述した「基本時計回り・反時計回りのノーツ配置」が初心者でも分かりやすいデザインとみなすか、爽快感に欠ける単調なデザインとみなすかで評価が変わってくるだろう。音ゲー第1作目ということもあり、最初から難しくし過ぎても敷居を高めてしまうだけだが。シンプルゆえに自分のテクニックが上達していることを感じやすいという見方もできるし。
 あとプレイ中、キャラクターの応援ボイスが混ざって気が散るかもしれないね。ボイスと曲のリズムがズレて演奏が崩れることもある。ここら辺はちゃんと設定でON/OFF切替ができるから、気になって仕方がない人は予め設定しておくべし。

 映像に溶け込んで、ノーツが見えにくいことがある。単体のノートが黄色なのに、映像の背景が黄色いことが多いため紛らわしい。ここは映像を暗くするように設定すれば見やすくなるので、まぁいいとして…タイミング判定の文字がその枠にでかでかとかぶさるので、詰まっている譜面だと「音ゲーは枠との重なりを見てボタンを押す」というタイプのプレイヤーには辛い仕様だろう。

 音ゲーなのでリズムに乗れば枠を強く意識せずともコンボを繋げることはそう難しくないが、本作のゲームシステムに慣れないうちは常に先を考えながらプレイするのは至難の業である。FEVERタイム以外ではGOOD以下の判定はコンボが途切れるため、クリアするならともかく高い評価("BRILLIANT!!"あるいは"KING CRAZY!!!")を目指すのが難しい理由の一つになっている。だからそう、折角のオシャレな演出が過剰な所為でプレイの妨げになってしまっているのである。

画像7

↑ 「Backside Of The (TV Lotus Juice Remix)」をプレイするとこんな感じ。
黄色い背景に黄色いノーツはナチュラルな演奏妨害だと思います。
実際にやってみると想像以上に視辛かったりするのよ、コレ。

 プレイするのであれば、まずはオートプレイ(パーフェクト鑑賞モード)機能を使って曲のリズムとノーツをしっかりと把握してから挑むことをおすすめする。せっかくの音ゲーだもの、視覚を鍛えて目押しで捌くだけではなく聴いて楽しめるようになればプレイする余裕も面白さも増すことだろう。サントラを購入するのも1つの手。
 まぁ、『太鼓の達人』にすっかり慣れた私にとっては複数レーンというだけでもノーツのタイミングが分かりにくいものであるが…。ひたすらプレイして曲のリズムと譜面を覚えることが重要だ。

 楽曲映像は「ダンシング」だから当然だけれど、主にキャラクターが躍るというもの。2011年にPS3で発売された同じアトラス製の『キャサリン』から受け継がれた、デフォルメされていない3Dモデルはとても良くできている。『ペルソナ5』でも使われている技術であり、PS4でプレイしていても遜色ないグラフィック。
 うん? プレイ中はノーツ捌きに集中しちゃうせいで全然踊っている所を見ている余裕がない? そういう人はオートプレイ機能を利用するか、振付レッスンモードを選択しましょう。自分も踊ってみたいなら後者をおすすめしますよ。

 コスチュームやアクセサリーが存在し、これを設定すると楽曲映像で違った姿で踊ってくれる。中にはシュールなものもあり、その状態で真面目に踊っているので余計にシュールさが増すことも。特定の服やアクセサリーを身につけて有利・不利になる要素が発生するということはなく、あくまでも自己満足の域を越えないがお楽しみの一要素である。トロコンには必須の要素なので、気が向いたらコスチュームをチェンジしてみよう。

画像8

↑ 何かのコラ画像ではなく、れっきとしたコスチューム&アクセサリー「時価ネットマスク」である。ランダムでコイツが出てきたときには失笑必至。

 DLCもある…が、無料コンテンツも存在するとはいえ全部購入するとコスチューム・アクセサリー合わせて8,600円。楽曲より高いのは1コスチュームセットに1,000円するものが意外と多いからである。あと人気動画制作者による追加ミュージックビデオが12種、各100円で販売されている。
 ということはDLCを全部揃えるとなると14,800円。ソフト本体と合わせて20,000円オーバーなのでコンプリートするならアトラスへのお布施だと思って購入しよう。ボリュームに直結する楽曲とは違って、ここら辺は完全に好みの問題だからなぁ。配信されているものは『ペルソナ4』本編の1シーンを思い起こさせるものから『ペルソナ3』の衣裳まで。ファンならば気になるコスチュームでいっぱいだ。

