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#134 エキゾチックジャポニカ米

 まだまだ収穫期には程遠いけれども、新米が気になりはじめている今日この頃です。東京オリンピックの方は過去最多の金メダル枚数を獲得して終了したわけですが、台風は引き続き発生しては日本に近づいてくるし、コロナだって収まるどころか感染者数が増えていますのでね。
 油断も隙も何も、はじめからあったものじゃない。美味しいお米が実ることを期待したいです。

 で、まぁなんでこんなテーマにしたのかというと、発売からそろそろ9ヶ月も経つというこのタイミングで『天穂のサクナヒメ』をようやくクリアしたから、なんですね。遅ぇよ。少なくとも2,3年以上待っていた人間の進行ペースではないよ。
 クリアまでの時間はそこまで長く要求されるわけでもないし、FF15みたく先に進むことを惜しんでフィールドをほっつき歩いていたわけでもないのにね。ちなみにトロフィー獲得率はクリア段階で50%。

 それはそれとして、クリアした段階でのちょっとした所感とかその他もろもろとか。「米」に関する話題で、1本記事を上げてみようと思います。


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 思えば『サクナヒメ』はBitSummit2018で発表された時から何となく気になっていたタイトルでした。改めて見返してみるとアクションパートの映像の方が割合としては長めなんだけれども、とにもかくにも惹かれた理由は稲作パートにありまして。
 言うまでもなく日頃お世話になっているお米。あくまでもゲームの中だけの話ではありますが、自分の田んぼが持てるって素敵なことだし、そうした所に注力されている作品ってなかなかないじゃないですか。

 いきなり話が飛びますけども、ショートショートの名士、星新一氏の作品に『高度な文明』というのがあって、締めくくりの台詞が個人的には好きなんですよね。

「(前略)きみに一本のマッチが作れるか。ぼくも時計の修理ひとつできない。テレビの原理を知っている人が、どれだけいる。文明とは、そういうものなのだろうな」

 「豊かさ」というものがどのように成り立っているのか、ということを言い表していると思います。飽食の時代と呼ばれる現在にて、何かの映えを狙ったかどうかは知らないが寿司屋に来てシャリを残してネタだけ食している奴とか。刺身喰えや。自分は農家ではありませんが、心が痛みます。

 だから──このゲームをやれば食べ物の有難みが分かるはずだ、などと差し出がましい御託を述べるつもりもなければ、そもそもこの作品自体それを狙って作られたものでもないだろうけれど、ともかく普段自分が体験できそうにもない世界をゲームに落とし込んだのは純粋に面白そうだな、という気持ちでリリースを待ち望んでいたわけです。
 『Wattam』よりに先に出るかな、と思ったら『Wattam』の方が先に出たけどな! 今年は『クーロンズリゾーム』? 先月から公式ツイッター更新してないけど、進捗の程はどうなってるんだろう。


 話を戻して。気がつけばあれよあれよと知名度を上げて、同日発売のPS5よりも話題が流れていたんじゃないのとも思えた本作。注目の稲作については、期待に応える出来でしたね。

 昔、小学校でやった社会の勉強ぐらいの知識しか備えていない自分だったのですが、やっぱり難しい。田植えの時の嫌らしいカメラワークとそれに伴うサクナの挙動はさておき、キレイに植えること以上に重要なのは1年を通じてどのように田んぼの世話をするかなので、毎年毎年の試行錯誤が楽しい要因でもあります。
 例えば害虫対策ひとつにしても、やらなければ色んな虫やら草やらが大繁殖して良くないですが、かといって早い段階からマメにやりすぎるのも、益虫が増えずに却って害虫(稲苞虫)が増えてしまうことになってしまう。仕掛けるタイミングが重要だし、益虫を呼び寄せる仕込みも大事。よくできていると思います。

 そんなこんなでたわわに実った稲を収穫する、この瞬間がたまりません。刈りながら色々と考えるわけですね。「今年は虫の発生を抑えられたな」とか、「ちょっと病気が目立ったから水と日光の管理方針を変えてみようか」とか。来年はもっと多く、特Aが狙えそうな(無論ゲーム内に食味ランキング機能は設けられていない)米を作ろう、なんてモチベーションが芽生えてくるわけです。

