Review-#044 『2024年発売のゲームをクリアしたので所感を書く』
2作品だけでもお腹いっぱい。
クリアしました。『FINAL FANTASY VII REBIRTH』と『龍が如く8』。
発売日いつだったっけ。FF7RBが2/29で、龍8が1/26だったか。8ヶ月以上経っちゃった。
今年はね。1ヶ月以上ゲーム機触ってなかったという時期もありまして。ゲームに限らず色んなことに対する気力が低くなりがちで、仕事が終わった後は何もできないまま寝てしまう日もしばしばありました。
そして今年、今のところこの2本しか購入していません。クリアするまで他のゲームを積まない、と決めていたんです。決めたのはいいけど、そうこうしているうちに巷では2025年が近づいている感じ。巷では面白いゲームがどんどん出るというのに全然進んでいない。
なので腹を決めました。しっかりとMPを回復するぞ、と。そして腰を据えてゲームを楽しめるようにするぞ、と。ゲームはエンタメなんだから、義務感でやるもんじゃあない。それは一理あっても、適当に口実を付けて尻を叩かないと一向に進まないものもあるっちゃあある。
「この日はじっくりと遊ぶ日にしよう!」と予定を立てるようにしたところ、どちらも(寄り道しつつも)案外さっくりと進み、"ある意味ラストエリクサー症候群"(最終盤辺りでなんとなくクリアを迎えたくなくなり一旦放置してしまう現象)に罹ることなく、とうとうエンドロールを拝むことができました。何事も心の持ちようですね。
今回紹介する2本とも、(プレイスタイルは人それぞれであっても)じっくりと遊べる大ボリュームです。時間を掛けてクリアしてもなおやりこみ要素が残っていますし、8ヶ月経った今、他所でさんざ見た感想と同じ内容になりがちだとは思いますが、一旦ここまでに遊んでいて感じたことを書き留めておきます。
FINAL FANTASY VII REBIRTH
(PS5・2024年2月29日発売)
定価:9,878円(通常版)/11,501円(デラックスエディション)
(※ダウンロード版では前作『REMAKE INTERGRADE』と合わせて揃えられるツインパックが14,278円で販売中。こちらもデラックスエディションが用意されているほか、1,624円で通常盤からデラックスエディションにアップグレードすることも可能。パッケージ版からダウンロード版のアップグレードは不可)
ジャンル:RPG
メーカー:スクウェア・エニックス
<☟食欲の天使>
※原作『FF7』だとここまででDISC1です
発売当時はどん兵衛のCMが話題になりましたが、最近はコラボしてるわけでもないのにカップヌードル「豚骨ジェノバ」味でセフィロスっぽいPRをされて困惑していたFF7R公式。食べてないので分かりませんが豚骨なだけに濃厚らしいですよ。
しかし──ベクトルは全く異なりますが──濃厚さであれば『FF7 REBIRTH』は遥かに上回っているといえます。舞台のミッドガルにしても、ゲームシステムとしても閉塞感が否めなかった『FF7 REMAKE』。それから4年程経過してリリースされた『FF7RB』は、4年を費やしただけのことはある…というより、むしろこれを4年で出せたのが凄いと感じさせる力作でした。あ、開発期間は3年程? もっと凄ぇや。
ミッドガルを脱出し、色彩豊かなカームの街へ。そしてグラスランドエリアに出るとその解放感に驚かされます。オープンワールドではなく、物語の進行に合わせていくつかに分けられたエリアを探索していくという形式を取っていますが、本作ではそれで充分でしょう。狭すぎず、かといって持て余しもしない広さ。
本作のチョコボは非常に頼もしい。飛んだり登ったり、クラウド達だけでは進めない場所に向かうには欠かせない存在です。バトルなどで一旦降りることになってもしばらくは近くで待機しているので、またすぐに探索を再開できるのが地味に助かります。
各エリアははっきりと特徴が出ていて、NPCのガヤもさることながら、街の装飾や小物など1つ1つ取っても到底1人で1周ゲームを進める中じゃあ拾いきれないぐらいに細かく作られています。こういった要素は他人のプレイ動画を観ると新しい発見ができて楽しいかもしれませんね。
探索スポットはあれこれ用意されており(といっても、気が滅入るほど多くはなく挑戦しやすいボリューム)、ストーリーが進んだらまずはそれらを埋めにあちこちを廻ってみるのもいいし、程々にしてメインを進めたとしても支障なし。
みんな大好きミニゲームもメイン・サブ含めていっぱい収録されています。ただ、こっちはちょっとクドいなと思うぐらいには。
いやね。『FF16』では全然なくて寂しいなと感じたけれど、多けりゃいいってモンでもないと気付かされました。何事にも適量はある。ま、まぁ本編をクリアする上では難しくないor必須じゃないものもあるから。でもそのスルーするやつにも金払ってるわけでな。心情は分かる。ムキーってなったりしたもん。どっかしらで心の区切り付けないとやっていけないぞ。
操作しづらいのもあって。例えばゴールドソーサーで遊べる「シューティングコースター」はボタン配置が謎。□ボタン押しっぱで射撃が基本なのに、ボムが△で回復が○。押しづらいねん。L1とかR1とかに置くんじゃダメですか?
