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「インサイドヘッド2」感想とちょっとした解説 ~実は芸術映画が垣間見える!~

こんにちは
ツチノコです。

今回は、ちょっと前に公開された、「インサイドヘッド2」について、感想とちょっとした解説を届けます。


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まず、第一印象として、「感情」の取り扱いがズサンになったのかな?
といった点があります。

前作は、怒りや喜び、悲しみなどの基本的な感情しか出てこなかったのですが、今作ではダルイや、羨ましいなどの、感情とは異なるもしくは感情の組み合わせによって生まれる心情を、感情と同列に出演させていました。

前作は幼少期だった主人公が、今作では成長し、思春期へ突入する様子を描いた作品でした。
しかし、その複雑な変化を描くために、純粋な感情以外の心情を登場人物にしてしまったことは、あまり良くなかったのかもしれません。

まず、登場人物が多すぎることによる、情報過多が起こっていました。

誰がどこで何をしているのか?
を注意して作られていたことはわかりましたが、それでもやはり、扱っている内容が複雑である故に、視線誘導に関して失敗していたでしょう。


次に、前作をエンタメ性で超えてきたな!!という点を感じました。

前回は、後述するような芸術的な面をどれだけエンタメにできるか?を追求した作品でしたが、今作では、前作のテイストを維持した状態で、どれだけ思春期への寄り添いができるのか?を追求していました。

そして、思春期への寄り添いが結果的にエンタメ性へとつながったのです。


詳しいことは、解説に移りましょう。


ちょっとした解説


芸術映画を作る際の、鉄板のやり方として、登場人物に監督自身の心の中の対立構造を投影する、といったものがあります。

具体的な例でいえば、宮崎駿監督「君たちはどう生きるか」で顕著にみることができます。

あの映画で映る、アオサギ、主人公のマヒト、マヒトのお母さん等の登場人物はすべて、宮崎監督の葛藤や家族の背景を映していることがわかります。

「君たちはどう生きるか」はそれらがごちゃ混ぜになっているところが、さらに面白いところなのですが、これはまた今度の機会に…

それからわかるように、「インサイドヘッド」はエンタメ作品では珍しい、芸術映画の基礎を踏襲している作品であるのです。

しかし、エンタメは多くの人に面白がってもらわなければ、成り立ちません。

ですので、すべての人が持っている心情や葛藤である、「感情」を登場人物にしてしまったのです。

これはまさに発明でしょう。

しかし、先に言ったように、今作では「感情」と同列に、「感情とは少し異なったもの」を扱っていることが、コンセプトを履き違えたのかと思わせます。

ダルイと感じることは、基本的な感情の順列組み合わせによって起こるものであり、ダルイが感情ではないのです。

しかし、ダルイを感情と同列の登場人物として扱うことは、もとあった「感情を用いた芸術映画のコンセプト設定」を覆すことになります。

全く潔くない!と怒りたくなりますが、そもそもエンタメ性を重視した作品でもありますので、ここら辺はご愛嬌でね…

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前作に続く今作では、映画公開の時期において、およそ年もの長い間が空きました。

これは、前作を見た子供たちが、だいたい9年経って思春期へ突入するくらいを狙った公開であると、私は考えています。

ただ、今作は世界歴代興行収入第9位に入るほどの、超超特大ヒットをかましました。
これは、アニメ映画で世界歴代最高の順位です。

先に言ったような、子供たちへの狙いだけではここまで売れません。

ここで明らかにわかるように、この映画が刺さったのは子供のみならず、
大人がより深く刺さっていると考えられます。

私は、ふと一つの言葉が思いつきました。

「中二病」

私が嫌いな言葉ランキング堂々の第一位を飾るこの言葉は、思春期の人への「イタい」を具現化したような言葉です。

こういうふうに、思春期・青年期に感じたり考えたりすることは、全般的に馬鹿にされる傾向にあることを、皆さんも必ず感じているはずです。

また、今作は、この風潮が世界中で共通していることも証明しました。

思春期辺りの多感な時期を、周りの人に認めてもらうことができなかった世界中の多くの大人たちは、人生を通して、その過去をブラックボックスの中に葬り去っていたわけです。

しかし、今作が、そのブラックボックスを一から紐解き、その存在そのものを認めてくれたのです。

多くの人が抱えていた無意識の過去の悩みについて、認めて容認したことが想像以上に大きな影響を持っていたために、ここまでのヒットを打ち上げたということが、予測することができました。


おわりに…

今作は、子供もなおさら、大人に見てもらいたい作品でしたね。

思春期の悩みの大きさと、それに対するあまりにも冷ややかな周りの目は、多くの人のトラウマであり、そのアンサーとなったのが、この作品でした。


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ツチノコ

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