 ただちょっと勿体なく感じるのが、楽曲映像においてメインキャラクターが固定されるんだよね。FEVERタイムに登場するパートナーはクリアすることで選べるんだからどうせならこっちも…と言いたいけれど、キャラのイメージもあるし正解だったかもしれない。男らしい完二のダンスを女性陣がやるとなると違和感が半端なさそうだし。千枝はともかく。
 あとPERFECT判定を出しまくったから、ミスを連発したからといって特にダンス内容がガラっと変わるわけではない。せっかくのリアルタイムCGだがこちらから干渉できるのはコスチュームの違いやFEVERタイムに移行できるかどうか、後ろの観客の盛り上がり具合、そのぐらいである。「できたら良いのになぁ」と思う程度のことだから、気にならないのであれば問題として取り上げるまでもないだろう。

--------------------------------------------------------------------------------------

【ストーリーモード】良くも悪くも「絆」メインのお話

 ストーリーは『ペルソナ4』のシリーズ中一番後となる2012年9月~10月の出来事となっていて、番長も高校3年生。受験は大丈夫なのかい!? …大丈夫か。番長、生き字引だし。

 ストーリーモードでは、はじめに難易度選択がある。ビギナーとスタンダードの違いはよく分からないけれど、譜面難易度も設定ができる。EASYとNORMALの2つから選択可能で、クリアするだけだったらどちらを選んでも難しくないと思う。私は難易度スタンダード・譜面難易度NORMAL・全曲評価をKING CRAZY!!!(すべてのノート・スクラッチでGREAT以上の判定を出してフルコンボする)で通過という制約をつけてスタート。
 はじめのうちは標準的だけれど、進むにつれて8分連打・裏拍が混ざったりしてなかなかに指が忙しくなってくる。音ゲーのスキルがあまりない上に本作のゲームシステムも相俟って、結構骨が折れる…。なんでこんなことに(自滅)。

 で、本作では『P4U』(『ペルソナ4 ジ・アルティメット・イン・マヨナカアリーナ』)以上によく喋るし、よく考える。少なくとも『ペルソナ4』本編のような、プレイヤーに近い立場の鳴上君をイメージした状態でプレイすると肩透かしを喰らうだろう。このゲームにおける彼は、あらゆる関連作品を通じてプレイヤーから距離を置いた存在。ちょっと寂しいような気もするけど、そこは本作の特徴として割り切ろう。
 そもそもプレイヤー側の視点に立っているのだとしたら「鳴上 悠」なんて名前付きませんからね。『P4A』のスピンオフ作品といった方がしっくりくるのかな?

 本作のキーキャラクターである「真下かなみ」。実は『ペルソナ4』でも名前だけ登場していて、それによると「素朴で守ってあげたくなる感じのキャラ」とのこと。…ほう。
 これがいつものかなみん。おや、『P4A』でチラっと出ていたかなみんとは違う印象を受けますね。このキャラデザが決定版のデザインなのかな。

画像9

 で、これが「かなみんキッチン」のかなみん。

画像10

 …本当に同一人物かい? 名前が同じなだけじゃなくて??

 すっげー派手派手しくなったな、かなみん。かつての面影が全く感じられないっすよ。にしても『P5A』でもこのキャラでお茶の間に出てるってことは、路線変更して大当たりして人気冷めやらぬということですな。『ペルソナ5』は『ペルソナ4』から3年ぐらい経ってるので。

 今回の物語は「アイドル」。本編のパーティーメンバーである久慈川りせもアイドルであり、真下かなみは彼女の後輩にあたる。午前0時に起きるという、「マヨナカテレビ」に似た都市伝説がまことしやかに囁かれる。かなみが所属するアイドルグループ「かなみんキッチン」のメンバーも巻き込まれたらしく、りせは番長たちにSOS。八十稲羽での事件から数か月後…「自称特別捜査隊」が再結成、新たなる事件の解決に奔走する!

 …みたいな感じで繰り広げられる。今回は戦うのではなく踊って解決。音ゲーについてくるストーリーモードっていうのは…まぁ大体そんなもんでしょう。あんまりストーリー付きの音ゲーをやっていない、っていうかPS2版『太鼓の達人 ドカッ!と大盛り七代目』についてたアドベンチャーモード(アレはどっちかっていうと本作のようなストーリーメインのモードではないが…)以来なので大っぴらには言えないが、多少無茶苦茶でもいいとは思っている。
 だってペルソナ、元々そういうゲームじゃないもん。今までRPGや格ゲーといったジャンルで戦ってきた彼らだし、「音ゲーぐらいはっちゃけてもらってもいいかな」ぐらいの心意気でプレイした。

