【配給会社ムヴィオラの映画1本語り】『春江水暖〜しゅんこうすいだん』⑩シャオガン監督の好きな映画10本が届いた
世は映画ベスト10シーズンですね。今年の洋画は『パラサイト』でしょうか。そんな中、Brutusでホンマタカシさんが『春江水暖〜しゅんこうすいだん』を2020年ベスト1に選んでくれた!
さて昨日、グー・シャオガン監督からWeChatで「今日2021年1月22日現在の好きな映画10本」が届いた。オールタイムベスト10ですね。ではさっそく。
1.《悲情城市》——ホウ・シャオシェン
2.《ヤンヤン 夏の思い出》——エドワードヤン
3.《東京物語》——小津安二郎
4.《永遠と一日》——テオ・アンゲロプロス
5.《トロピカル・マラディ》——アピチャッポン・ウィーラセタクン
6.《ポエトリー アグネスの詩》——イ・チャンドン
7.《歩いても 歩いても》——是枝裕和
8.《ノスタルジア》——アンドレイ・タルコフスキー
9.《1000年刻みの日時計 牧野村物語》——小川紳介
10.《かぐや姫の物語》——高畑勲
この10本は渋谷ツタヤさんでのコーナー展開のために監督にお願いしたもので、2/1から『春江水暖〜しゅんこうすいだん』特集として店頭で展開される。『悲情城市』がレンタル商品切れで並べられないのは、すごく残念!『悲情城市』はAmazon Primeにも入ってないし、見る方法が限られている。こういう映画はいつでも見られるといいのだけどなぁ…
アピチャッポンの『トロピカル・マラディ』も商品なし。これは私がグズグズしてるせいもあって申し訳ない。いつか、うちで権利を買ってDVD化したいとは考えている。デビュー作『真昼の不思議な物体』も含めてBOXにしたいけれど、『ブリスフリー・ユアーズ』がノーカットでボカシもなしで日本で商品化できるかは少々不安が残る…あとはコロナが早く落ち着いて会社に余裕が出てから…か。
渋谷ツタヤさんでは、ほかにもシャオガン監督選で「好きな監督10人」「好きな日本のアニメ映画」「青春時代の思い出の映画」などが並ぶ予定。日本のアニメを選ぶのがさすが1988年生まれの新世代ですね。
さて改めて「好きな映画10本」を見てみると、1位〜3位は「納得の」「予想できた」ベスト3。『春江水暖〜しゅんこうすいだん』はこれまで見たことのないオリジナルな映画だが、大きな意味ではこの3作の「息子」だし、大家族を描く映画なので、シャオガン監督はこの3作のレベルに届くようにと高い目標にすえたと言っていた。若さゆえの目標の高さが気持ちいい。
4位以降には予想外の映画も。『トロピカル・マラディ』は恋してる時の胸の高鳴りがバイクで疾走する前半から、中島敦「山月記」が引用される映画館の暗闇でこそ味わいたい森の夜に身を沈めた虎の美しさに陶然とする変容の映画。シャオガン監督はアピチャッポンを「きっとしばらくは彼を超えるクリエイターは出てこないと思う」と言うほど、その才能にいつも衝撃を受けているらしい。
是枝監督作は『万引き家族』や他の映画は、見ていたけれど、『歩いても歩いても』はつい先日どこかの上映会で見たらしい。『春江水暖〜しゅんこうすいだん』はほぼ全てのキャストが素人なので、どう演技してもらうかと言うところで、是枝さんの子役の使い方を読んで参考にしたと言っていた。『かぐや姫の物語』は『春江水暖〜しゅんこうすいだん』が中国山水絵巻であるのに対して、日本の絵巻物。高畑監督に『春江水暖〜しゅんこうすいだん』見て欲しかった!
こうして10本を俯瞰してみると、1988年生まれの若手監督としては、それらしくないのかもしれないけれど、なにか人間というものの終わりと始まりの円環を感じさせるような、大きな構えの映画が好きなのだな、という気もしてきた。シャオガン監督は、一時期、ヒンズー教を研究してたと言ってたが、そんなことも関係あるのだろうか。
いや。映画ファンならば、理由づけなどなしで映画に夢中になるのが正しい行為だから、まとめるのはやめよう!いつか直接会える日がきたら、好きな映画談義をたっぷりしたい。今はそれが楽しみ。
2021年1月23日 ムヴィオラ 武井みゆき
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