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Sense and Sensibility

「いつか晴れた日に」

週末、雨があがった日曜日にNetflixで「いつか晴れた日に」を見ました。
原作は、イギリスの国民的作家ジェーン・オースティンの代表作のひとつ「Sense and Sensibility」。多くの場合「分別と多感」と、よくわからない邦訳をされますが、1995年に台湾の映画監督アン・リーによって映像化された映画には「いつか晴れた日に」という、ストーリーにぴったりな邦題がつけられています。
無職の女性ばかりの一家が屋敷を追い出され、田舎で出会った思い人は他の人と結婚してしまい、節約で牛肉を食べられない。雨ふりのような人生に、晴れた日がやってくるお話です。どこにも派手さはないのですが、嵐の日々が辛くて切なかった分だけ、晴れたときの喜びが刺さってきます。

田舎へ引っ越すため、メイドたちに暇を出さなくてはならなくなり、一家の長女エレノア嬢が持ち物から見繕って餞別の品を包むシーンがあります。自分の手元に置いていた品をそっと包んで、出会った記念や一緒に食事した記念、別れめに贈る。一期一会を大切にする伝統国イギリスらしい慣わしだなあと思います。わたしがイギリスにホームステイしていた間にも、お会いした方々から自宅にある食器やブローチ、レース、ドーリー、ポプリなどをいただきました。今も持っています。

次女のマリアンヌ嬢が捻挫をすると、馬に乗った男性が
野で摘んだ花束を持ってお見舞いに駆けつけます。

ジェーン・オースティンの小説で「Sense and Sensibility」と並び称される「Pride and Prejudice」もたびたび映像化されており、近年ではキーラ・ナイトレイ主演作が有名ですが、さらにはゾンビを加えた「プライドと偏見とゾンビ」なんていうパロディーものまで制作されて、しかもそれが面白いとくるから、ジェーンは史上最高の作家の一人なのだと思います。

イギリス人はジェーン・オースティンの小説がとても好きです。
18世紀後半から19世紀初頭に書かれた作品が今なお読み継がれる。どの作品も庶民(どちらかというと貧乏で)の、あまり大きいことは起こらないが本人にとっては大問題が発生したり、そのへんによくいそうな人の個性を掘り下げて描写していたり、誰にでも親近感のあるテーマ性に満ちているとよく評されます。匿名で執筆し、真の作者名が世に出たのは亡くなった後というのもジェーン・オースティンらしく感じます。
ジェーンが執筆していた時代は、日本では江戸中期。江戸中期の作家の文芸作品をいったい、現代の日本人がどれくらい愛読しているでしょうか。

ところで、このジェーン・オースティンという名前、わたしには非常に発音しづらいのです。耳から聞こえるとおりに「ジェーン」と真似て言っても、イギリス人には伝わらず、「ジーン」と言うと「ああ、ジェーンのことね」と伝わり、ファミリーネームも同じような理由で「アウステン」のように発音すると伝わるので、わたしの中では「ジーン・アウステン」なのでした。