「この程度じゃ死なないから」入管内で横行する医療放置の実態
こんにちは。差別に反対する学生団体、Moving Beyond Hateです。
私たちは月2〜3回、入管の面会活動に参加しています。今回は面会活動を通して明らかになった入管内の医療放置の実態について紹介します。
2021年に起きたスリランカ人女性ウィシュマ・サンダマリさんの死亡事件などによって入管内の医療放置の実態は問題化されつつありますが、そんな入管内での医療放置は例外ではなく、「常態」だと言えます。
この記事では入管職員だけではなく、入管内の医者や入管外の医療機関も様々な形で被収容者への医療放置に加担している現状を明らかにします。
①「この程度じゃ死なないから」被収容者が突然倒れても放置する入管の医者
11月下旬、ある日系人の被収容者Hが突然倒れた。周りの被収容者は入管職員をすぐ呼び、10人ほどの職員がすぐさま駆けつけたが、彼らはただ倒れているHを見つめ、立ち尽くしていた。
やがて入管の医者がやってきたが、倒れた本人をみた後、まるで被収容者が嘘をついているかと決めつけるように、「この程度じゃ死なないから」「心配ない」と発言していた。十分な検査もせずに、意識のない人物について「心配ない」と言い捨てたのだ。本来、入管内の医者であれば被収容者の体調を管理し、適切な治療を施すべきだが、ここではそれどころか、医者本人が被収容者の訴えを軽視し、適切な検査や医療を提供することを拒否していたのだ。
結局同じブロックの被収容者が119番に電話することでやっとHは入管近くの病院に連れられ、検査を受けることになった。結果として命の別状に関わる異常は見つからなかったが、無事だったからといい、倒れている人を入管内の医者が放置することはまさに入管の差別に医者が加担していることに違いない。
②日常的な医療放置ー診断結果について知らされない被収容者
入管内の医療放置はこのような事件に限られず、まさに日常的に起きている。入管内で被収容者が体に異変を感じるとまずは入管内の医者に診察にかかるが、そこでは血液検査をはじめとした簡単な検査が行われる。血液検査などの結果、異常が見つかると入管内の医師は外部の病院に紹介するための紹介状を書くことになる。しかし、まず検査の結果や詳細について適切な説明が被収容者に対してなされることは少ない。例えば、被収容者Kの話では、検査の結果、腎臓に異変が見つかったものの、入管の医者は「腎臓がやばい」とKに説明するだけで、どういった原因で悪化したのかなどを説明しなかったという。そして「やばい」と言いながらも、1ヶ月以上Kを外部病院に紹介し、検査を受けさせることをしていないのだ。
③入管の医療放置に加担する外部の医療機関
不適切な医療対応を行なっているのは入管内の医者と職員だけではない。外部の医療機関も時にはこの医療放置に加担することがあるのだ。 まず、入管内の医者の検査によって異常が見つかっても、外部の病院に被収容者を連れていくかどうかは入管の恣意的な判断にかかっている。しかも、外部の病院に連れて行かれても被収容者は他の一般の患者と同じように診察と治療を受けられるわけではない。多くの場合4人以上の職員に囲まれ、被収容者は外部の病院に連れていかれるが、時には手錠をかけられ、犯罪者のように連行されることに加え、実際に診察を受ける場においても、被収容者は直接医者と話す機会を与えられないこともある。被収容者は診察結果について外部の医者から直接説明を受けられず、入管職員と医者が被収容者と離れたところで結果について話し合うことが多いという。その結果、検査を受けながらも、自身の病名や病気の詳細についてその場で知ることができないのだ。そして、多くの場合、医師から説明を直接受けられないだけではなく、病気の証拠となる診断書も渡されることはない。そのため、もし病気の詳細について知りたければ検査結果について後日開示請求を行うか、入管の外にいる知り合いが直接病院に行って診断書を取りに行ってもらうしかないという。
④嘘
病気の詳細について説明されないだけではなく、時には外部の医者が入管と結託して被収容者に対して公然と嘘をつくことがあるという。被収容者Lは外部の病院の医者の診察を受けた後、医者から「何も問題ない」と言われたが、診断書をチラッと見たところ、そこには「ヘルニア」と書かれていたという。
最後に
そもそも、被収容者が収容の過程で患う病気の多くは元々の持病などが収容のストレスや運動不足や食事の栄養不足によって悪化したものが多い。例えば、入管内ではヘルニアを患う被収容者が多いが、それは入管内の劣悪な食事と収容、1日の限られた「フリータイム」時間以外はずっと部屋で過ごさなければならないというその監禁状態によることが大きい。また、日常的にも入管内で頭痛や眩暈、不眠症に苦しむ人、ヘルニアなどを患う人が多いが、これらはいずれも薬物療法などの対症療法では当然対処しきれない。今すぐ、被収容者を全て解放しなければ入管内で病気で苦しみ、死ぬ人は増えるだろう。
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