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☝山つったって見えねぇよ。お前の作った稲で。

 進行具合に沿って道具がどんどん便利なものになっていくので、文明ってスバらしいと常々思います。え、流石にココロワを以てしてもコンバインとかコイン精米機とかの類は無理? そっかぁ…。

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☝ 農作業中でも装備が反映されるので、「しまった、これじゃあサクナの顔が見えないじゃないか!」と思いながらスクショを撮ったのでした。
(設定で変更できることはこの時気付いていない)

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 他の人の「稲作パートの比率が高くて驚いた(思ってたんと違った)」という感想をチラホラ見かけますが、私は逆の感想です。逆。
 「稲作ゲームやりたかったからずっと待ってたし購入したの!」勢としては、むしろアクションパートの比率が結構あって驚きました。いやまあ和風アクションRPGだしね。そりゃあね。

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☝ クリア時のステータス。大体7,8年ぐらい稲作やってから
ラスボスに挑んだかな。食事バフをガン積みして挑むのがオススメです。

 心が折れるほど難しくはないです。アクションが下手っぴな私でも難易度「標準」で最後まで通せたので、初心者でもエンディングを迎えられること自体は出来るのではないかと。
 中盤からは武技(スキル)「登鯉」を使っておけば、道中の相手は殲滅できるのでね…。勿論何度でも続けて打ち込めるわけではありませんが、熟練度を上げれば攻撃範囲が広がりますので、入手次第ガンガン使って早期に強化していって損はありませんよ。大味なことに違いはないけど、一気になぎ倒せる爽快感はあるし。

 というか、敵の出現数が増えて「身動きが取れない」&「一方だけ相手にしていると背後から横やりを入れられる」といった事情があるので、「レベル(登鯉を修得するために必要な米の格および登鯉の熟練度)を上げて物理(登鯉)で殴ればいい」に落ち着いてしまっているところはあります。アップデートで調整が入ったらしいですが、それでもこの評価ですからね。

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☝ 青い弾のようなものが「登鯉」。被弾して打ち上がった敵に対して
吹き飛ばし攻撃で繋げると良い感じのコンボに。

 まあ、一部武技がお手軽ではあるものの、色々組み合わせてコンボを決めると楽しいですよ。熟練度を上げることで使用感が変わったものもあります。しっかり稲作で基礎ステータスを上げながら攻略すれば、道中の敵で詰むことはあまり無いでしょう。
 それよりも地形ダメージの方がよっぽど辛かった。毒は食事や装備でどうにかなるとして、トゲっちょが。しかもプレイヤー心理を見抜いたかのような絶妙な配置。もう嫌だ、しばらく見たくない。

 ダンジョンには所々、羽衣を使ってトゲ地帯を回避するエリアがあるのですが、ここがもう本当に嫌すぎて。羽衣を狙った方向に射出するのもそうですが、掴んだ! …と思ったら掴めてない時がしばしばあって。んで結局、そのままトゲの上に着地。何度かチャレンジして、その度にダメージが蓄積していく。
 そんなんだったら「飛燕」を使った方が、少なくともどこかの方向に移動できるからそっちの方が有難いよ。

 敵が湧いて出て、しかも全部倒すまで先に進めないというエリアにも当たり前のようにトゲが置いてあって。製作者の意図としては、そこに敵をぶつけてダメージを与えよう、ということなのは分かる。
 分かるんだけども、サクナが当たっていたら世話ないがな。攻撃するたびに徐々に前進していって、その勢いでトゲに当たっとるんですわ。敵の攻撃を回避しようとして羽衣で後ろに回り込んだ勢いでも当たっとるんですわ。
カメラが追い付いてなくて、当たってからようやくトゲがあることに気付いたりするんですわ。避けきれるかこんなん!

