お酒をやめられない人は見てはいけない。映画「リービング・ラスベガス」
公 開:1995年
監 督: マイク・フィギス
上映時間:111分
ジャンル:ラブストーリー/暴力/コメディ
だいたいの映画というのは、主人公が困難から脱して、幸福になる事が多いはずです。
しかし、「リービング・ラスベガス」は、どう考えても破滅しかない、と物語の冒頭から思わせてくれる、なんとも救いのない作品です。
ニコラス・ケイジ演じるベンは、ハリウッドで脚本家をやっていたのですが、アルコール依存症になってしまって、妻子は既に出ていかれており、お金がないから友人に頼みにいったら、絶縁されてしまい、会社からもクビを言い渡されてしまいます。
「ラスベガスから離れるよ」
お酒をやめるために新天地にでも行くのかと思いきや、彼は、ラスベガスを離れるどころか、酒を死ぬまで飲もうと決意しているのです。
もっているものを全て燃やし、売れるものはなんでもお金に替えて、お酒を買う。
飲んで楽しくなっては、女の人に絡んだり、車を運転しながら瓶でお酒を飲んだりと、やりたい放題です。
そんな中、運転中に轢きかけた女性を、お金で買ったベン。
その女性は、高級娼婦をしているサラという女性で、典型的なダメンズ(ダメな男)が好きな女性なのか、男に暴力はふるわれるし、お金はとられるしで散々な目にあっています。
惹かれるところがあったのか、サラとベンは恋仲になります。
本作品をざっくりとまとめると、死ぬまで酒を飲むと決めて、どんどん死に近づいていく男が、偶然にも、自分を認めてくれる女性に出会い、わずかな間だけ、破滅的な恋愛をするというラブストーリーとなっています。
本作品がいいのは、お互いが、自分たちの悪いところを認め合っているところです。
アルコール中毒のベンはいうまでもありませんが、娼婦をしているサラもまた、決して世間に大きな声で言える商売をしているわけではありません。
お互い、後ろ暗いところを持ちながら、それでも、お互いを認めているからこそ、二人の恋はより燃え上がるのです。
だからこそ、二人が愛し合えば、愛し合うほど、破滅的なストーリーがつらくなっていくのです。
相手を認めているからこそ、一緒に生きる為に、お酒をやめて、とは言えないサラ。
なんて男に都合の良すぎる女性だ、と思うでしょう。
「君は、天使だ」
と、ベンが言いますが、たしかに、その通りです。
自分のダメなところを全て含めて愛してくれる都合のいい女性ではありますが、本作品は、1995年当時に公開された作品というだけあって、なかなか重たい内容を含んでいます。
そのため、暴力的描写が苦手な人は控えたほうがいいとは思います。
酒を飲むことを最優先にして生きるベンは、やりすぎていて面白く、笑ってしまう場面も沢山あるのですが、アルコールにむしばまれていくにつれて、笑えなくなっていくのも、本作品の味わいです。
なんとかなりそうなのに、ブレーキの壊れた車のように、二人は走り続けてしまう。
「リービング・ラスベガス」の原作者もまた、アルコール依存症であり、悲惨な最期を迎えているだけあって、本作品も根底にあるのは非常に重たく暗いものとなっています。
ですが、人生の最期にどうしたいのか、どう生きたいのかということを問いかけてくる傑作ともなっています。
価値観を揺さぶられる人も多いと思います。
注意点をあげるとするのであれば、お酒が飲みたくなってしまう可能性が高いので、映画を見るときは、くれぐれもお気をつけください。