クイーンズ・ブラッドやチョコボレースなどガッツリ楽しめるミニゲームもあるだけに、出来のバラつき加減がチト気になるわな。次作ではもうちょい少なくしていいので、その分よりハマれる奴を用意してくれると嬉しい。
戦闘システムは『FF7R』の順当進化。通常攻撃でATBゲージを溜めて、状況に応じて魔法やアビリティ、アイテムを使って敵を倒していくのはいっしょ。
本作ではパーティーメンバーが増えて、10人…ではないけど十人十色のスタイルを駆使しつつ、パーティーの「連携」を意識しながら戦うっていうのがミソ。カップヌードルの話ではないです。
例えばクラウドとレッドXIIIの連携アクションに「ハウルスマッシュ」という技があるんだけれど、何かとリーダーに置きたくなるクラウドの「遠距離攻撃の手段に乏しい」という弱点をカバーできるんですね(一応単独でも回避からの斬撃を飛ばすことができるけど)。
連携アクションを使うと、そのペアのATBゲージも伸びる。防御や回避用のアクションも用意されているし、使用する際に相方が自分のところまでワープするものがあるので、位置取りの調整にも使える。
これとは別に「連携アビリティ」が存在して、ATBを使ったアクションで貯まる「連携ゲージ」を消費して発動できる強力な技が各ペアに2つずつ用意されています。敵のバースト時に使用することでバースト時間を延長できる(バーストしたらすぐ使うこと前提だけど)とか、リミット技のレベルを上昇させる効果があるものまで。
どちらか一方の連携ゲージが貯まっていればいいのではなく、双方とも一定以上貯まらなければ使えない。通常アビリティにはMP消費なしで攻撃魔法を発動できる便利なものがあるけれど、そうしたアビリティでは連携ゲージが貯まらない(通常魔法であれば貯まる)。まさにここぞという時の大技になっています。発動時の演出もとってもゴージャス。
要するに前作以上に、メンバーを切り替えながら攻撃したりコマンドを使用したりとアクション・リアルタイム要素が高まっているわけです。進行に応じて操作するメンバーが強制的に切り替わる場面が幾つかあって、「あ、このキャラこういう風に使うと強かったんだ」と気付くこともあります。パーティーで戦闘する醍醐味がアクション面でも活きている。『FF7R』3部作だけでなく他でも採用してもいいんじゃないかな、この戦闘システム。
忙しなくなってより一層難しいと感じるプレイヤーもいるでしょうけど、基本的にはできることが広がった分面白さも増してるって印象。連携アビリティには大分お世話になりました。特にラスボスはコレのおかげで、禁断のリミット技二度打ちができて無事倒せました。ありがとうスクエニ。
戦闘中のマテリアの付け替えは残念ながら本作でもでき~ず。実装が難しいのかな。システムがより複雑になってるしね。とはいえ、ロードがちょっと長かったっていうトコロ込みでの要望でもあった前作ほど気になるものでもないかも(バトルシミュレーターはそれでも手間だけど…)。
あ、でも「チェックポイントからやりなおす」とか「バトル前のフリーパートからやりなおす」を選択した時の虚無感は凄まじい。また…ここやるの? っていうね。ちゃんと確認しないお前が悪い? はい。
さて、気になるストーリー。分かっちゃあいたけど、総合的な評価は次回作に持ち越しかなあ。だって本作の本筋って大体が「黒マントを追い続けてるうちに、クラウドがだんだんおかしくなってくる」なんで。とはいえ道中が道中辛気臭いムードで進むわけではない。かなーり華やかに、にぎやかに舗装されています。もっと落ち着いた雰囲気にもできただろうに、そうするのではなくハイテンションで駆け抜けていく『FF7RB』。ちょっと抜けてるクラウドも健在です。
3部作の破の部分なだけに、単純に単体で評価するのは難しいって話。DISC1の最後、と言えばリメイク未プレイでもピンと来るのでしょうか。初見では混乱しそうな展開というか、演出については原作既プレイの人に目配せしている感が否めませんが、その感触こそが『FF7R』3部作の「運命」というテーマに繋がっているのだとも思います。
ある意味、絶対の自信が無くてはこういう風に展開はしないだろう、だからこういった形で出すことができるんだろうと。よっぽどのことが無ければスッキリ終われると信じますけどね…。
シンプルなストーリーラインで進めてきたが故に、最終盤になって困惑した人もいるかもしれませんね。先の展開がとにかく気になってます。「多分こうなんだろうか…」と予想をしてみても、イマイチ定まらない。嗚呼次回作が待ち遠しい。
クリア時のスクショ。
いやあ凄かった。『FF7R』から色んな要素をパワーアップさせて世に出た『FF7RB』がこんなんだもん、「3部作は全部出てからやることにするよ」と仰ってる皆さん、いざ3部作イッキにやろうとすると200~300時間ぐらい掛かると思うよ。大丈夫すか。収集物にあまり精を出さずに進めたとしても100時間超えじゃないかな?
