【中世欧州料理試作】(9)森の果実のカスタードタルト
このコラムでは、過去試作してご紹介した中世ヨーロッパのアレンジ料理についてちまちまご紹介します。
全部実試作つき&単純に自分の感想や所感なども書きなぐってます。基本的に全部美味しいんですけど、一部「?!!?(なんともいえない味)」ってものもありますので、そのあたりも正直に書いときます。
赤ワインとカスタードを使った甘いタルト(に一見見えない)
中世ヨーロッパ料理というと「お肉・でっかいパン・うっすい味のスープ・チーズ」がパッと思い浮かぶ方が多いんですが、お魚料理やお野菜料理、甘いスイーツなどのレシピも結構残っています。たぶん、単純に創作ファンタジー作品ではあまり扱わないジャンル+イメージしにくいからというのもあるんですが、こういう料理もあるんですヨー、というのを長年地味~に紹介しています(コツコツ活動 is 大事)。
タルトは上流階級から庶民階級まで幅広く作られていた料理のひとつでして、特にお祝いごとや何かの儀式などには重宝されていたとされます。その中からご紹介する今回の「森の果実とカスタードのタルト」。現代だと「あまーいクリーム色のカスタードクリームが入っていて、たっぷりの熟した果実がのっかっていてなんとか映える」的な想像をされるかと思うんですが…。
ちょっと焦げた茶色いタルト?
に見えますよねー、ですよねー♪これでも焦げてないんです(慌)。
赤ワインとカスタードの元になったような材料を使っているので、茶色っぽく見えちゃうんです。
タルトの材料はどシンプルです
それでは当時の料理指南集ベースの材料をざっくり出してみます。分量は今回もカットします(もし昨年頒布した同人誌をお持ちの方はそちらを参照くださいませ)。
カスタードの部分は上記の「牛乳・クリーム・卵黄」を使ってまぜまぜします。そこに赤ワインやスパイスを加えてさらに混ぜ、ドライデーツや季節の森の果実を入れて、タルト台に流して焼き上げる、といったものです。
当時の上流階級では砂糖を使うことが多いんですが、比較的値段が高い調味料でもあったので、ここでは主要甘味料でもあるハチミツを使いました。一見甘そうと思われがちですが、そこまでたっぷり入れてないので甘味は控えめな感じです。
酸味の強弱は「森の果実」に左右されると思います。大元の料理指南集にのっかっているベリー系だと大方酸っぱいものが多いので、あまりスイーツな味ではなかったのではないかとみています。現在は品種改良が進んでいるので生食でもある程度甘く美味しく頂けるんですが、昔はモノによってはすっぱーい!ってこともあり得ますので。
なして「赤ワイン」?
材料に含まれている謎の赤ワイン。これ、他のタルトや肉料理などにも大変多く使われている食材のひとつでして、ぶっちゃけ大半の茶色く見える料理は大方この赤ワインを使っているといっても過言ではないと思います(一部お肉の血とか例外はありますが)。
なんせあらゆるところに赤ワインなので、試作検証する際には赤ワインストックを多めにしております。確固たる要因はいまいちわからないんですが、ワイン自体は中世当時の主要産物であったことは確かなので、その流れが料理の方まできているのかな?と考えています。
当時赤ワインを使った料理が多かったのが、意外にもイングランド。ワインといったらフランスやイタリア、スペインなどで「イングランド=ワイン」というイメージがあまりないんですが(むしろエールとか)約10~14世紀(9~13世紀説もあり)の間、ヨーロッパ全域で温暖期を迎えておりまして、その影響でイングランドでもワイン醸造がかなり盛んだったことがありました。
時代的にも赤ワインを多用しはじめた時期とだいたい合致するので、そのあたりの事情もあるのかな?と思います。もちろん、フランスなどの他国からの輸入もあったと思いますけどね。気候変動は当時の料理にもけっこう影響がでていたことが分かります。
「カスタード」と冠してはいるものの、実際の味的には赤ワインとなんか果実の甘酸っぱい味という感想です(自分の場合)。現在私達が知る甘くてもったりとしたカスタードに到達するまでまだ数百年かかるわけですが、こういった経路もあったのねー、というのを知って頂けるとこれ幸甚でございます。
最後までご一読頂き、有難うございました(^-^)。
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