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「教室が、ひとりになるまで」 (著:浅倉秋成)

「教室が、ひとりになるまで」 (著:浅倉秋成)
刊行は、角川文庫。

本格ミステリ大賞&日本推理作家協会賞Wノミネート!新世代の青春ミステリ

北楓高校で起きた生徒の連続自殺。ひとりは学校のトイレで首を吊り、ふたりは校舎から飛び降りた。「全員が仲のいい最高のクラス」で、なぜ――。垣内友弘は、幼馴染みの同級生・白瀬美月から信じがたい話を打ち明けられる。「自殺なんかじゃない。みんなあいつに殺されたの」“他人を自殺させる力”を使った証明不可能な罪。犯人を裁く1度きりのチャンスを得た友弘は、異質で孤独な謎解きに身を投じる。新時代の傑作青春ミステリ。

KADOKAWA 本紹介ページより

まさかの「ミステリー×魔法もの」だった本書。
この広げた風呂敷、どうやって畳んで着地させるんだろう、とワクワクしながら読み進めていたら、最後はあれよあれよと伏線が回収されて、見事に着地していた。お見事すぎる。

ひさしぶりにページをめくる手がノンストップという感覚も味わった。とにかくリーダビリティが高く、謎の提示とヒントの提出の乱れ打ちが巧すぎる。ミステリーとしてお手本のような構成でもある。

以前、映画の脚本で『22年目の告白 私が殺人犯です』というサスペンスを書いたけど、本書のような構成はとても勉強になる。どこで何の情報を出しておくか、どこで回収するか。ほぼ数学のような頭の使い方。

※『22年目の告白-私が殺人犯です-』の脚本の書き方
https://note.com/movie_director/n/n2d152bbe82f7

さらに本書は、「高校生の連続殺人」という、一歩間違えると後味悪くなりそうな題材をスレスレのアクロバティックさで、爽快さへと転回させていく手腕も素晴らしい。ああ、学生時代こういう邪悪な感覚持っていたよなあ、わたしの場合は「隕石落ちてこないかな」だったよ、と思いつつ、今の学生の方々にも思いを馳せた。皆それぞれの息苦しさを抱えているはずだ。処す説や映画はフィクションでそれを乗り越える方策を与えてくれる。

わたしがいまさら言うまでもなく、すでに評価の高い浅倉秋成さん、これは他の小説も読んでみなければ。次は何を選んでみよう。

2022年8月 読。


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