マジで「興味ないね」ってんでなければ、今やった方がいいと思います。セフィロスも言ってましたが本当に今のうちですからね。楽しみましょう。
龍が如く8
(PS5/PS4/XSX|S/One/Windows/Steam・2024年1月26日発売)
定価:9,680円(通常版)/10,780円(デラックスエディション)/12,760円(アルティメットエディション)
ジャンル:ドラマティックRPG
メーカー:セガ
<☟一狩り行く前に人狩りしようぜ、な外伝は2025年2月21日発売予定>
一度栄えし者でも必ずや衰えゆく
クリアタイム、133時間。133時間!?
自分でもビックリした。先述の通りやりこみ要素が残っている上でのコレなんで。『FF7RB』と合わせて2万円弱でここまで遊べるのは贅沢。
シリーズ最高傑作と開発者が自負する『龍が如く8』。実際どうかという問いかけに対し、私は「そうとも言えるし、そうでもないとも言える」と、まあ、うん。すごい玉虫色の回答になるんですけど。
まずは褒めましょう。ゲームとしては本当にガチでじっくりと遊べる出来です。
バトルシステムは『7』から引き続きコマンドRPGを採用。まあ『7』のソレがあまりにも穴ポコが空きすぎていて埋め放題な状態だったとも言えますが、目覚ましい改善を得ています。
純粋にできることが増えたし、できる範囲も広がったのが特徴です。近接攻撃や一部の極技には敵の吹き飛ばし効果があり、吹き飛ばした先に別の敵がいればその敵にもダメージが入り、爆発物などがあれば追加ダメージ+状態異常のチャンスも。「どの位置からどの方向に吹き飛ばすか」、ビリヤードやボウリングの要領で攻撃の仕方を考えるのが楽しい。空間の概念があるRPGとして磨きが掛かっています。
置かれている(落ちている)モノを拾って攻撃することも断然やりやすくなりました。属性が付与されている(爆発物であれば火属性みたいに)ものもあり、極技や装備が充実していなくても弱点が突けたりもする。拾って攻撃するかどうかボタンを押しながらで切り替えられるようにできたら尚良かったんですけどね。通常攻撃で吹き飛ばしたい時もあるので。
無論、テンポが改善しきれていないとか、移動時のハマりが解消できてないとか、一部の極技がお手軽すぎるとか、気になる部分は残っています。テンポとの両立ができないならジャストアクション(ガード含めて)は廃止してくれて構わないとさえ思ってる。そこは次回作に期待かな。
そして色々と危ないスジモン要素。前作では図鑑を埋める程度の扱いだった彼らは、『8』ではより本筋に絡める形でパワーアップ。倒すと一定確率(レイドでは確定)でスジモンゲットのチャンス到来、スジモンを集めて育てて進化させて3vs3バトルで勝ち上がる(ムシキングって言ってる人いるけどメザスタの方が近いよねぇ?)、ドンドコ島に連れて行ってポケ…ならぬスジパルレ、さらには通常のバトルでも召喚して攻撃させたり、とやりたい放題。
でもここまでやっただけのことはあって、前作ではちょっと億劫だったバトルがすげー楽しくなった。クリアタイム133時間の要因に間違いなく入ってる。格下相手であれば戦闘を即終了させられる(し、場合によってはスジモンを捕まえることもできる)クイックバトルの実装もあって、自分から戦闘を仕掛けにいくモチベーションがガッと上がったんですね。レイドバトルが発生していれば、目的地に行くついでにスジモンをシバいて仲間にしよう…って具合に。
そういうこともあり、「こっから敵のレベル上がるのでレベリングと装備集めしておいてね」という古のゲームバランス調整が2024年にもなって存在しているのですが、私の場合レベリングを意識してプレイした時間はそこまで長くなかった。スジモンと戯れているうちに勝手に上がっていったので。
一番意識したのは終盤も終盤、ハン・ジュンギのジョブランク上げをしてる時かな。お前加入遅すぎんだよ! 元々パーティ入りさせる予定が無かったらしいけど、本作ではジョブ継承技の枠を解放するのに絆レベルを上げる必要があるので、色んな場所をグルグルと回りながらどうにかLv.50ぐらいまで到達させました。食洗器回す方がずっと楽や。
