山を巡る人たち。感想。アニメ神々の山嶺
公 開:2022年
監 督: パトリック・アンベール
時 間:94分
ジャンル:自然
見どころ:ザイルを切る決断
「なぜ、山に登るのか。そこに、山があるからだ」
という言葉を言ったとされることで有名な登山家、ジョージ・マロリー。
登山家にとって、一つの憧れであり、到達点であるエヴェレスト登頂は、ジョージ・マロリーにとっても悲願だったのは、当然といえるでしょう。
「神々の山嶺(いただき)」は、「孤独のグルメ」の絵で有名な谷口ジローが作画し、夢枕獏が原作となっています。
ジョージ・マロリーは、果たしてエヴェレストの頂上まで登ることができたのか、という現実の謎を主題におきつつ、一人の男の登山に命を賭ける物語と、その男を追いかける記者の物語となっています。
実写映画にもなった本作品ですが、フランス人監督によってアニメ化された内容をもとに、紹介をしてみたいと思います。
羽生丈二という男は、登山にかける情熱は並外れたものがあるにしても、パートナーと折り合いがつかなかったりしながら、難しい登頂をしてきた人物です。
深町という記者が、たまたま彼のことをしっていくうちに、のめり込んでいくというのが主な内容ですが、本作品は、登山作品ということもあって、背景や美術品については、非常にこだわったつくりとなっています。
とはいえ、背景がまるで書き割りのようになっており、いわゆる、実写と見間違うような美しさではないことから、イメージとは異なると思う人もいるかもしれません。
登山を扱った作品というのは、地味な内容になりがちです。
白い山ばかり映っているので、同じような絵になってしまいます。
とはいえ、しょっちゅう雪崩をおこすわけにもいきませんし、一歩一歩あるくこと、そのものが時間のかかる作業ということも当たり前の世界です。
本作品は、街での描写と対比させることで、山での抜けるような空をみせられたときの解放感は、格別ですし、様々な構図や状況で飽きることはありません。
また、原作における死なせてしまった仲間への罪悪感や、過酷な環境の中で食べる食事等についての描写は少ないものの、深町という記者の想いや、羽生が、とりつかれたように山に登ろうとする姿は、鬼気迫るものがあります。
エヴェレストの挑戦は、時々ニュースで聞くことはありますが、登ろうとするだけで、どれほど大変なのかということも含めて、本作品は教えてくれるのも面白いところです。
実際のところ、山に登る人の気持ちというのは、山に登る本人にしかわからないところでしょうが、本作品の中には、命を失ってでも、登らなければならない人たちの心理がわかりますし、その中で、色々な思いをもつ人々のこともわかります。
登山で命を失った家族のいる人であるとか、社会生活との間の中で、折り合いをつけていく人たち。
巨大な山をめぐる物語がわかりやすく語られており、自分には理解しずらい考えをもつ人たちに、少しでも歩み寄ることができます。
エヴェレストに登ることはできなくても、それぞれの山に、人は登るのです。
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