今こそみるべしパンク映画【ベルベット・アンダーグラウンド】
誰もが一度は目にしたことがあるバナナのジャケットで有名なヴェルヴェット・アンダーグラウンド(以下:ヴェルヴェッツ)のデビュー・アルバム「The Velvet Underground and Nico(1967)」。
ブライアン・イーノが残した名言「彼らのレコードは5,000枚しか売れなかったけど、買った人間は全員バンドを始めた」が残っている通りの名盤だ。
本作は、そのヴェルヴェッツのドキュメンタリー映画であるが、人によってはパンクではなく、アート作品に感じられるかも知れない。
監督トッド・ヘインズはインタビューで次のようにコメント「普通のロック・ドキュメンタリー映画と違って、全体の歴史を言葉で語っていく作品にはなってない。代わりに、イメージや音楽が映画の体験として心に残る作品にしたかった」。
しかし、その実験性や前衛性のある音楽スタイル、精神性はまさしくパンクそのものであり、ロックの常識を覆し、革命をもたらせた。
ヴェルヴェット・アンダーグラウンド(2021年)
ヴェルヴェッツは、ルー・リードとジョン・ケイルの両雄が出会ったことにより結成され、ルー・リードの同級生であるギター:スターリング・モリソン、型破りなスタイルを持つドラム:モーリン・タッカーが加わり、本格的に活動が始まった。
アンディ・ウォーホルのプロデュースにより、アルバム制作が始まると、彼らを売り出すため、当時ルックスも演奏もそこまで特出したものではなかったというウォーホルの判断により、ヴィジュアル面での印象を強めるため、モデルであった美女のニコがヴォーカルとして合流した。
ルー・リードは、影響を受けた先鋭的な文学から、ダークで下劣な詩の世界感を持つ歌詞をもたらし(テーマは同性愛が多かった)、それを音で表現することを試みた。
ジョン・ケイルは、複数の周波数を何度も繰り返す倍音を用いることで、ノイズを通り越し心地よく感じるようになることがわかると、ヘルツまで細かく研究し、これを使用した。
これが融合したのが初期ヴェルヴェッツの音楽となった。
ヴェルヴェッツは、このようなとっつきにくい音楽性から、異端者扱いされながらも、ロックに革命を起こし、新しい道を切り開くためにアートと融合を両立を目指し、活動を続けていくが、ルー・リードとジョン・ケイルの個性が強すぎたために、2人は2枚のアルバムを残して別々の道を歩むことになる(ジョン・ケイルが脱退)。
映画でも使われている、「Heroin」、「Venus In Furs」 、「Sunday Morning」、 「Sister Ray」、「All Tomorrow's Parties」、「Pale Blue Eyes 」、「After Hours」などの名曲は色褪せることはない。
ジョン・ケイルが去った後、バンドを取り仕切るのはルー・リードが語った言葉がヴェルヴェッツをよく現している。
noteではパンク映画を紹介。
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