寄り道要素も充実。本作のメイン舞台であるハワイ・ホノルルシティの広々としたマップに、スジモン要素含め沢山のプレイスポットや施設が散りばめられています。この辺はゲームトレイラーを見てもらうのが良いかな。
広いマップだけどセグウェイのおかげで移動が苦にならない。なんで『FF7RB』と被るねん。次回作も実装してくれるなら、乗りながらでもアイテムを拾えたり道行く人に声を掛けられたりできてほしいな。一旦降りないとそれらが行えないのはシンプルに手間なので。
ドンドコ島も本編そっちのけでついついやり込んでしまった。単純なんだけど楽しい。客を呼び集めるために、結局大資本の恩恵に預かることになるのは皮肉なんでしょうか…。
程良くバカバカしさと人情味のあるサブストーリーも楽しい。あと本作でも修羅場が存在する。クリア時点ではまだ拝めていないので、これから頑張って進展させます。頑張ることかな?
で、メインシナリオなんですけど…つまらないわけではないんです。ただ、色んなところで妙に引っ掛かる。愚痴〳〵と書き連ねますがご容赦を。
終盤が駆け足、説明不足だという声は聞きますが、序盤から「?」となるシーンが目に付きます。例えば一番が紗栄子に恋愛感情を持っていたこととか。そりゃあ『7』では修羅場になるぐらいに親睦を深めましたが、本編ではあくまでもダチの関係性だと思っていたので。初耳通り越して寝耳に水。
その辺はお話の中で掘り下げてくれるのかなと思ったら、本作ほとんど別行動でガクッとなった。無理に恋の話を入れなくても良かった気がする。『8』じゃなくて『9』以降でやるでも良かった気がする…。
経緯が謎といえば桐生一馬もそう。『7』だと春日一行とはほんの僅かな時間の付き合いでしかなかったはずの彼が、『8』ではどういうことか皆から「桐生さん」呼びされてるの、マジで何故だ。名を消せてないどころか逆に周知されてんのワケ分からん。仮にファンの一人に成り果てたソンヒから聞いたとしよう、でも所構わず「桐生さん」呼びは不用意が過ぎるでしょ。
なんで一番は桐生の舎弟みたいになってんだ。なんで皆そこまで打ち解け合っているんだ。4年の間に何があった。私を置いてけぼりにするな。で、これも結局分からずじまいでした。癌の方はわざわざご丁寧な理由付けをしている癖に、こっちがいい加減なのはいかがなものかと。
一番がハワイで出逢った新たな仲間。別にパーティ入りの段階でそこまで好感度が上がっていなくてもいいんですよ。井口理演じるエリック・トミザワは可もなく不可もなく。ナンバと比べるとインパクトは弱いとは感じるけど。演技はやや拙いですが収録中に向上したんだなと実感させられるのもあってかそこまで気にならない。上には上(?)がいるのもあって。
不二宮千歳はなぁ…。本当にパーティ入りする程なの? という疑念を払拭できないまま自ら株を下げに行ってた人。彼女の正体が明らかになった辺りから、ムービーで一旦ポーズを掛けることが多くなりました。モヤモヤしてあまり楽しめてない時の傾向です。死体が転がってるところでの告白(恋愛方面じゃないよ)はサイコの所業かと思った。
『龍が如く』シリーズファンにこの役を演じさせるの凄いよ。いい意味ではなく。イイコちゃんである必要はないけど、それをひとつの魅力として受け止められるだけの描写は無かったなって印象です。
他の新キャラ、特に悪役も総じて今一つ。ほとんどが小物。圧倒的小物。本作、一番と桐生のダブル主人公にした弊害とも言えますが掘り下げもそうだし、出演時間が全く足りてません。ハワイのマフィアであるドワイトもウォンも、強面と見せかけて登場からあまり時間が経たない内にあっさり底が見えて最早「経験値の足しにもならないカス」…は言い過ぎか。しっかりと経験値は貰ってるし。
ラスボスと呼べる悪役一番と桐生に1人ずつ用意されていますが、どちらもパンチが弱い気がして。パーソナリティの半分以上は戦闘前のぼっ立ちの長演説で明かされる。『0』とかも同じ感じだったけどさぁ…。
