『べしゃり暮らし』の駿河太郎
まず、劇団ひとりの演出力は本物である。映画『晴天の霹靂』の出来の良さは、爆笑問題の太田が「芸人監督の中で抜きんでている」と絶賛したように、職業監督の演出作品にも引けを取らないレベルだったが、ただ、彼がどこまで実際演出したのか？ 現場を掌握したのか？をうかがい知れなかったので、まだ信用しきれなかった。っが、低予算の深夜ドラマのシリーズという悪条件でも、これだけのクオリティの作品を演出できる劇団ひとりは、監督として本物だ。もっともっと作品を作って欲しい。くだらないバラエティに時間を費やしているのがもったいない。。。（本人は、そんなバラエティが好きみたいだから仕方がないのだけれど）
このドラマの最大の面白さは、役者たちがが演じる漫才とその芸を追う姿のドラマなのだが、主演の間宮祥太朗と渡辺大知の「べしゃり暮らし」コンビも頑張っているが、脇の小芝風花と柳ゆり菜の「ニップレス」と駿河太郎と尾上寛之の「デジタルきんぎょ」の2組の漫才がとにかく出色だ。芸人顔負けだ。
小芝風花と柳ゆり菜の二人は、漫才のシーンより、二人の室内でのリアルな関西弁での会話や喧嘩のシーンが、もうキュンキュンするぐらいいい。さすがに、関西弁で、女の子の会話の演出を事細かに劇団ひとりが演出したとは思えないので、これは、小芝と柳の二人の演技力の賜物だと思う。
そして、駿河太郎だ。駿河のことは、半沢直樹での主演ぐらいしか印象になくて、鶴瓶の倅かあ。二世俳優っぽい芝居だなあ。と正直全くいい印象がなくて、忘れていた。
それが、この『べしゃり暮らし』の金本役なのだが、もう出るシーン出るシーン、いいオーラをまとっていて、たまらない芝居をしている。元ヤンキーの感じ、お笑い好きの感じ、根の優しい感じ、余計な事は言わないが、言うべきときは、身体を張ってでも伝える。元ヤンキーの先輩の空気感とお笑い芸人の悲哀と強さを、完璧に纏っていて、臭い芝居がかっこいいんだ。このドラマの金本役の駿河は、ショーケンや優作の系譜に並べてもいいと思うぐらいはまっているし、ほれぼれする。
このドラマの持つ独特の「軽さ」と主演の間宮祥太朗の暑苦しい芝居が苦手の人には、この作品は楽しめないと思うが、そこに違和感を感じない人ならめちゃくちゃ最高のエンタメドラマに仕上がっている。
個人的には、漫才シーンをフルで見たいので、DVD－BOXは購入する予定だ！
ここ数年で見たドラマで二番目に面白かった！ちなみに一番は。『dele』。
