『恋は雨上がりのように』の永井聡監督
永井聡監督が好きだ。『ジャッジ!』も『帝一の國』の秀逸なコメディ映画だが、この『恋は雨上がりのように』のような軽妙なラブストーリーも面白く仕上げてしまうセンスと技量は、映画の世界から生まれない才能だと痛感する。CMで鍛えられた絵作りのセンスは、悔しいが映画の現場からは生まれないと思う。
CM畑から映画を監督して成功している監督としては、中島哲也、石井克人などがいるが、彼等の作品は才能が満ち溢れているのだが、映画からその才があふれ出してしまって、途中でお腹いっぱいになってしまって映画として純粋に楽しめない不満が募ってしまうのだが、永井監督は、この才能の見せ方の匙かげんが実にうまい。
まず、『恋は雨上がりのように』は、オープニングがとにかくかっこいい。疾走感があって、クレジットのタイポグラフィの見せ方も、さりげなくかっこいいが、何より、小松菜奈が坂道を走ってきて、スライディングするように靴をすべらせてコーナーを回っているショットが痺れる。
でも、映画の本編もかっこよく作れるはずなのに、あえてかっこよく作らない。さえない中年店長(大泉洋)をカッコ悪く描いて、とてもオーソドックスな演出で、この物語の世界観をしっかり作り出している。技術と演出のバランスを熟知している監督なのだ。
小松菜奈をエロくしない演出が素晴らしい。彼女の愛情の純粋さを描くために彼女のエロさを健康的に見せる演出は見事だ。
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