桐生側のラスボス…いっか、長谷川博己演じる海老名正孝の方は一応筋は通ってこそいるものの(演技もお見事)、動向についてはもっと目立たせてほしかった。ぶん殴ってでも止める、という気持ちも一層増しただろうに。
あ、成田凌演じる三田村英二。何事も唐突でコメントに困る。「その呼び方、やめてもらえます?」かな。一番共感したの。
異世界おじさん山井豊は…テラ子安が8~9割方担ってた気がする。
それと本作でも登場する沢城丈。星野会長をハジいてるとはいえ、ナンバや紗栄子があそこまで悪し様に言うのは不自然じゃないかなぁ。
そもそもの本筋。「一番が母の"荒川茜"に会いに行く」というところから察してはいたけれど、闇の深い方へとにかく突っ込んでいくだけの動機に欠けているのと、その闇自体もスケールが大きく感じられなかったって印象。春日や桐生は分かるけど、トミーに足立さん、紗栄子などは積極的に関わっていく理由がないんじゃない…? まあ「仲間だから助けない理由なんてない」ということなんでしょうか。
キーキャラクターのはずのラニについて全く人となりが分からないのも動機に欠けている理由の一つかも。「茜さんが必死に守ろうとした子を守らない理由なんてない」…にしてももうちょい存在感出してくれ。
RPGの至上命題ともいえる「続編で主人公をどうレベルリセットさせるか」に貢献した暴露系VTuberの多々良ひそか。YouTubeはあまり観ないんだけど、暴露系って本当にこういう感じなんですかね…。春日たちを追い込ませる映像(音声もあるよ!)をホイホイと入手できているのは都合が良すぎるように思えます。
彼女の台頭もそうなんだけど、民衆の治安と民度がグンバツに悪くて苦笑い。ヤクザについてのアレコレが一般教養みたくなってる龍が如くワールドでは野暮かもしれないが、警察仕事して?
そして本作を取り巻く「後始末」の話。大解散の後も残る極道たちをどうするか。核廃棄物をどうするかという現実問題ともリンクさせた形ですが、回りくどい…というか陰湿めいた方法で結び付けたな~という感じ。
結果的に、どうにかしようとしたモノへの課題は残されたまま。簡単には解決できないでしょうし、だいいち解消されるものではないことかもしれない。組織という枠組みは在るだけでも大きな意義を持つものですから。そこは今後のシリーズでも物語の発端になり続けるんでしょうね。
これまでのシリーズにも引っ掛かりのある描写はありました。前作の『7』もそう。ミラーフェイスというご都合主義の象徴みたいな人物といつの間にか協力関係になって荒川真斗をハメていたとかね。でも締めるところはキッチリと締めてくれる。だから後々振り返ってみて、なんだかんだ言ってあのシーンは良かったねと思える熱さがある。それがこのシリーズの強みなんだと考えています。
『8』でそうならなかった要因。一番は春日一番への違和感かもしれません。大切な人、信じたい人と真剣に向き合える強い心の持ち主。EDUが低くてもINTは高く、物怖じすることなくキレた頭とよく回る口で立ち向かう。『7』を遊んでいてそんな一番が好きになったし、『8』ではどんな風に困難を乗り越えていくのか楽しみだったんです。
が、なんか違う。お人好しなのは確かに彼の一面ではあるし、どんなに悪いことをしていても大切だと思える相手を途中で突き放さないのもそう。でも『8』の一番に抱いた感情は「気味が悪い」。
真剣だから、本気で怒るし、本気で叱りもする。『7』のラストで、演技も相俟って何度も見返したくなった一番は、ハワイにはいない。舞台装置的に本筋に関わっているのもあって、「そうしないと話が進まないから赦してる」ように見える。
一番が「これでチャラだ」と言っても、「私はまだあんまりチャラにできてないんですけど!?」と、前作ではあまり感じなかった温度差が生まれてしまった。「春日がそう言うならまあ…」という一種の信頼を含めての言葉は、一種の妥協の言葉へと変わってしまった。