 ただ本作が良心的なのは、自動回復が間に合わず、そのまま神がお陀仏になったとしてもダンジョンに入った時点に引き戻されるだけだという点。だから死んじゃったとしても、ゲーム内時間が無駄になると心配しなくて大丈夫。嫌らしい配置をしたトゲも「あ、これ最後まで通せそうにないわ」と悟った際の効率的な自殺用オブジェクトになるなった。
 下手な雑魚敵より、下手な死にゲーより、トラップで死にまくれるダンジョンが中盤から襲い掛かって来るので、これから始めようとする方はその点注意ね。分かってても死ぬ。そのぐらい巧妙な配置。多分誉め言葉だと思う。


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 総括としては…独特のプレイフィールが良くも悪くも本作の特徴なのかなって。決して手を緩めてはくれない自然との対話、ほぼそのままをブッ込んで作られた稲作パートは、それを一番の楽しみにしていた自分としてはアタリもアタリの出来でした。難しいし、自信があったのにどこかしらで躓いてしまっている時もあるのだけれど、どのようにして問題に対処すべきかを手あたり次第試してみる、そんなシミュレートの面白さがあります。
 インディーであることを考えれば充分、というか想像以上のプレイ体験ができるゲームです。可愛いキャラで稲作をやりたいならばオススメ。

 ただ、意思疎通ができる人に対してはもうちっとフレンドリーであってもいいんじゃないの? と思う点もチラホラ。
 一番気になったのはUIかな。頻繁に使う要素で遠回りを要求されたり、1年の動きを決める肝心の初動で後戻りができなかったりするのが何だかなぁって感じです。派遣のためにわざわざマップに出る必要があったり、ダンジョンでリスポーンした際にセットした武技まで元に戻っちゃったり、田植え時に急に新しい植苗スキルが発動して変な植え方になっちゃったり、んでもってセーブデータが上書きされたら不本意だろうとそれで1年頑張れの流れになって気持ちが萎えちゃったり。

 楽しいけど惜しい。独特のクセは味にもなるけど配慮も欲しい。丁寧に作られていて良く出来ている所もあれば、調整不足な所も、むしろ何もしていない所もある。
 ただ、一番最後の「1年頑張れ」は頑張らなくても大丈夫だったりします。極端な話、種籾選別の段階から携わらなくても一定の期限が過ぎれば勝手にやってくれて、秋になれば実りますのでね。発売してから間もなく稲作の本格さが取り上げられて「このゲームはがちがちに稲作しないとダメなの?」と思った方もいるでしょうが、実際はそこまで真面目じゃなくても何とかなるというか。

 ストーリーはシンプルで王道的。中盤からプロットが走り幅跳びを始めて消化不良な点もあるけど、続編やスピンオフの色気があるっぽい。グラフィックは雰囲気が出ているし、BGMも○。ロードも短くて、あまり待たされることもなく快適。
 そこそこ人を選ぶところはありますが、人気になるだけの魅力があるゲームだと思います。実売100万本を突破しているらしいので、コレを読んでいる方の中には既にクリアどころかトロコンまで達成している人もいるかもしれませんが、ご飯派の皆さんは一度プレイしてみてはいかがでしょうか。

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☝ にゃーん。猫派の私は、帰宅するなり駆け寄ってくる犬コロを
ジャンプで往なしては縁側へと向かっていくのであった。

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 はあ、こんなことを書いていたらお腹が空きましたね。お米を食べよう。日本人ならばお茶漬け、と言うけれどここ最近全然食べてない。つーか今日はもう何にするか決めてあるんだ。夏野菜カレー。いつぞや作って写真を撮り忘れた時があったので、今日はそのリベンジをば。

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 チキンカレーをベースに素揚げ&揚げ焼きした馬鈴薯・パプリカ・茄子・ズッキーニを付け合わせ。つーかこの画像のブレブレ具合といったら。被写体じっとしているんだからもうちょい頑張れ。

 そういや、今年の実り具合はどうなんだ、とネットで検索するは「蒲原神社 お託宣 2021」。米の里新潟県にある蒲原神社にて毎年行われる神事であり、作柄の豊凶を占います。
 これが結構当たるのね。昨年は「五穀 七分八分の作 水あり」。平年並みといったところでしょうか。で、今年の結果を調べてみたら…ややっ、1件もヒットしない!
 え、やったんでしょお託宣? ニュース検索してみてもTwitterで検索してみてもカスりもしない。新聞社のWeb記事も、そもそも上げた痕跡が見当たらない。何? ひょっとして、あまりにもヤバい結果だったので出すには忍びないという判断で公表してないとか?

 ということで、今年のお託宣の内容をご存知の方、是非ご一報ください。今年も美味しいご飯にありつけるといいなぁ。