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〜電車の居心地〜 2025/01/15

 電車に乗っている時、各駅停車で駅に停まってドアが開く度に強い風が吹き込んできた。

 本を読んでいた目を上げて風の出所を見ると向こうのほうに揺れる木々があり、アナウンスに混ざって葉が擦れる音が聞こえる。

 風の冷たさ、木々の動き、葉の音、何も珍しいものではないけど「心地がいいな」と思った。駅に着く度に心地よい気持ちになって思わず顔を上げてしまう。

 電車に乗っている時に唯一外を感じられる。それが駅に着き風が入ってくる瞬間だと思う。

 でも、何個目かの駅に着いた時、ふとこれは外を感じるのが心地いいのではなく、電車の中が心地悪いのではないか?と思った。

 電車の中は往々にして居心地が悪い。直角の椅子は腰や背中に負担だし、室温は高くて空気がこもっている。座席の下からは常に熱風が吹いてくるし見知らぬ人の視線がそこかしこにある。

 そんな心地悪い空間に居続けなければいけないから、たまに訪れる外の空気や音が心地良く感じるのではないか。言うならば、熱いお風呂やサウナにじっくり入った後の涼しさのような感じだ。

 今までいた場所が不快だったからその不快さが取り除かれ普通に戻っただけなのにそれが気持ちよく感じる。0からプラスになったから気持ちいいのではなく、マイナスから0になったから気持ちいいんだ。

 そう思い始めると、意識はたまに訪れる外ではなく、常にあり続ける電車内の不快さに割かれる。外の気持ちよさより中の不快さの方が比重が重くなる。

 電車というのは高速で自分を運んでくれると同時に不快さを提供することで何気ないもののありがたさに気づかせてくれるのかもしれない。

 体を撫でる冷たい風、不規則に揺れている緑の木々、擦れ音を鳴らしながら飛んでいく葉、頭上で小さく鳴く鳥、海の向こうへと沈む夕陽。

 電車に乗れば分かるもの、電車に乗ると分からないもの、電車に乗って気づくもの、電車の中で感じるもの、電車の外に感じるもの、そういうものに気がついた方が電車の運賃はお得になるかもしれない。


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『藻野菜/@Moroheiya0225』

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