サッカーEURO2020 ファイナルを夢中で観てしまいました
7月12日(月曜日)ロンドン、朝のBBCニュースで、女性のレポーターが小学校なのか子供達のところを訪問していた。
前日の日曜日、サッカーヨーロッパ選手権EURO2020の決勝戦で、イングランドとイタリアが戦った。試合開始後2分という速さで、イングランドが先取点を取り、そのまま前半は終了した。後半が始まる前の休憩時には、イングランド側の解説者も意気揚々。点を入れた直後のイングランド各地のパブリックビューの様子を流し、優勝という文字がすぐそこまで迫っている勢いだった。しかし、やはりイタリアも負けてはいられない。後半で勢いを増し、得点、接戦のままPK戦へ。イングランドは悲しくも敗退してしまった。
小学校を訪れるという予定は、勝っても負けても決行されることになっていたのだろう。試合が終わったのは、夜の11時近く。みんな何時に寝たの? という質問に、11時、12時、途中で寝ちゃった、と子供たちは誇らしげに元気な姿を見せていた。いや、そうなるように、女性のレポーターがとても上手に盛り上げていたように見えた。がっかりした気持ちがみんなの心に刻まれながら迎えた、寝不足の朝の生中継。それでも、楽しく子供たちを奮い起こすレポーター、それに元気よく応じている子供たち、見ていてなんだかグッとくるものがあった。
私は別段サッカーファンではない。以前サッカーの競技場の近くに住んでいたことがあった。私の通勤帰りの時間が、サッカーファンたちが試合会場へ向かう時間と重なると、ものすごい人混みに紛れながら逆方向にある家へと向かうこととなった。大騒ぎをしている人々の間を通り抜けながら、あー、嫌だ、といつも心の中で毒づいていた。それなのに、今回のファイナルの試合は、ついついテレビのチャンネルを合わせ、夢中になって最後まで見入ってしまったのだ。
そういうのって、にわかファンって言うのでは? と後ろ指を指されそうだが、はい、そのとおり。普段は全くサッカーの観戦なんかしていない。そのくせ、こうしてヨーロッパ選手権という大きな舞台で、イングランドのチームが勝ち進み、周りがみんな盛り上がってくると、釣られて応援を始める。なんだかただのいいとこ取りのようで、常に応援しているファンからしてみれば勝手な人だろう。でも・・・こういう時はどうか見逃してほしい。サッカーというスポーツの素晴らしさを実感したのだから。
BBCのレポーターが子供たちを盛り上げた後、なぜかギターを抱えたおじさんが登場した。何事だろうか? 興味津々で見ていると、レポーターはさらにムードを高め、ギターの演奏が始まった。流れてきたのは、「スイートキャロライン」。1969年に全米で大人気となった、ニール・ダイアモンドの曲。サビの部分は、きっと誰しもが聞いたことがあるであろうと思われる歌だ。
この曲、なぜかイングランドのサッカーの応援歌のようになっており、このヨーロッパ選手権の間も、会場で一丸となって歌われていたのだ。
Sweet Caroline
Oh Oh Oh !
みんなで気持ちを合わせてテンションを上げるには、ピッタリの歌。今回、イングランドがヨーロッパ選手権で初の決勝進出を決めた、デンマーク戦に勝利した後も、会場中にこの音楽が流れ、大合唱となった。
そして、日曜日、決勝戦が始まる前も、スタジアムにいるファンの人たちは、この歌にみんなで声を合わせた。
その気持ちが蘇ったかのように、子供たちはギターに合わせ、笑顔で叫んだ。
「スイート キャーロライン、オッ、オッ、オッー」
試合に負けた悲しさも吹き飛んでしまったのではないか。
私が、こういう大きなイベントの時ににわかファンになってしまうのは、これがあるからなのだ。試合を見ているみんなで一体となって応援する、自分がプレーをしていなくても感じる緊張感、がんばってほしい、勝ってほしい、という必死の願い。そして、得点した時の喜び、試合に勝った時の高揚感、場当たり的にサッカー観戦に参加しても、この気持ちは一緒に味わえる。普段知りうる事のない貴重な体験、素晴らしい出来事なのだ。
スポーツ観戦を通してこのような気持ちになったこと、今でも鮮明に覚えている記憶がある。高校生の文化祭の時だった。体育館に人が集まっているので行ってみた。そこにはバレーボールのコートが設置されており、バレー部のメンバーと先生方で結成されたチームが試合をしていた。女子校だったので、生徒のメンバーは当然女子だけ。先生は男性も女性もいた。試合はなかなかの接戦だった。教団に立つ姿しか見たことのなかった先生方が、パレー部の生徒を相手に真剣に戦っている。点数が入れば、みんなで無邪気に喜ぶ。まず、その姿が新鮮だった。どっちを応援するでもなく観戦していたが、気づいたら試合に釘付けになっていた。誰かがサーブをする時には、自然とみんなの声が揃う。
「ソーレ!」
生徒も先生も一丸となって、目の前で行われている試合に夢中になっている。点が入れば立場も忘れてはしゃぎ、観客も時間を忘れて応援する。ただただ、楽しかった。そうなんだ、スポーツ観戦って、楽しいんだ。何かに一生懸命になるって、こんなに楽しいことなのだ。あの時味わった高揚感が、私に教えてくれた。
惜しくもイングランドは負けてしまったが、様々なメディアが記していた。イングランド選手は国民の誇り。
キャプテンのハリー・ケインは言った。
「しばらくは心が痛むだろうが、自分たちは正しい方向へ向かい、強化に励んでいる。来年に向けて前進して行きたい」
来年2022年には、カタールでサッカーW杯が開催される。イングランドのチームは、もうそこに向かって進み始めているのだ。
そう、私もサッカー観戦で味わったこの溌剌とした気持ちを胸に、しっかり前を向いて進んでいこうと心が熱くなっている。
だから、イベントの時だけサッカーに夢中になってしまった私を、根っからのサッカーファンの方々、どうか許してほしい。
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