〜筋肉談義〜 2024/10/30
10月某日、俺は筋肉に話しかけていた。
「よぉ、上腕二頭筋、元気かい?」
「ちょ………つか………」
え? なんて?
「ちょっと疲れてます」
俺の筋肉は小さいため、筋肉が話す声も小さい。
「そうかぁ、なんで疲れてるんだ?」
「今日犬の散歩したじゃないですか、その時犬が結構引っ張ったのでそのせいで疲れました」
確かに、犬との散歩をして以降少し腕が疲れた感じがする。
「じゃあ、明日には大きくなってるかもな」
「そんな1日じゃ変わらないですよ、犬の散歩くらいで私たちが肥大してたら世の中はマッチョだらけです」
最もな意見だ。ほぼ毎日犬の散歩をしているにも関わらず小さいままの上腕二頭筋何よりの論拠だ。
「腹直筋、君はどうかな?」
「昨日の筋トレの疲労が長引いています。私の使用は控えていただきたい」
昨日は腹筋の筋トレを重点的に行った。腹筋を酷使する体勢を20秒間維持したりしたのでかなり筋肉痛になっている。
「君、なんか最近声大きくない?」
「最近腹筋の筋トレが多いから段々と肥大しているんですよ」
俺は筋肉の声によって筋トレの成果を実感する。
「腹斜筋はいるかな?」
「・・・。」
いつもと変わらず腹斜筋からの応答はない。
俺は一度も腹斜筋の声を聞いたことがない。何故なら腹斜筋というものがどういうものなのか分かってないし、腹斜筋を認識してないからだ。腹斜筋を鍛えるトレーニングを行ってもあまりキツくない。キツくないということは筋トレが正常に行えていないのだ。
腹斜筋の筋トレ方法が分からない=腹斜筋への力の入れ方が分からない=腹斜筋を認識してないのだ。
「上腕三頭筋はどうだ?」
「自分も筋肉痛っすねー、明後日くらいまでは酷使しないでほしいっす」
上半身の筋肉は全体的にお疲れのようだ。昨日の筋トレは上半身中心のものだったから、致し方あるまい。
「胸筋くんは?」
「じ………、あま………、…………てない…す」
胸筋は俺の筋肉の中で1番声が小さい。
認識はしているけれど、普通に体を撫でたら存在に気づかないくらい小さい。
「なんて?」
「じっ自分は、あまり、疲れてな…です」
生まれてこの方「胸筋が筋肉痛」という状況になったことがない気がする。
一応胸筋を鍛える筋トレも行っていて、それをやっている時はキツイのだけれど、胸筋が痛くなったことはない。もしかしたら胸筋は筋肉痛になりにくい筋肉なのかな。
「胸筋はこれから頑張って大きくなっていこうな」
「は、はい……」
自身の無い返事だ。
「下半身の面々はどうだ?」
「大腿四頭筋、元気です!」
「大臀筋、異常なし!」
「ハムストリング、バッチリです!」
「うんうん、今日も元気だね」
俺の下半身の筋肉は中々元気だ。下半身というのは日常的に負荷がかかりやすいし、鍛えやすいし、筋肉痛にもなりやすい。つまり、日常的に育っているということだ。
昔から長距離走とかは得意だったし、俺の体の中では下半身は鍛えられているという自負がある。
「明日は筋トレする予定だから、みんな頑張ってくれよー」
「「「はーーーーい」」」
俺は筋肉達と共に眠りにつく。
こんな風に筋肉とコミュニケーション取れたら色々と便利なのにね。
でも、そんなことが出来るようになってしまったら、俺みたいな筋肉のない人間が筋肉に話しかけているというおかしな状況が出来上がってしまう。
ヒョロガリが筋肉に向かって「調子どうだい?」とか言う光景。
面白いかもしれない。
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