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【映画感想文】2人の癖強監督の、そこまで癖強くない作品「ブルーベルベット」「イースタン・プロミス」

配信で、デビッド・リンチ監督の「ブルーベルベット」(1986年)と、デビッド・クローネンバーグ監督の「イースタン・プロミス」(2007年)を鑑賞しました。
感想を書いてみようと思います。

タイトルにあるように、リンチさんとクローネンバーグさんといえば、癖つよ監督で有名ですよね。
リンチさんなら「ロスト・ハイウェイ」や「マルホランド・ドライブ」のどういうこと?作品。
クローネンバーグさんなら「ザ・フライ」や「クラッシュ」のなんじゃこりゃ?作品。

お2人の名前からちょっと身構えて観たのだけど、意外や意外、両作ともそこまで刺激が強くなくて、見やすい作品でした。
そういう意味では物足りないと思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、自分は面白かったな。

ブルーベルベット

ノース・キャロライナ州ののどかな田舎町。急病で倒れた父を見舞うために帰郷した青年ジェフリーは、病院からの帰り道、切り落とされた人間の片耳が野原に落ちているのを発見する。警察に通報した彼は、ドロシーという女性が事件にかかわっていることを知り、好奇心から彼女に接近するが……。

映画.comより

ジャンルとしてはミステリー作品になるのかな。
あらすじにあるように、主人公が草原で人間の片耳を拾い、その謎を追っていくもの。
リンチさんにしてはお話の縦軸がはっきりしていて、最後きちんとストーリーが終わる。
「あれどういうことなの?」って疑問は残らない作品です。

まあそこがリンチさんらしからぬなのだけど、でもリンチ文体は確実にあって、この作品が「ツイン・ピークス」につながってる気がします。
登場人物がみんな怪しく感じる…。なんか裏がありそう…。
リンチさんのこういう世界観の組み立て方って、ほんとうまいですよね。

あと、(悪趣味だと思われるかもしれないけど)『耳』が落ちてるってそそられませんか?
自分が耳フェチだからかもしれないけど、物語の導入としてめちゃくちゃひかれました。
自分、好きな人の耳を触るの好きなんですよね、触られるのも好き。(←何の告白だ、これ)
他人の耳の形も着目してしまいがち。
耳ってどこかチャーミングな気がしませんか?目・鼻・口なんかに比べるとそこまで注目されないけど、でも顔のパーツをひっそり印象付けてるというか。
耳なんて機能的な観点からしたらみんな同じ形でいいじゃん(だって大切なのは鼓膜の方でしょ)と思うのだけど、丸かったり尖ってたり、寝そべってたり立ってたり、耳たぶが厚かったり薄かったり大きかったり小さかったりする。
実はとても個性的なパーツなのだ。自分は耳のオリジナリティを応援します!

なんか耳の話になっちゃったな…。
話を作品に戻すと、そんな耳を発見したことによって、主人公は自分が今まで知らなかった世界に引きずり込まれる。
リンチ作品の良いとこって、日常生活と地続きのところに実は変な世界があるんだよと提示してくれるところ。
さりげない(を装った)語り口で遠くまで連れていってくれるのが好きです。
さも当たり前のように「一緒に変な世界をのぞきましょう」と誘ってくるので、それに素直にのっかりましょう。
現実生活なら断るけど、映画を観るぶんには安全ですからね。

最後に、主人公のカイル・マクラクランさんのファンです。
ビジュアルも好きだけど、「マクラクラン」って言葉の響きも好き。

イースタン・プロミス

病院で助産婦をしているアンナは、駆け込み出産をして死んでしまった少女が持っていたロシア語の日記を手がかりに少女の身元を探し始める。だが、彼女が辿り着いたのはロシアンマフィアによる人身売買、売春の実態だった……。

映画.comより

この作品はジャンルとしてはサスペンスになるのかな。
このあらすじを読むと助産師のアンナが主役っぽいけど、ロシアンマフィア側の運転手がもうひとりの主役。
ビゴ・モーテンセンさんが演じていて、いろんな賞にノミネートされてますね。渋い強面の男って感じでした。

クローネンバーグさんというとその作風からグロい描写があるのかなと思いきや(今作はR18)、そこまできつい描写は多くなかったです。
全くないってことはないのだけど、まあマフィアものなら少しはありますよね。
暴力的なものをたくさん描くというよりは、きつい描写は絞って、あとは想像させるようなシナリオになってました。そこが意外。

全体的に落ち着いた雰囲気で、お話の内容的にこんなに落ち着いていていいのかなとも思うのだけど、妙に大げさに盛り上げないとこに好感が持てました。海外のサスペンス小説を読んでるみたいで、自分好みでした。

実はこの運転手には大きな秘密があるのだけど、「それを言っちゃあおしめえよ」なので伏せておきます。
ご興味持たれ方はご自身の目でお確かめくださいませ。

両作とも癖は強くなかったけど、「自分が語ること」に愛を感じられる作品でした。
それって「作家性」という言葉で片付けられそうだけど、こだわりのなかには愛がある。両監督のファンとしては嬉しかったな。

両作ともおすすめでございます、イエイ。


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