2024年5月の読書日記
2024年5月
こんにちは、入江悠です。
新作映画『あんのこと』の劇場公開が始まりました。
更新が遅くなりましたが、2024年5月に読んだ読書日記です。
今月はたくさん読めました。
1、「僕が批評家になったわけ」
(加藤典洋 著)
2019年に逝去された批評家の加藤典洋さん。敬愛して読んできましたが、この本は「なぜ批評という行為が大切か」「批評とはなんなのか」を平明な文章で明かしてくれまています。ドストエフスキーがなぜすごいかという一節がさらりと出てきますが、これぞ批評の力。
2、「生命海流」
(福岡伸一 著)
ハカセ、ガラパゴスへ行く。ということで体験記。美しい写真付きなので、自分もダーウィンの本を携帯して行ってみたくなる。あと、船ってすごいな。こんな船で冒険してみたいな。
3、「いやな感じ」
(高見順 著)
戦後文学の傑作のひとつとされる本作、やっと読了。古典あるあるだけど、かなり笑えて思ったよりもポップ。やがて哀しき青春譚。これは今、読んで最高に良かった小説です。装丁もポップで美しい。
4、「疫病神」
(黒川博行 著)
まだまだ黒川博行さんブームは続く。疫病神シリーズの記念碑的1作目。バディものってやっぱり面白いですよね。いつかこういう小説書いてみたい。ドライブ感が流石です。
5、「勁草」
(黒川博行 著)
安藤サクラさん主演で映画化された小説。(映画は『バッド・ランズ』という題名に改題)。えっ、主人公って小説では男だったんだ。『ギャングース』にも通じる特殊詐欺の世界。黒川さんの取材力のすごさにも唸る。
6、「ルポ 歌舞伎町」
(國友公司 著)
体験型ルポを連発している著者による歌舞伎町もの。この本で書かれた「ある路地」がとても気になる。なんなんだこの都市伝説。本当だったら相当怖いぞ。
7、「飛鳥クリニックは今日も雨」
(Z李 著)
週刊誌で連載されていたZ李さんの歌舞伎町フィクション。どこまでが体験記でどこからが創作かわからないレベル。ポンジスキームについて詳しくなれます。あと、登場人物たちの会話が生々しく最高です。
8、「歌舞伎町事変 1996〜2006」
(文:李小牧、写真:権徹)
少し昔の歌舞伎町をルポした一冊。写真がすごい。どうやって撮影したんだろ。街と人って面白い。そして怖い。定点観測を続ける人もまた面白い。
9、「ある行旅死亡人の物語」
(武田惇志、伊藤亜衣 著)
調査報道から生まれたノンフィクション。世には「行旅死亡人」という存在があり、孤独死が増えている昨今では他人事ではない。人の数だけそれぞれの物語と歴史がある。読了後、ひやりとした感動がある。
10、「ChatGPTは世界をどう変えるのか」
(佐藤一郎 著)
ChatGPTに関する本はたくさんあるけれど、これはかなり真面目な部類の本。生成AIの将来について知りたくて読んだ。今後10年でいろいろ変わるだろうなぁ。わたしはついていけるのだろうか。
11、「ハンチバック」
(市川沙央 著)
芥川賞を受賞した話題作、やっと読んだ。すごい。すごいぞ、これは。表現には棘がある。どころではない。棘がなくて何が表現だ、という声が聞こえる。勇気をもらう。
12、「この世の喜びよ」
(井戸川射子 著)
これもすごい小説だった。なにか特別なことが起こるわけではない。
でも静かに、熱く、なにかが起こっている。人生って気づかないうちになにかが起こっているものなんだろうな。気づいていないだけで。
13、「おとなの歯磨き」
(伊東材佑 著)
20代のときに読むべきだった。30代のときにも読むべきだった。歯をもっと大切に考えるべきだった、と強く反省。社会人になったすべての人におすすめしたい「歯磨き本」。特にわたしのようなズボラな人に。一生もの。
14、「代謝がすべて」
(池谷敏郎 著)
ここ数年、熱中症になっている。たぶん代謝の問題だ。と思って読んだ。代謝のメカニズムについてはよくわかる。あとはどうやって代謝をあげるかだ。あがるのか、わたしの代謝。夏までにあげたいぞ。
15、「まなざしの地獄 尽きなく生きることの社会学」
(見田宗介 著)
日本の社会学史上での名著と呼ばれる一冊。平明で、短く、読みやすい。けれどとてつもなく深い。根底では拙作『SRサイタマノラッパー』の問題意識とも繋がっている気がした。現代社会の階級論にも通じる。
というわけで、5月は15冊の本を読めました。
わたしの読書人生で最多かもしれません。
1冊読み終わって、「次は何を読もうかな」と考える時間がとても好きで、今月はそれが15回あったので最高でした。
・・・・・・
最後に。
映画『あんのこと』公開中です。
この作品も知らないことをたくさんの本から教えてもらいました。
ぜひご覧いただけると幸いです。