本作、どれだけ頑張ってみても相手に出し抜かれて状況がどんどん悪化していくというシーンが多かったのもあって、春日編のシナリオの爽快感が搔き消されているなぁと思った。なので桐生編こそが『8』の真骨頂ってことなんでしょう。最後に戦うのも桐生だしね。でも、そこもモヤモヤしちゃう。
残された時間の中で少しずつ埋められていくエンディングノート。桐生が手放そうとしたものを、拾い集めていく物語。ご無沙汰だった人物との思わぬ再会。これまでのシリーズに少しでも触れたことのあるプレイヤーであれば、それぞれのシーンはたまらないものとなるはず。一部老けてないキャラがいる、というツッコミは野暮です。
ただ、過去作をやらなくてもいい、と言った手前というのもあるのでしょうが、エンディングノートや追憶ダイアリーの大半は任意で進める形式になっています。頻繁に、かつ多く用意されているので全然触れてませんって人はそうそういないと思いますけど。
他の人の感想を見ると『7』はやっとけと勧めていることが多いです。同意見ですがそれは最低ライン。春日編はともかく桐生編も楽しむのであれば『7』だけでは圧倒的に不足です。思い入れの無い状態で桐生編を評価するのは難しいんじゃあないだろうか。
それを踏まえても、ね。「桐生一馬最終章のやり直し」であること自体が、どうしても格好悪く映ってしまうんです。
横山総監督は『7外伝』の発売前に公開されたインタビューで、自分たち開発チームを「(一般ユーザーからは)触れられない"神"」と表現していました。言葉選びがイタくないわけじゃないけどそこはどうでもいい。実際、イチイチ言われたことを気にしているわけにはいかないだろうし。
じゃあなんで「やり直し」しているんですか。『7』で世代交代したはずの彼を、名を消して「浄龍」となったはずの彼を、一番の出番を食ってまで桐生として引き戻しているんですか。
エンディングノートや追憶ダイアリーは桐生一馬に憧れて追いかけ続けたファンたちが望んでいたものだろうし、事実好評をもって迎え入れられたことを鑑みれば、不要であるとは思いません…と書いて気付いたが、桐生編も本筋よりは寄り道で評価されている感じだなぁ。
でも、それは神であるはずの開発陣が、下々の民の顔色を窺ったようにも捉えられる。別のインタビューを見ると、子(遥)離れさせようとした『6』の後の『7外伝』で子離れできてないことに気付き、『8』でケリを付けた、と。これまた回りくどい言い回しですが、『6』で提示した本来の「最終章」がファンの期待に応えられるものではなかったことを内心凄く気にしていた。そう聞こえます。
何も「失敗しました」と認めろと言ってるんじゃないです。一度決めたものをひっくり返すにあたってなお、虚勢を張ってるのが格好悪い。
…1万字行ってるので最後にひとつだけ。
「名を取り戻した男」で締めるなら名を消す努力せぇ! 形だけでも!!
想定以上に長く出てしまいました。そのぐらいシナリオに対する不満はあれど、それ以上にゲームそのものの面白さが牽引してくれた、そんな作品でした。でなくちゃあ133時間も遊んでないよ。本編の話も、なんだかんだ言ってもこれで桐生一馬も穏やかに隠居できるってことだろうしね。
だから次回作であろう『9』こそ、春日一番の「その先」の物語として期待したい。一番じゃなくてまた新主人公が現れるのかもしれないけど…まぁ、ゲーム部分の不安は特に無いので。
たとえ届かなかったとしても、神様に祈りを捧げずにはいられません。宜しくお願いします。
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これにて今年の2大巨頭とも呼べるゲームは一段落。まだまだ遊べはするけど、他の作品も気になる季節。
さて、何から手を付けようか…と、その前に。SSD容量が大分怪しくなってきた。備え付けのものだけでヤリクリしてきたが、残り100GBちょい。それなりのゲームを入れたらカツカツになってまう。
いい機会だし増設にも挑戦してみるか。掃除する時もそうなんだけどカバーがバキっていかんか怖いなぁ…。
《了》