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近所の2匹の猫の話

最近気づいたのだが、近所の郵便局に2匹の兄弟(姉妹?)猫が住み着いているようだ。
この2匹の猫、日中はどこかをうろついているのか姿が見えないのだが、夜になると2匹そろって郵便局の前で縮こまっている。

これまで、朝のジム通いが習慣化していたのだが、最近「アンチ朝食活動」を開始したことにより、夜にジムに行くようになった。それで初めて知ったのである。
近づくと逃げるので、触ったことはない。写真を撮っても逃げはしない。まさに野良猫という感じである。

夜にしか現れない、仲睦まじい兄弟猫。何となく心くすぐられるものがありはしないだろうか。

■いかにして2匹の猫は郵便局に住み着いたのか
2匹の猫が生まれたのは、実は遠く離れた北の大地なのだ。彼らは、重たい春の雪が降る寒い朝に、控えめに言って清潔とは言えないしげみの中で生まれた。ほかに兄弟は8匹いたが、1匹は産まれてすぐに寒さで死んだ。
父親は見たことがなかった。母親は白猫だった。もしかしてコインランドリーで洗濯されれば、絹のようにつるっとした手触りの、美しい毛並みだったのかもしれないが、野良猫の身分では駅の公衆トイレの洗面台程度には黄ばんで、ひどく痩せて、くたびれていた。
2匹は、7匹になった兄弟の仲で特に仲が良かった。他の猫たちはみんな真っ白だったけれど、その2匹だけは、少しだけ顔周りに茶色い毛があった。父親の痕跡みたいで、水たまりにうつる自分たちの姿を見るたび、少しうれしい気持ちになった。
カラスの襲撃、交通事故、流行り病、そんなもので7匹が3匹になったころ、彼らは突然人間につかまった。よくわからないけど下腹部のあたりに痛いことがあって、けれど人間は妙に優しくて、温かい場所と食事と水を与えてくれた。気持ち悪かったが、死ぬのは嫌だったので、与えられたものを食べたし、飲んだ。
やがて再び元の場所に返されたころには、母親はいなくなっていた。もう1匹の兄弟は、人間の世話になることが生きる道だと言って、同じような猫の臭いを漂わせた人間の後をついていき、どこかに消えた。
2匹は、どこに行く当てもなかったが、何を考えているかよくわからない人間の世話になるのはごめんだ、というのだけは全く合意だった。
そんなわけで、2匹は旅に出ることにした。暖かく、2匹で暮らしていけて、人間に邪魔されない場所ならどこでもいいと思っていた。

――そして2匹は遥か北の大地から旅をし、優しい人間にあったり、怖い猫に襲われたり、綺麗な自然に圧倒されたり、うっかり新幹線に乗りこんじゃったり、すったもんだあって、結果落ち着いたのが東京の外れの、郵便局の前だった……

みたいなストーリーで、1本書けませんかね~。

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