 フリープレイは後回しにしてストーリーモードだけ進め、私の場合クリア時間は14時間。いやまぁ、制約をわざわざ自分で作った結果何度もやり直しまくって時間がかかってしまったパートもあるのだが、そのロスタイムをざっと差っ引くと9時間。「やり直し回数多くね?」という突っ込みは置いといて、それなりにあるじゃないか。ていうか、「Time to Make History(AKIRA YAMAOKA Remix)」のKING CRAZY!!!で1時間以上やり直してたので…。
 STAGE CLEAR!あるいはBRILLIANT!!で妥協すれば何のことはなくサクサクと進められたのにね。フルボイスでの掛け合いもたっぷりあるから、この辺のボリュームは充分だと思います。

 ただし、本作の場合は手放しに褒められないトコロ含めてのボリュームなのよね。ストーリーモードはアドベンチャー形式でストーリーを読み進めていって、途中で音ゲーが挟まれる感じ。ようやく1パート終わったかと思ったら、まだテキストあるの? という具合に、ダレやすいのが難点。んで、音ゲーパートも1曲あたりが長いから冗長な感じがする。むぅ…バランスはお世辞にも良いとは言えない。

 しかし、クマ演じる山口勝平さんは大変だなぁ。結構無理してクマの声を出してるところも多いんじゃないんですかね。
 みんな大好き奈々子ちゃんと堂島さんも登場しますよ。みんなの期待に応えてか、本作の奈々子ちゃん押しが凄い。やりすぎなぐらいに凄い。
 ななこおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!(お約束)
 今となっては堂島さんの一言一言が心にずっしりと来ます。改めて堂島さんを演じた石塚運昇さんに、この場を借りて感謝を。

画像11

↑ 堂島さん…あんたはカッコいい叔父さんだったよ。
センスはハイカラだけど。

 お話の内容としては…端的にまとめれば、


 "絆"


 極まれりです。うん。実際番長だって他者との絆があったからこそ、あの1年間を乗り切れたわけだしね。『P4D』に行き着くまで色んなことがあったから、彼らにとっては「絆」がどれだけ心強いかを理解している。
 ストーリー全体としては無難な出来といった感じ。音ゲーのシナリオなのもあって本編ほど奥が深い事件というわけではない。「かなみんキッチン」のメンバーはかなみんの他に4人いて、ストーリーではそれぞれを助けることになるのだが毎度の展開である。4人とも同じ流れ。4回続けて同じパターンは逆に安心するわ。もうちょい経緯にひねりのあるメンバーが一人でも居れば良かったんだが。

 最終的には事件も無事解決して大団円なんだけれど、現実の方の問題のまとめ方がちょっと雑じゃない? ストーリー的にはそうするのが無難なんだろうが…。まぁでも、筋書きはシンプルとはいえ意外と伏線回収&どんでん返しがあったりして、思った以上に楽しめました。
 かなみの変貌っぷり以外特に過去の作品と大きくかかわるような設定はないので、破綻しているとか矛盾しているとか、そういう致命的なミスはない分これでよかったと思う。 ただ無気力症の話を出すんだったら、余計に『ペルソナ3』のメンバーが出てきてほしかったとも思ってしまう。おいシャドウワーカー、お前らの出番やで。あんまり『P4U』『P4U2』絡みの話が出てないから、あくまでも『ペルソナ4』のキャラクターで完結したかったのかな。

 「かなみんキッチン」のメンバーは最初の自己紹介で面食らったけれど、読み進めていくとイイ子たちです。しかし星の数ほどいるアイドル、差別化は必要とてそういう売り込み方でブレイクするとは…人の世というのは分からんもんだなぁ。

 もともと本編で綺麗に終わった作品だと思うので、どうしても関連作による後日談とか舞台裏とかのエピソードが蛇足に感じてしまうかもしれない。ただ本作が音ゲーというジャンルであり「真下かなみ」という、それまで名前とチラ見せ程度の存在でしかなかったキャラクターが表立っているシナリオとして見れば、満足とはいかなくても面白いと思える部分があるんじゃないでしょうか。『ペルソナ4』を全然知らない人がいきなりこのゲームに入るということは考えにくいので、これから始めるならばゲーム本編、あるいは『P4A』を視聴してからのプレイを強く推奨します。

**********************************************************************************

 …で、肝心のPS4DL版ではどうかと言うと「高画質になったこと以外は概ね変わらない」。高画質・デカい画面で遊べるというところがいいところ(?)なんだけれど3年経ったからって別にクレイジー・バリューパックみたく2,200円相当のDLCが初めから付いてくるわけじゃない。後で触れる『P3D』や『P5D』の改善点・追加要素を盛り込んでくるということもない。そもそもこれは"特典"なのでそういったものがあればラッキー、ぐらいに思っていたから「それ自体」はマイナスにはならないが。過度な期待は禁物ということで、そこんとこはよろしく。

 ていうか「PS4用ソフト『P4D』(DL専用)では、PSVita用『P4D』でご購入いただいたDLCをご使用いただける予定です。」という公式サイトの文言。発売前、この『P4D』DL版の情報があまりにも少なかったため「PSVita版を持ってない私みたいな人がDLCを購入したい時はどうするの?」って思ったのだが…あ、しっかりとPS4版との互換性を持たせているのね。良かった。

 ま、PSVita版のものと同じだから価格も据え置きだけどね! 一応PSVita版で購入していればこちらのDLCは無料で…とはいかなかったみたいだけれど10円で手に入るみたい(無料だと景品表示法で「顧客誘引の手段」として引っ掛かるため、だそうだ。法律なら仕方ないね)。クロスセーブ非対応なのでイチからやり直しなのは大変だろうけど…。

 人によりけりだけれど、大きい画面でやるということは本作のゲームデザイン上それだけ視野を広げてプレイすることを強いられている可能性もある。特にせわしないHARDやALL NIGHT譜面の場合では、一方向にのみ気を取られて別方向に飛ぶノーツを見落とすこともあるかもしれない。実際私もそうだったから。
 レーンが特定の場所に集中して固まっていたり、あるいは位置が変化するが詰まっている部分は同じ方向へノーツが飛ぶため追いやすい他の音ゲーと比較すると、外周に向かって中央からノーツが飛ぶ本作は、少なくともPSVitaでプレイする以上に見る範囲が広くなる。部屋を明るくし画面からできるだけ離れて遊ぶという、健康的なプレイスタイルがひょっとしたら有難く思えることだろう(適当)。でも離れると『P4D』の場合、スクラッチ・ノートが視辛い…。

 あと個人的な事情だけれど、いつも使っている画面設定だと画面下が見切れる。PS4の表示サイズ設定でも変わらなくて、久しぶりに画面設定変更したよ。もしかしたら皆さんのテレビでも同じ現象が起こるかもしれないので、そこは注意してください。

 そういうわけで本作を語る上で、ボリュームが真っ先に挙げられるポイントである。選曲自体は良好なものの、収録曲数が一般の音ゲー未満となってしまった点は心残りとなるだろうし、PSVita版の話ではあるがこれに6,980円という価格が見合ってるとは言い難いのが残念な部分ではある。
 PS4DL版もこれから始める人は、DLCは別で購入しなければ遊べないので結局それ単体ではボリューム不足であることからは逃れられないようだ。実質2,000円以下で遊べることを考えれば妥当ではあるが、トリプルパック購入+『P3D』&『P5D』のDLC購入予定の上に14,800円のDLCはいくらなんでもお財布に厳しいっすよアトラスさん。現実はプリンパをかけてもお金を落としてくれる悪魔はいないんですから。『ペルソナ5』ではめっちゃお世話になったけど。あーあ、私もペルソナ使いになってメメントスに潜りたい。

 とはいえ『ペルソナ3』から続く、オシャレを意識した楽曲で音ゲーを楽しめるというのは本作の強力なチャームポイントでもある。大量にあるDLCについては阿漕さが否めないものの、好みの領域ということもあり、余裕があれば購入してもいいんじゃないぐらいのレベルで収まっている。純粋な音ゲーとして楽しむとなるとどうしても収録曲の少なさにひっかかってしまうが、『ペルソナ4』が好き、楽曲が好きという人ならば楽しめる作品であると思う。

 PS4DL版は限定版のみの配信であり、一般販売の予定はないとのこと。でもちゃっかりPS4版のDLCを売り込んでいることだし、普通に販売してもいいと思うんだがなぁ…。PS4で『P3D』や『P5D』を遊びたい、だけど『P4D』はまだプレイしたことがないというのであれば、お早めに購入を検討してみてはいかがだろうか。

--------------------------------------------------------------------------------------

 はい、これにて『P4D』のレビューはおしまいです。判定を付けましたが、それについては後回し。ようやくタイトルの『P3D』と『P5D』について書けますね。自分からやっておいて何だよ、とは思うけれど。
 『P4D』から3年近く経過しての発売となりましたが、果たしてどんな作品になっているのか…。Part 2から2作をじっくり見ていくことにしましょう。


©ATLUS ©SEGA All rights reserved.
©CFM